編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Makino H, Haneda M, Babazono T, Moriya T, Ito S, Iwamoto Y, Kawamori R, Takeuchi M, Katayama S, INNOVATION Study Group: Prevention of transition from incipient to overt nephropathy with telmisartan in patients with type 2 diabetes. Diabetes Care 2007; 30: 1577-1578. [PubMed]

アンジオテンシンII受容体拮抗薬の2型糖尿病患者における腎症進展抑制効果は,RENAAL,IDNT,IRMA-2,MARVALなどで報告されてきた。本試験は,わが国で行われたIRMA-2に相当する試験である。ただ対象は,UACRが100~300mg/gCrのhigh-microalbuminuriaであり,プラセボ群では平均1.3年の観察で,その50%が蛋白尿へ進展したことが注目される。さらに,このように,いったんhigh-microalbuminuriaまで達すると腎症の進展がきわめて早い日本人では,アンジオテンシンII受容体拮抗薬がきわめて有効であることが実証されたといえる。【片山茂裕

●目的日本人2型糖尿病患者において,早期腎症から顕性腎症への進行に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬telmisartanの抑制効果を検討した。
有効性の一次エンドポイントは初期腎症から顕性腎症(尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR]>300mg/gかつベースラインに比して30%以上の上昇)への進展率。二次エンドポイントは微量アルブミン尿の改善(UACR<30mg/g)。
●デザイン無作為,二重盲検,プラセボ対照,多施設。
●試験期間治療期間は1年以上。追跡期間は平均1.3年。
●対象患者527例:30~74歳で微量アルブミン尿を認める日本人2型糖尿病患者。平均61.7歳。
登録基準:UACR 100~300mg/g,血清クレアチニン値<1.5mg/dL(男性)または<1.3mg/dL(女性)。
除外基準:1型糖尿病,糖尿病発症時年齢<30歳,座位血圧≧180/110mmHg,慢性腎疾患(糖尿病性腎症を除く)。
●方法telmisartan 80mg群,40mg群,プラセボ群にランダム化し,1年以上投与。
両telmisartan群では20mg/日より投与開始し,2週後に40mg/日へ増量。80mg群では,さらに2週後に80mg/日へ増量。
●結果解析可能症例は514例(80mg群168例,40mg群172例,プラセボ群174例)であった。
顕性腎症への進展率は,80mg群16.7%,40mg群22.6%,プラセボ群49.9%(p<0.0001[両telmisartan群 vs プラセボ群]),微量アルブミン尿の改善が認められた患者はそれぞれ21.2%,12.8%,1.2%であった(p<0.001[両telmisartan群 vs プラセボ群])。正常血圧の163例(80mg群51例,40mg群58例,プラセボ群54例)における検討でも,顕性腎症への進展率は両telmisartan群で有意に低かった(それぞれ11.0%,21.0%,44.2%,p<0.01[両telmisartan群 vs プラセボ群])。telmisartanによる顕性腎症抑制効果は,SBPの低下を補正後においても認められた。
●結論日本人2型糖尿病患者において,telmisartanは初期腎症から顕性腎症への進展を抑制し,微量アルブミン尿を改善した。このtelmisartanの効果は用量依存性であり,また降圧作用とは関係していないことが示唆された。