神代植物公園『食虫植物展』2024〈1〉 妖しく誘われるウツボカズラ(ネペンテス)の落とし穴
2024.08.04 Sunday
あ!ひとつだけ「えり」が赤くて花みたい!
今年の『食虫植物展』は、落とし穴式の捕虫方法で
壺形が特徴的な食虫植物の
「ウツボカズラ(ネペンテス)」類から。
捕虫袋の口部分で目立つ箇所は通称「えり」と呼ばれ、
ドス黒い赤褐色のイメージでしたが、ひとつ
鮮やかに赤い「えり」があってビックリ!
【ネペンテス ‘ミクスタ’】
Nepenthes ‘Mixta’
ウツボカズラ科
虫が足を滑らせ捕虫袋の消化液へドボンするよう
つるつるでテラテラですが、
色がこんなに綺麗に赤いのは初めて見ました〜
ますます妖しいその姿…!
不思議な魅力に吸い寄せられそうです_
↓これも同じ鉢の同じ株ですが
えりは赤黒く、こちらが標準的イメージ。
↓これも同じ鉢の同じ株。色が抜けて浅い褐色。
古くなるとこうなるみたいですね。
↓冒頭からの赤いひとつの隣に並んでた茶色。
丁度、新旧比較になった構図です。
管(葉巻きひげ)がくるんと螺旋に
丸まっているのがなんとなくかわいい。
↓若い感じのものもありました。
生き物を誘引するという意味では花の役割もあるので
「えり」が花びらのようなものなのかも。
次は別の鉢のネペンテス。
名札が確認できませんでしたが、
姿はかなり似ているのでたぶん_
これも【ネペンテス ‘ミクスタ’】かな?という推測。
昨年確認した‘ミクスタ’がこんな感じでした。
捕虫袋の表面を彩る流れるような斑点がいいですね。
フタ部分には蜜腺があり、
そこから分泌する物質が虫を呼ぶようです。
(形は違うけど役割はやはり花に近い感じ)
フタにも入る斑点模様が見事。
和名「ウツボカズラ(靫葛)」の基本情報
★捕虫袋で虫を捕獲する落とし穴式の食虫植物
ウツボカズラ科 ウツボカズラ属(ネペンテス属)
(多年草:常緑つる性植物)
学名…Nepenthes
別名…ネペンテス
原産地・分布地…東南アジアを中心とした熱帯地域
草丈…10〜200cm
捕虫袋=「捕虫嚢(ほちゅうのう)」
(「捕虫葉(ほちゅうよう)」が袋状に変化したもの)
*
次は名札確認した別のネペンテス2カット。
【ネペンテス ‘ノボリリュウ’(登龍)】
‘ミクスタ’と似てると思ったら、
学名を見ると‘ミクスタ’と他品種との交配種のよう。
壺が長〜く引き伸ばされ、斑点模様も細長く流れて
なるほど登り竜の勢い。
*
次は1カットだけ。これも似た感じで名札がないと
わからないですが、違う品種名の名札でした。
【ネペンテス ‘キハチジョウ’】
Nepenthes ‘Kihachijo’
ウツボカズラ科
八丈島の一正園で作出された園芸品種らしい。
*
次も1カットだけ。
全体に赤いのが珍しいと思って撮影。
【ネペンテス・アルボマルギナタ】
Nepenthes albomarginata
ウツボカズラ科
袋上部のえり下が白くリング状なのが品種の特徴で、
色は他に緑や黒系もあるようです。
マレー半島、ボルネオ、スマトラに広く分布し、
標高も海岸付近0mから1200mまでと
自生環境にもかなり幅があるタイプでした。
ところで↑このアルボマルギナタの写真、
なにか他の植物と違う…妙な感じが_
捕虫嚢の管ってどこから伸びているのかとたどったら
…ん?_葉の先に繋がっている⁉︎
目の錯覚か?…ふつうは茎じゃない??
捕虫嚢に目を引かれてそこばかり写真に撮り、
これまで気にしてなかったけど_
次、他のも見てみましょう。
*
昨年記事にも載せたウツボカズラで
「えり」のテラテラ光沢と
濃厚な赤黒色のインパクトが強いタイプ。
【ネペンテス・ラジャ】
Nepenthes rajah
ウツボカズラ科
★高地性のウツボカズラ
涼しくて霧のたちこめる東南アジアの高山に生育
(昨年の植物名板参照)
今年はフタ部分が綺麗に撮れました。
(上下⇅カットは同じ捕虫嚢のアングル違い)
↓鉢全体はこんな感じ。
捕虫嚢は鉢からこぼれ落ちるように伸びた
茎の近くにありますが_管が繋がっているのは
やはり葉先…管が無い葉もありますが_
(?見えなくて写ってないだけかも)
次、最後にもう一種、別の園芸種を確認。
*
↓こちらも確かに葉先から管が出てます。
調べてみたら、ウツボカズラ属は皆そういう特質。
葉の先が「※葉巻きひげ」というものになり、
その先が捕虫嚢となっているのでした。
※植物が持つ巻きひげのうち、葉の一部を変形させて
できたものを葉巻きひげ(または葉性巻きひげ)という。
(茎が変形してできた巻きひげは茎巻きひげ)
【ネペンテス ‘アイガエ・オゴ’】
Nepenthes ‘Aigae-ogo’
ウツボカズラ科
落ちそうで落ちない位置関係。
ひげの細さや捕虫嚢の大きさに対して
重さを感じないしなやかで自然な姿ですが、
楽なぶら下がり式にしたのに、わざわざ最後に
袋の口を上向きにするためググッと持ち上げるのが
しんどくないのでしょうか…?
地面から直に生えるか、壺型なら
直立が支えやすそうですが_
…それにしてもこのツボ型のしっかりした張り_
消化液が溜まっているにしても
ほぼ空洞とは思えない立派さですね。
_そうか、自生地の熱帯雨林気候を考えると
強い雨風にもさらされるわけで、
直立で伸びてると倒れたらリカバリーできないかも。
全体は柔軟にして伸びた先だけしなやかに持ち上げ
固めた方が理に適った強さですね!たぶんですが。
ふ〜む… などと写真を見ながらあらためて
つらつらと思いを巡らし、ウツボカズラの
その妖しい造形美にも感嘆するのでした。
(つづく)
【過去記事参照】
20230806up▶「ムジナモ」も食虫植物!ハエトリグサなど神代植物公園 大温室の食虫植物特集 2023.7月下旬撮影他
20230812up▶神代植物公園大温室「食虫植物展」ウツボカズラ、モウセンゴケなど 2023.8月中旬撮影他