「人類館事件」伝える企画展「博覧会と差別」 8日まで大阪で開催
博覧会の開催に合わせて沖縄やアイヌなどの人びとが見せ物として展示された「人類館事件」を伝える企画展「博覧会と差別」が4日、大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで始まった。8日まで。
1903(明治36)年、現在の天王寺公園一帯で、政府が国内産業の進展を知らせるために開いた「第五回内国勧業博覧会」の会場外に、「学術人類館」という建物がつくられた。沖縄のほか、台湾や朝鮮などの人びとが「展示」された。
企画展では、人類館を撮った写真や、「展示」に対する抗議について報じた新聞記事、博覧会の案内図などを紹介している。
主催は、2020年から休館している大阪人権博物館(リバティおおさか)。運営する財団が所蔵資料を使って各地で展示会を続けている。学芸員の吉村智博さん(59)は「来年の大阪・関西万博を前に、博覧会で差別があった歴史を知り、現代社会でも根強い差別について考えてほしい」と話す。
大阪人権博物館は1985年、大阪市浪速区で開館した。被差別部落の出身者らが土地や資金を出し合うことでできた旧市立栄小学校舎があった跡地を、市が無償で貸与。大阪府と市、部落解放同盟府連合会や企業などが出資する財団が運営を担った。
所蔵資料は約3万点。被差別部落出身教師の葛藤を描く島崎藤村の小説「破戒」(1906年)の初版、日本初の本格的な女性誌「女学雑誌」(1885~1904年)などを残す。
ただ、2008年に府知事に就任した橋下徹氏が「差別や人権などネガティブな部分が多い」などと問題視。13年には府と市がそれまで出していた運営補助金を全廃し、15年には市が所有者となっていた土地を有償化した。
市はさらに、土地の明け渡しと賃料相当額の支払いを求め大阪地裁に提訴。20年、更地にして明け渡す一方、賃料は免除するとした和解が成立し、翌年に建物は解体された。
新たな場所での再建を模索したが、財団は来年度以降、大阪公立大に資料を寄贈し、教育や展示に生かしてもらうよう協議している。
収蔵庫の設置や移管などの費用として、寄付を募っている。目標は2億円で、これまで数千万円が集まったという。問い合わせは大阪人権博物館(06・4301・7783)へ。(花房吾早子)
- 花房吾早子
- 大阪社会部|平和・人権担当
- 専門・関心分野
- 原爆、核廃絶、ジェンダー、LGBTQ+