ロシア、ウクライナがドローンで大統領府攻撃と主張 プーチン氏暗殺意図と ウクライナは否定
ロシア政府は3日、クレムリン(ロシア大統領府)を狙った2機のドローンを撃墜したと発表した。ウクライナがウラジーミル・プーチン大統領を暗殺しようとしたと非難している。ウクライナは、一切の関与を否定している。
ソーシャルメディアに投稿された未検証の映像では、小型の物体がクレムリン上空を飛行した後、小規模の爆発を起こす様子が映っている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、訪問先のフィンランドでこの件について、「我々はプーチンもモスクワも攻撃しない。我々は自分たちの領土の上で戦っている。我々は、自分たちの村や都市を防衛している」と述べた。
これに先立ちゼレンスキー大統領の報道官は、ウクライナは現在、ロシアに侵攻された自国領土の解放に注力していると述べた。別のウクライナ政府関係者はBBCに、この件はロシアがウクライナで「大規模で挑発的なテロ行為の準備をしている」兆候だと話した。
ロシアが昨年2月にウクライナ侵攻を開始して以来、両国はしばしば相手を非難し、非難された側はそれを否定するというやりとりを繰り返している。
ロシア政府は、クレムリンを狙ったドローン2機を電子レーダーで無効化したとしている。プーチン大統領の報道官によると、大統領は当時クレムリンにいなかった。
クレムリンは声明で、「キエフ(ロシア語でキーウ)の政権は昨夜、ロシア連邦の大統領のクレムリン公邸を無人航空機で攻撃しようとした」と述べた。さらに、ロシアは「これを計画的なテロ行為で大統領暗殺を意図した行為」とみなすとして、「我々が必要とみなす報復策をどこでも、いつでも実行する権利を保有する」と主張した。
クレムリンによるとプーチン氏は無傷で、執務を予定通り続ける。3日にはモスクワ郊外のノヴォ・オガリョヴォにいたという。
ロシアのソーシャルメディアに投稿された映像には、3日未明のモスクワ上空に煙がたなびいている様子が映っている。
クレムリンによると、ドローンの破片がクレムリン敷地内に落下したものの、負傷者はなく、建物への損傷もなかった。
クレムリンはさらに、9日には第2次世界大戦で旧ソ連がナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」を控えており、式典には外国から複数の要人が出席する予定だと指摘。戦勝記念日のパレードは予定通り行われると、ロシアのメディアは伝えた。
これに対してウクライナのセルヒイ・ニキフォロフ大統領報道官は、「モスクワでの出来事は明らかに、5月9日を前に状況をエスカレートさせるためのものだ」との見方を示した。
ウクライナ大統領顧問のミハイロ・ポドリャク氏は、これを機にロシアはウクライナの民間施設や民間人を標的にすることを正当化するかもしれないと話す。あるいは、ロシア国内の「抵抗勢力によるゲリラ活動」の可能性も指摘した。
「ロシア連邦で何かが起きている。しかし、ウクライナのドローンがクレムリン上空を飛んだなど絶対にあり得ない」と、ポドリャク顧問は強調した。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、ロシアによる「ウクライナがプーチン氏を殺害しようとした」という主張を確認することはできないとした上で、ロシア大統領府の言い分はなんであれ、かなり疑いながら聞くべきだと述べた。
大統領警備や防空体制は
ロシアはプーチン氏に対して厳重な身辺警護を徹底している。BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長は、ドローンがクレムリンに接近できるなど驚嘆すべきことだと話した。
BBC記者がモスクワで現地取材するプーチン氏出席のイベントでは、厳戒態勢が敷かれ、徹底的な身元確認や検査が常となっている。大統領は前後左右を守られた長い車列で移動し、周囲の道路は封鎖され、上空の飛行も禁止される。
それだけに、今回のロシア政府発表が事実だった場合、プーチン氏の警備体制が実際どこまで有効なのかが問われることになる。
ロシアの防空体制の有効性も点検されることになる。モスクワでは数カ月前から、重要な建物から近距離にある建物の屋上に防空システムが設置されている。これは、ウクライナやウクライナに共感する勢力が、モスクワの重要施設を空から攻撃しようとする可能性を、ロシア政府が警戒しているためとされる。
米中央情報局(CIA)出身で元国務省幹部のミック・マルロイ氏はBBCに、出来事の報告が正確ならばプーチン氏への暗殺未遂だったことは「ありえない」と指摘。ウクライナはプーチン氏の行動を逐一追跡しており、当時プーチン氏はモスクワにいなかったからだという。
「ロシアの人たちに、我々はいつでもどこでも攻撃することができる、ロシアがウクライナで始めた戦争はやがてロシアに到達する、ひいては首都にも到達すると、示すための行動だったのかもしれない」と、マルロイ氏は話した。
逆に、もしドローンについての報告が事実と異なる場合、「ロシアはこれを口実にゼレンスキー大統領を標的にするため、この事案をでっち上げたのかもしれない。ロシアはこれまでもゼレンスキー氏を狙ってきた」からだと、マルロイ氏は指摘した。
3日朝に実際に何が起きたのかにかかわらず、ロシアが今後どう出るのかが注目される。一部のロシア当局者はすでに強硬な対応を呼びかけている。ロシア軍幹部はこれまでに繰り返し、ロシア領内への攻撃には厳しい姿勢で応じると警告してきた。
しかし、実効性のある報復攻撃の実施能力がロシア軍にあるのか、不透明だ。また、今回の件がウクライナ国内での戦闘激化に実質的につながるのかも、未知数にとどまっている。