旧ジャニーズ会見から1年 ファンらが要望書「不十分な点多い」

島崎周

 旧ジャニーズ事務所(SMILE―UP.(スマイルアップ))の創業者、故ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、所属タレントのファンらでつくる「PENLIGHT(ペンライト) 旧ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」は5日、同社に対して要望書を送付したと発表した。事務所が昨年9月7日の記者会見で性加害を認めてから1年になるのを前に、元スタッフによる性加害を含めた問題の全容解明や、誹謗(ひぼう)中傷への積極的な取り組みを求めている。

 同会は、昨春に英公共放送BBCが問題を報じて以降、事務所に対して第三者機関を設置し、性加害の検証や実態調査を実施することや被害者への謝罪などを求めて、要望書や集めた署名を事務所に提出してきた。

 事務所が昨年9月に記者会見をして以降の対応を振り返り、補償については一定程度評価できる部分もあるとした一方で、「依然として不十分な点が多く残されている」と指摘した。事務所の元スタッフ2人による性加害に関して警察に情報提供を行うことや、関係者への網羅的な調査によって、一連の性加害問題の全容解明を進めることを求めている。

 また、被害者に向けられた誹謗中傷に対して同社がとってきた対応について、「人権意識を欠いている」と批判。同社がこれまでに出した、虚偽の被害申告やBBCに対する抗議に関する声明について、撤回するように要望した上で、「性暴力被害者の尊厳を第一に考え、いま一度、誹謗中傷に断固として反対する意志を表明してください」と訴えている。

 同会は取材に対し、「被害者への補償が進められていったことで、不十分な点があるにもかかわらず、この問題は風化していっているように感じる。まだ問題は終わっていないことを、事務所にも社会にも認識してもらいたい」とコメントを寄せた。

 同会は同社に対して、10月1日までの回答を求めている。

 同社は取材に対し、5日に要望書を受領したと回答。元スタッフの性加害について、警察に情報提供することに関しては、被害者の処罰感情と関わりなく情報提供を行えば、心理的な負担や二次被害を生じさせる可能性があるとし、「被害者の方が処罰意思を示されていない段階では、捜査機関に対して情報提供を行うことは適切ではないと考えております。被害者の方が刑事告訴を行う場合や捜査機関から照会があった場合には、当然ながら捜査には全面的に協力したいと考えています」とコメントした。(島崎周)

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この記事を書いた人
島崎周
東京社会部|文部科学省担当
専門・関心分野
性暴力、性教育、被害と加害、宗教、学び、人権