私の話でもあり、あなたの話でもある

この活動を始めてから3年半になります。ここまで続けてこられたのは、活動を応援してくださる方々、クラウドファンディングで金銭的に支援をいただいた方々、ご指導してくださる先生方、そして熱意のある仲間たちのおかげです。本当に感謝しています。少しずつ社会の中でのHPVワクチンに対する考え方が変化している様子のまさにその目撃者になっているのでは……と感じています。

WHO(世界保健機関)は、子宮頸がんの撲滅を目標に掲げています。撲滅とは10万人あたりの年齢調整罹患率が4人以下となることを意味します。ワクチン接種が進んでいるオーストラリアでは、2035年までに子宮頸がんが撲滅されると推測されている研究データもあります。

ですが日本では、副反応報道(ワクチン接種と体調不良に因果関係があるように報道)から、HPVワクチンの安全性に不安を持つ人が増え、現在もワクチンを接種しそびれた人が多くいます。ワクチン接種できなかった世代で、今後子宮頸がんの超過罹患が2万人、超過死亡が5000人生じるという予測もされています(※6)。その責任をメディアは考えるべきだと思うのです。

私自身も活動をしていると誹謗中傷を受けることは多いですが、徐々に受容できるようになりました。私も含め人間は時として、不合理な判断をしてしまうことがあると考えています。将来、医師になり臨床の現場でそういった患者さんと向き合うために、今必要な心構えや学び、準備をしている段階だと捉えるようになりました。私は、不合理な判断をしてしまう人間を切り捨ててしまうのではなく、まるっと愛して、患者さんそれぞれにとってベストな医療を検討し、提供できるような医師になりたいと考えています。

子どもにワクチンを一切打たせない親御さんは、医療者にとっては虐待のように思われることもありますが、母親は真剣に自分の子どもの健康を一番に考えているのだと思います。敵か味方か、という次元の話ではなく、「子どもが健やかに育ってほしい」という同じ願いを持ちながら、「そのためにワクチンを打たせるか、否か」という手段の選択が異なっているだけだ、と捉えることもできます。

母親もみな真剣に娘の健康を考え悩んでいる。ワクチン推奨派、反対派という次元の話ではない(写真はイメージです)。photo/iStock
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最近、団体のお問い合わせに以下のメッセージが届きました。
「高一の娘がいます。本来我が家はワクチン否定派なので、例に漏れず、こちらのワクチンを打たせるつもりは私はありません。理由も娘には話してあります。
しかし、こちらの活動をネットでみて、打つ,打たない以前に、ワクチン否定派、肯定派の情報をみて娘本人が自分で考えて選択する,ことが必要だと思いました。
その上で、本人が打ちたいというのであれば、その選択を尊重しようと思いました」

よく、SNSやメディアでは「ワクチン否定派」「ワクチン推進派」と表現されますが、そんなに白黒つけられる、わかりやすい問題ではないと考えています。多くの人にとって、常に考え方にグラデーションがあり、判断基準が揺れ動くものだと考えています。ワクチン接種の判断の観点が、医学的根拠に基づいたものなのか、はたまた個人的な信条・宗教によるものなのか、それは自由だし制限されるものではありません。しかし、これを他人に強要すること、そして誹謗中傷することは許されない、と強く感じます。

一方で、根本が同じだから共感してお話しできればいいな、と思いつつも、Xでは相互理解を深めるのには限界があるなと考える時もしばしばあります。無理やりワクチンを接種するのではなく、接種するかどうかを検討するための十分な情報を手に入れて、親子で話し合い、後悔のない選択ができるようにすること、そのための仕組みづくりを今後も続けていきたいと考えています。

今年1月、子宮頸がんで闘病されていた大学の先輩が他界されました。彼女は生前、私に「一緒に(啓発)頑張ろうね」とおっしゃいました。今も彼女の声を想い出すたび、落ち込んでなどいられないと身が引き締まります。将来、子宮頸がんで亡くなる方が一人でも減るように……。お伝えしていることは、私の話でもあり、あなたの話でもあるのです。

【HPVワクチンのキャッチアップ接種は9月末までに】

副反応報道などでHPVワクチン接種を逃してしまった世代の「キャッチアップ接種」が2025年3月末で終了します。

対象者は、平成9年度~平成19年度生まれ(※誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性で、過去にHPVワクチン接種を合計3回受けていない人です。この期間を逃してしまうと、HPVワクチン接種を希望しても実費の接種となってしまい、9価ワクチンの場合、3回で約10万円の費用がかかります。

ワクチン接種は全3回接種があるので、接種し終えるには半年近くの時間を要します。対象年齢で一度もHPVワクチン接種をしていない人は、2024年9月末までに1回目の接種を終了しておく必要があります。期限が迫っているので、接種を考えている人は早めに自分が住んでいる市町村や医療機関に相談を!

※上記はキャッチアップ接種の情報です。小学校6年生から高校1年生までの女子の定期接種でのHPVワクチン接種は通常通り行われています。

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