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2024年を象徴する出来事/知られざる集団私刑【5月 京都・八坂神社の一件】ミスリード、動画拡散、フェイクニュース■随時更新中


お知らせ

途中で読むのをやめてしまいそうなほど長文化してきたため整理編集を進め、また要約版作成や記事分割を含めたリニューアルを計画中です。また、ゆくゆくは別プラットフォームにて英語版も展開します。

この一件の風化を防止するためには、より多くの方に知っていただいて関心を寄せていただくことが不可欠だと考えています。裾野を広げるべく、予備知識がまったくない方へと想定読者層をあらため、また語り口もやわらかくして、より多くの読者の皆さんに届くようスタイルを変更する予定です。この機会に、以前から頂いている声やご不満を反映させるとともに、意図しない誤解を招かないよう努めて参ります。




京都・八坂神社の件とは

 2024年5月23日夜、京都市東山区に位置する八坂神社において、外国人ガイドが率いるツアー客4名のグループの参拝行為をめぐって、日本人女性(Xアカウント名:藤野)が注意。その後に撮影された口論の様子を映す動画が同撮影者の手によって公開されると、ネット全体に飛び火して壮絶なガイド攻撃が見られた。

 撮影者の当初の主張「次々と鈴の緒を柵に叩きつけて遊びながら参拝していた外国人を注意したところ、多人数から罵られ続けた(6月4日 AbemaTV発言では合致せず)」をマスコミは見出しなどで裏付けなく流して事実認定された格好となった。代表的なマスコミの切り口は「迷惑行為を注意したが逆ギレ」といったものだ。

 口論動画中にて、撮影者が煽って口火を切りながらも、ガイド男性も日本語で罵声を発していた事実があったため、「八坂神社」で検索すると外国人嫌悪に満ちた投稿がズラッと並んだ。

共同通信47ニュース/京都の地元紙・京都新聞 2024年5月27日
藤野氏主張の「たたきつけた」を流用


「日刊ゲンダイ」2024年5月31日
「迷惑行為」と言い切っているものの、記者はどんな行為があったか知っていたのだろうか。


動画拡散後に見られたガイドへの攻撃を取り上げたメディアは今なおない。


口論動画のほぼ全発言

  • 2024年5月23日夜

  • 京都市東山区/八坂神社境内

  • 日本人女性撮影者

  • イギリス人男性ガイド

  • 顧客は70代4名(顔が出たのは男女1名づつ)The Times インタビューによりグループサイズが明らかに

  • アメリカアクセントの居合わせた女性

 <日本語>
撮影者:<私がなぜ怒ってるかも伝えてないですよね
男性客:Enough. Enough. Enough. Get out of my sight.(もうたくさんだ。どっか行ってくれ
ガイド: Yeah, okay. Now. Do you speak English? Do you speak English? Do you speak English? <英語しゃべれますか?>(分かった。それじゃあ、英語は話せますか?英語は話せますか?英語は話せますか?<英語しゃべれますか?>
撮影者:<Google翻訳があるじゃないですか。あなた日本語もできますよね
ガイド:<8年ここに住んでます
撮影者:<ああ、はい、いや、そういう問題じゃない
ガイド:Can you leave us alone, please? Could you please leave us alone?(放っておいてくれますか。放っておいてくれませんか
撮影者:<今の発言て…
ガイド:Could you please leave us alone?(放っておいてくれませんか
男性客:Call the police.(警察を呼んで
撮影者:<英語ができないことを理由に私を虐げたじゃないですか
ガイド:Can you leave us alone, please?(放っておいてくれませんか) 
撮影者:<差別ですよね
★理解に苦しむ発言で口論はエスカレートしてゆく。
ガイド:Can you leave us alone, please?(放っておいてくれませんか

 以下同時
-ガイド:<何が差別?何が差別?
-撮影者:<なぜここで…

 以下同時
-ガイド:<何が差別?
-撮影者:<英語が喋れるかが必要になるんですか?私に

女性客:What's happening? 未確定
男性客:Why does she want to… 未確定
撮影者:<8年住んでるんですよね
ガイド:Can you leave us alone, please?(放っておいてくれませんか
撮影者:<日本語出来るじゃないですか
ガイド:<いや、日本人と結婚してますよ
撮影者:<いやだから日本人と結婚して…

以下同時
-女性客:It’s not his fault, I misunderstood and I made it too loud. It’s not his fault.(彼のせいじゃない。私が分かっていなくて大きく鳴らしすぎたの。彼のせいはじゃない
-ガイド:Can you leave us alone, please?(放っておいてくれませんか

男性客:Call the police. Call the police.(警察を呼べ、警察を呼べ
女性客:Yeah,come on, then.(そうね、じゃあ、そうして
撮影者:<呼んでもらっていいですよ
ガイド:If you continue… You are being very rude. Leave us alone.(そのまま続けると…。今とても無礼な振る舞いですよ。放っておいて
★「この調子で続けるなら警察を呼びますよ」と続けるところ、言葉を飲んだ?

撮影者:<Rudeはオマエや
★この発言でガイドの堪忍袋の緒が切れた
女性客:Good bye.(さよなら
ガイド:<何がオマエ
撮影者:<理解してるやん
ガイド:<何がオマエ
撮影者:<日本語理解してるやん
ガイド:<何がオマエ
撮影者:<日本語理解してるやん。大事に扱えって言ってる
ガイド:<うっせーなオマエ、黙っとけ。うるせーオマエ
撮影者:<これ別に逆に私が警察に出しますよ
ガイド:<マジでうるさいな、オマエ、マジでうるさいな
 
背後で女性客が他の客に説明するふうに発した言葉
I banged the rope loudly. You know what I did to the rope?  I was banging on the side too vigorous(ly) (鈴の緒で音を出しすぎた。私が鈴の緒にした動作は分かる? 側面を強く鳴らしすぎた
重要★遊んでいたり、意図的に柵に叩きつけたりしていた認識は読み取れない。また、当該女性客以外は、音が大きかったことを認識してない様子。ここから「グループが一体となって次々と叩きつけて遊んでいた」を明確に否定できる。
 
ガイドと居合わせた女性
★この女性は本殿前のやり取りまで見ずに一部だけ見ていた可能性大。
ガイド:Do you understand this? I have no idea what’s going on.(この状況を理解できます?一体どういうこと?
★言葉ややり取りが理解できないというよりも、「なぜこんなことになってる?」の意味合い

以下同時
-居合わせた女性:I think she just said that being very disrespectful to the..(とても無礼だと彼女は言ったと思う
-ガイド:'Cause the customers are like…(それというのもお客さんたちは…

ガイド:But they were not, they were not.(でも、違う、そんなことはなかった
居合わせた女性:I thought it was kinda rude.(ちょっと無礼かなと思った
★itが指している範囲は不明
ガイド:The lady … (女性は…) 未確定
居合わせた女性:I mean being disrespectful(失礼な振る舞いがね
男性客(非ネイティブ):We were (un)disrespectful ? We were disrespectful ? (私たちが無礼だったって? 無礼だった? )
居合わせた女性:It’s sacred, It’s sacred(神聖だから。神聖だからね)
ガイド:It's not. Because the lady… (そうじゃなくて、女性は…
ガイド:No, No, No. (そういう話じゃない
居合わせた女性:Maybe someone who is Buddhist(Shintoist) and this is sacred space for them, maybe they're offended that it was. You know, I'm saying is he should translate and say I'm sorry for disrespecting.(神道を信仰している人かもしれない。ここは神聖な場所だし、気分を害したのかもしれない。ガイドの方は通訳して、敬意を示していなかったと謝るべき
ガイド:We did it already, numerous times. (私たち、すでに何回も謝りましたよ
女性客:We are very sorry. We made a mistake.(みんな申し訳ないと思ってる。私たちは間違ってしまった
男性客:Bye, bye, okay, let's go.(じゃあね、行こうか
居合わせた女性:But don't be rude to her.(それでも彼女に失礼に接しないで
ガイド:We don't. Just telling her "Leave us alone" .(失礼には接してない。「構わないで」と言ったまで)
別の女性客:Because she is following us, and we don't need it.(彼女がつけ回すから。やめてほしい
女性客②:We are wasting time.(時間の無駄よ
ガイド:We don't mind having warnings.(僕たちは注意を受けること自体は何とも思ってないから
ガイド:Anyway(ところで
ガイド:<次やったら警察に報告しますよ
撮影者:<いや、今呼んでいいですよ>
ガイド:<これ消してください>
撮影者:<いや、今呼んでいいですよ
ガイド:<うるさい、オマエ…
撮影者:<ツイッターあげます
ガイド:<オマエの名前はなんですか
撮影者:<オマエ…"オマエの名前はなんですか"?
ガイド:<うるせいオマエ、消えろ
以上

多数から罵られた?
ここまで見て分かるとおり、「多数から罵られた」との描写は適切でないことが分かる。

誰も指摘していないポイント
撮影者は「オマエ」とケンカモードの口火を切ったが、ガイドは一度足りとも母国語で荒げた言葉使いをしなかった。
 

その後の流れ

  • 撮影者はXに動画をあげた

  • ガイド住所指名が拡散

  • 「違法ガイド」「闇ガイド」「旅行業法違反」など間違った情報が出回った

  • 外国人嫌悪を露わにする投稿が目立った


問題の整理

  • 動画前の話がハッキリしていないにもかかわらず、迷惑行為や悪質行為があったと半ば事実認定されて一方的にガイドを糾弾する投稿がほとんどだった

  • ガイドが顧客に注意したかどうか、情報がないにもかかわらず「ガイドは注意をしていない」と考える投稿が多かった

  • 撮影者自身のテレビ発言からも、にわかに信じがたい初期投稿「次々に鈴緒を柵に叩きつけて遊びながら参拝していた」のインパクト

  • 確かにガイドは動画中で暴言を発しているが、その後に受けた被害を見るに「ここまでの仕打ちを正当化できるのか」と少数派から声があがった

  • 「規範を逸脱している」とみなす価値観には個人差がある場面や状況がある。京都市は「電車内の化粧」を例えに

  • 注意する規範も、それを受け止める規範も個人差がある

  • 不慣れな訪日客には寛容な姿勢で接するべきではないか(八坂神社の鈴は重厚で鳴らしにくい)

  • 偽情報、誤情報にあふれたSNS

ほとんどのメディアも世論もブレブレだった

 さて、あのガイドの罵声は確かにショッキングだったが、見るべきポイントはそこだけなのだろうか。また、鳴らし方も罵声も注意も、あの動画に映ってない境内での出来事も、事実を把握する上で重要なだけであり、ガイドが動画拡散によって受けた言われなき権利侵害の事実を帳消しにすることはできないようにも見える。境内の出来事では傷害等もなく、詰まるところケンカ両成敗の口論ではないだろうか。当初の京都市は「電車内での化粧」を引き合いにして微妙さを説明していた。

 論争となっていたのだが、今回の最大の論点は境内の外で起こったのではないかという点。それは、特定、拡散、業務妨害疑惑、名誉棄損、外国人嫌悪、集団ネット私刑といった一般SNSユーザーを含めた一連の行動だ。

この件を取り巻く議論は、「動画の内容はもはや関係なく、境内のみならずその後に起きた一連の流れを俯瞰してガイドが権利侵害など大変な目に遭った」と考える人たちと、「動画前にガイドに不手際があったのだから(未確認情報)、ガイドの自業自得であり、またガイドは動画内で暴言を吐いたことから、女性は正当性をもって動画をさらしたのだ」と考える向きとで意見は二分され、SNS上では後者が圧倒的だった。

The elephant in the room

 「部屋にいるゾウのように、どうやって見逃しようのないもの」の意。あまりにも自明でありながら、そこに言及しない状態。撮影者擁護の発言を見る限り、なんら言及がなく、まるで晒しや特定がなかったかのように振る舞っているように見受けられた。「ガイドは自業自得なのであり、拡散以後に被害を受けたのは撮影者の責任ではない」といった趣旨での主張が目についた。

撮影者側とガイド側、双方の視点/主張

【撮影者側】

藤野氏自身の状況描写が複数ある。

①Day 1:2024年5月23日の投稿 
「次々に鈴緒を柵に叩きつけて遊びながら参拝していた」

2024年5月24日の投稿
振り回す動画

2024年5月25日の投稿 

ご一行、次々に鈴の緒を叩きつけて参拝。

男性の第一声は、「オマエ、ウルサイ」でした。


④2024年5月27日の投稿後にも先にも、この日の投稿のみ本殿右方向にある末社の描写が登場。

⑤2024年6月4日 Abema TV  
 5月27日投稿からさらに弱い描写に。迷惑行為に関する描写が読み取れず。悪意なく無作法になってしまった程度だとうかがえた。詳しくは後述。全発言録を掲載。※藤野氏視点は本殿視点のみ


【ガイドが知人に語った証言】

https://x.com/oliver1383860u?s=21&t=Pyw1n_9KgpM7BTieZ3rK1Q

いくつかのことを説明させてください。
まず、状況は私と私の顧客のグループが八坂神社にいたときに始まりました。私は彼らに祈りの儀式の方法や鈴を鳴らす方法を教えました。その女の子はすでにそこで外国人をランダムにビデオ撮影していて、突然私たちに近づいてきて、彼女の携帯電話に「ここは歴史的な寺院です、大切に扱ってください」といった翻訳されたメッセージを見せました。なぜ彼女がそれを言う必要があると感じたのか理解できませんでした。顧客のグループは70代の高齢者だったからです。しかし、彼女は年配の女性が鈴の綱を強く叩きすぎたと決めつけました。私たちは彼女を無視しようとしましたが、彼女は動画が始まる前の2分間、手を伸ばし、携帯電話を顧客の顔に向け続けました。ここから動画が始まり、その男性が彼女に「私たちを放っておいてください」と頼みます。私も同じように頼みました。私は彼女に「英語が話せますか?」と尋ねました。なぜなら、最初に彼女が英語で一文を言ったのを聞いたような気がして、そうであれば話がもっと簡単になると思ったからです。彼女と英語でコミュニケーションを取る方が、もし可能なら私にとっては簡単でスムーズでした。人種差別的な意図は全くありませんでした。私は日本に数年間住んでいて、多くの素晴らしい日本人の友人がいますし、ここを自分の家だと思っています。どうして私が人種差別的なことを言うでしょうか?ありえないでしょう。私たちは最初にその女の子に謝罪もしましたが、実際にはグループは最初から何も悪いことをしていませんでした。

https://x.com/oliver1383860u?s=21&t=Pyw1n_9KgpM7BTieZ3rK1Q

【2024年7月某日 本記事独自・情報筋によるガイド主張】

藤野氏が主張する注意直後の第一声が「オマエ、うるさい」であったことについて、事実無根と否定

【独自情報筋によるガイド主張】

  • ある女性によるナンパや素行不良嫌疑に関連して、藤野氏協力者が「警察に呼ばれて要注意人物になっている」と吹聴していた件について事実無根と否定。

  • ある女性によるナンパや素行不良嫌疑について、複数証言をもって事実無根と否定。

  • 藤野氏が主張する注意直後の第一声が「オマエ、うるさい」であったことについて、事実無根と否定


間違いやズレた論点、攻撃で埋め尽くされたSNS★独り歩きした「迷惑行為」「悪質ガイド行為」

 SNSは必ずしも一般の人たちの意見をのぞける場所ではなく、特定の思想を持つ人々が連携プレーによって、簡単に「いかにもそれが多数派」のような投稿をびっしり埋めたり、フェイク情報やミスリードを発信したりできる。このことに今回気づかされた。

 明らかに事実と異なる意見やミスリードを掲げて擁護にする声であふれていたが、興味の喪失も同時進行したと見られ、2024年6月前半をピークに時間を追うごとに沈静化が進んだ。

誤情報、未確認情報、フェイクニュース、ズレた論点リスト

  • 違法ガイドだ、闇ガイドだ(2018年からガイド資格は不要。”ライセンス”という表現もそぐわない)

  • 旅行業法違反(旅行業の基本は宿泊と運送。街歩きツアーには不要。また宿泊ありでもガイド料金のみ徴収している限りは案内業には不要。予約代行[立て替え]も同様) ※本記事筆者は国内旅行業務取扱者資格を保持

  • 会社登記なし、違法ツアー会社だ(個人事業主ではないだろうか)

  • 脱税(根拠は?)

  • 事案以降に出現し始めた真偽不明のトリップアドバイザー低評価レビュー(ほとんどが事案以降に記述されたもの)

  • ガイド男性の謝罪動画へのリンクがあると記載する、ガイド本人を名乗るのインスタアカウントが流布 同リンクは無関係なゲーム系サイトへのもの

  • 撮影者が例示した、ありえないほど乱暴に若い男性が鈴緒を振り回す動画について、当該客らだと誤認したり実際にそのように振り回したと思い込んだりする人が続出

  • 本殿が破壊された(痕跡は?)

  • 迷惑・不敬・悪質は実質なかったにもかかわらず事実認定 。「暴れた」「狼藉」などの類似表現も同様

  • 「教会モスクで~(とんでもない行為を挙げて)したら」と本件と比較して大げさすぎる例を列挙

  • 靖国神社の件だとか明かに次元の違う事象とくくる

  • 八坂神社は被害届を出すべき(被害がなかったので出す必要がない)

  • 神社や行政は対応を(裁くのは司法。日本は法治国家)

  • オーバーツーリズム論へ誘導(当日を発端とする一連の出来事とは無関係)

食い違い/ある女性が、ガイド男性のナンパや素行といった真偽不明の一連の情報を投稿

女性側/2024年6月、ガイド男性のナンパや素行不良についてXで投稿を開始。「飲み屋で男性から声をかけられた」「男性はナンパを繰り返している」「しつこく付きまとわれた」「神社で騒いでいた」「ケガをさせられた」などと糾弾。

ガイド側/2024年7月、情報筋からの確かな証言では事実無根を主張。
「飲み屋で男性から声をかけられた」については、複数証言が女性主張を否定。

あの振り回す動画は、全くの別人だった


迷惑行為があったなら、実際どんな迷惑行為だった?

 報道関係者含め、この質問には誰ひとり答えることができなかったはず。誰もが何が起こったかたよく分からないまま、まるで事実のように受け止め、あの振り回す動画は当該客らだと見なす声までがあった。感情的で何も語らない「注意して逆ギレ」に人々は見事にかき乱され、出来事の核心を追うことをやめてしまった。

罪深い"迷惑"というフレーミング

 悪気があったのか、不慣れだから音が大きかったのか。メディアにおいてもそういった考慮は一切なく、「あの振り回す動画と同等のもの」と匂わせる罪深いあるいは確信犯的な編集により、「無知でおバカな外国人グループが、ガイドに率先されて破壊行為を楽しんでいた」なる曲解が横行した。

「証拠がない」の誤解

 あの動画以前の様子を映す動画がなく「証拠がない」と有名インフルエンサーも気後れしていたが、実は、ある意味、あの口論動画が決定的な証拠だというこという見方もできる。それは晒すことに法的リスクがあるからだ。肖像権はなにも芸能人だけのものではないことは広く知られるところ。

重要報道を振り返る

①2024/5/29 デイリー新潮

初期報道のなかで唯一フェアな報道がなされた。
以下、記事内でのガイド側、八坂神社、京都市の回答。

ガイドは訴訟準備中と回答。訴訟についてはこれ以降発表はない。

ガイド側
「ご連絡いただきありがとうございます。せっかくご連絡いただきましたが、今現在警察、弁護士に相談、名誉毀損等で訴訟の準備をしていますので、現時点でお話しする事は遠慮させていただきたいと思います。京都はオーバーツーリズム問題を抱えており、一定数の反対派が存在し、中には外国人に対して異常な嫌悪感、度を超える行動に出る人たちがいるようです」

八坂神社広報室
「動画のことは把握しており、参拝者間のトラブルがあったものだと認識していますが、実際にその場でどういった事が起こったかという、事実確認まではしておりません

「今回の1件がひとつの契機になったことは事実ですが、以前から日本人、外国人に限らず、鈴緒を強く振る方がいて、鈴緒が壊れてしまうという事例も起きていた。特に夜間は警備員が2名、当直の神職が2名しかおらず、参拝者の安全を確保するために、今回このような対応に踏み切ることになりました」

京都市・観光MICE推進室
「電車内を思い浮かべてもそうですが、“マナー違反”というのは人によって感じ方の程度が異なるので、なかなか難しい側面があります。あくまでコミュニケーションの延長線上で、外国人観光客とマナーについてやり取り頂くのは良いのですが、我々としては、市民の皆さんに外国人観光客のマナー啓発をするところまでは求めていません。トラブルになりそうな場合はまず警察を呼んでください」

②2024/6/4 ABEMA TV

 鈴の緒の鳴らし方について、6月4日に放送されたABEMA NEWS TV https://abema.app/s2Bk に音声出演(顔出しせず)した藤野氏が語った。

藤野氏の発言書き起こし全文収録(7/3 修正)

差別的な発言があったというのはどの部分か

そうですね、動画内でも私が口にしていた、「差別が」というところは、Do you speak English?というガイド男性の発言によるんですけれども、それまでに会話についてはすべて日本語で行っていたんですね。その中で会話の齟齬とかはなかったですし、彼も非常に流ちょうな日本語を話していたというのもあって、私が英語を話せないっていうのを分かった時にそれを発したものですから、それは英語が不得意な日本人に対する差別ではないかという態度でした。

https://abema.app/s2Bk

外国で興奮してくると母国語で話したいものかもしれない。「英語話せますか」はそれだけのことのように感じた

そうですね、そういうふうな捉え方をするのであれば、いま画面に出ている最後のCan you leave us alone, please? というのは出てこないと思うんですね。それまで日本語でもちろんできていて、英語だったとしても、ここにつなげる事はできると思うんです。

https://abema.app/s2Bk

英語で「十分です、十分です」と距離を置こうとしていたなかで、ヒートアップしていったと見えた

少なくとも、ツアー客と私の間では、コミュニケーションというか意思疎通が取れていない状態であって、やはりここはガイドの方が仲介に入るべき、責任を取るべきだと私は思ったんですね。

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動画の前は何分くらいのやり取り?

あの動画が始まっているところというのが、本殿と、最後に出て行く出口の間くらいなんですけれども、本殿からその中間までなので、1分ないくらいなんですね。

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そこまでの流れは?


本殿の前に鈴が3つ下がっているんですけれども、彼らが一番右の鈴を使っていて、その真ん中のところにはまた別の方がいらっしゃって、私が左側のところにいたんですね。で左のところでお参りをしてたんですけれども、その前の時点でガイドの男性がお参りの仕方みたいなのを簡単に教えていたような様子を私も見ていて、お参りをしようとしたところで、すごく大きな音がして、右の方を見てみたら、結構力いっぱい、鈴を鳴らしていると。もちろんその時点で、直ちに止めに入るようなレベルではなかったので、自分もお参りをして、その後本殿向かって右側のほうに行こうとしたんですけれども、やはりどうしても強くて、加えてあまり丁寧に扱っていないっていうような印象がすごく強かったんですね。柵に叩き付けるといった表現をX上ではしていたんですけれども、結局、勢いよく鳴らして、鈴の緒を力いっぱい振り回して......振り回すまでなかったとしてもですね、そのまま手を離すと柵に大きな音をして叩きつけられるようになってしまうんですね。で、だからもう少し丁寧に扱ってほしいっていうのを、今回、ガイドの男性にお伝えをしたというかたちで。

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ガイド側の主張について

  • お客様が鈴緒を柵に叩きつけて遊んでいたという事実はない

  • 日本の文化やマナーを尊重している。お客様にもご理解いただいていた

  • 藤野さんが拡散した、男性による鈴緒を振り回す動画は全くの無関係

少なくとも最後に書いてある(無関係の男性の動画)、鈴の緒を振り回している動画が全くの無関係というのはそうで、参考までにというふうに、自分が撮れていなかった部分なので、こういった状態の一歩手前だった、と参考までに付けたものなので、全く無関係というのはそのとおりです。

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鈴の振り方の強さはどれくらい?

言葉で説明するのは、すごく難しいかなと思っているんですけれども、少なくとも私が公開した動画の中で、私は英語で、乱暴に扱わないでとか、大きな音をたてないでとか、ということはひと言も発していないんですね。ただ、公開した動画の中で、女性の方が「大きな音を出しすぎちゃったんだわ」とか、いうふうにおっしゃっていたりだとか、しているとこを見ると、何かしらそういう感覚ってあったんじゃないかなと思っています。で私の感覚っていうのは、もちろん、何かで測れるわけではないので、どれくらい雑に扱ったかというのは。ただ私としても神社にいた身として、さすがに声をかけるか迷うくらいの段階だったんですね。でもちろんその場には八坂神社の方はいらっしゃらないわけで、ただちに社務所に走って神職さんを呼んでくるというところではなかったわけなんですね

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どんな感じで注意を?

私から話しかけた方(お客)っていうのはないんですけれども、ガイドの男性は、少なくともお参りの仕方を知っているというところで、ある程度理解のある方なのかなと思ったんですね。なのでGoogle翻訳を使って、「乱暴に扱わないでほしい」とい旨の内容を見せたかたちになりますね。なので日本語と英語両方が表記されているかたちでお見せしたんですけれども、それに対して「オマエうるさい」と言われてしまったので、そこから日本語でやり取りが始まったという感じです。

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外国人と見られる女性が「ガイドは、あなたの言葉を通訳した」と話していた ※質問者の誤った理解に基づく質問

すいません、えっと、その女性というのは、ツアー客ではない方が、横から入ってくださって、ていう場面で。

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注意した段階でガイドは通訳したか

彼、ガイド男性がツアー客に「こんなことを言っている」と言った場面は一切なかったです。

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最後にひとこと

今回ネット上でもいろんな意見が飛び交っていて、私もすべては見切れていないところにはあるんですけれども、もちろん日本の文化やったり、神社をはじめとしてこういった文化財を大事にしたいという気持は皆さんあるのかなと思うんですけれども、現状、これだけ外国の方が観光客として来られているなかで、どうしても対策不足なとことがあると思うんですね。そのなかで私のようにトラブルに発展してしまう場合もあるので、こういった事例に従うかたちで、自分も注意しようっていうのは、まだちょっと危うい段階なのかなと私は考えています。

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わかること

  • 鈴の緒を叩きつけていた事実はなかった?「遊んでいた」という表現なし

  • 「手を離してた際に当たってしまうこともある」とのこと。当たったのが実情

  • 振り回す動画も別人だとのこと

  • 「次々に」に呼応する描写が見当たらない

  • 迷惑行為と称するに匹敵する行為の描写が見当たらない


③2024/6/4 The Times(有料) 趣旨&発言全訳

 Richard Lloyd Parry記者による両サイドを取材しての記事。藤野氏に割いた紙面が少なかった点は気になったが、それまで圧倒的に藤野氏寄りの報道が中心であったため、公平の範疇と言えるのではないか。

ガイド男性側

  • 知らない人々が電話をかけてきて不快な発言を浴びせ、電話を切るまでやめない

  • 見知らぬ人々が住まいの周りをうろつく

  • 匿名Xユーザーが放火予告を思わせる投稿をした

  • 白ブタ、クソ外国人、国へ帰れ、などを罵声を含むメールを複数受けた

  • 家財を勝手に運び出すためなのか、運搬トラックを手配したものがいた

  • 6歳の子どもは学校に行けなくなった

  • 妻はパニック障害を発症し、薬を服用している

  • 不安から、しょっちゅうカーテンの陰から外を見る

  • 注意を受けたあと、ガイドと英国人ツアー客は謝った

  • 悪意を感じさせる日本人が電話をかけてきてプライベートツアーを希望した

「2週間寝ていません。極右勢力にリンチされないか不安です」
「彼女は謝罪を求めていたように見えなかった」
「敵意をむき出しにしてました。出来事の始まりから、何かトラブルを探していたように見受けられた。ささいな出来事でしたが、私たちの生活に甚大な影響を与えています。日本社会の暗部を見せられたようです。すてきで、愛らしくて、親切。そんな日本人が本当にたくさんいます。でも残念ながら、過激な人々も間違いなく存在しているのです」

藤野氏

  • 投稿がガイドとその家族にもたらした影響について後悔の念はまったくない

「外国人旅行客の増加現象は、日常生活に組み込まれてしまったようです」
「スーパーマーケットやコンビニで外国人旅行者を見かけます」

不都合な真実① ほぼ全報道から切り取られた女性客の言葉 <悪質ガイド行為の否定>

 投稿で、番組中で、藤野氏自ら「まずガイドが参拝を説明していた」との趣旨の説明があった。また、動画中で女性客が「音が大きかったのは悪かった。彼のせいじゃない」との趣旨で発言。つまり、「ガイドが無知な顧客に変なことを教えて、叩きつけるように遊んでいた」などの行動を主導した可能性は否定できるのでは。こうした裏付け証言をよそに、「ガイドが遊びを主導した」なる通説あるいは作為的投稿がSNSを席巻した。

不都合な真実②4名のツアー客は高齢。少なくとも2名は70代 <振り回すことは身体的に可能なのか>

 あの出回った振り回すような動作が身体的にできるのだろうか。また日本人でも、やや鳴らしにくい場合は大ぶりに頑張って鳴らそうとすることもあるはずだ。高齢者である点は初期にスポットライトが当たっていれば誤解を防げたのでは。一般常識をもった高齢者が宗教施設で柵にたたきつけながら遊ぶだろうか。

不都合な真実③ 藤野氏の先制攻撃「Rudeはオマエや」<ガイドの罵声のみ非難することの理不尽>

 藤野氏の「rudeはオマエや」で口火を切るかたちで、一定の冷静さを保っていたガイド男性が声を荒げた。にもかかわらずガイド男性の発言だけを非難する報道が多かった。SNSでも同様の避難が非常に目立った。

”注意論争” ガイドは晒されて当然なのか 晒しは正当化しえないのか

 規範があいまいな場合、"注意"する側に自動的に絶対性を付与されて謝罪されるのが当然というわけではない。"注意"と思っていても相手はそう思っているとも限らない。お互いに主張を説明し合えばいい。「なぜそんなことで注意を?」という反応もひとつのあり方。そして、自分が思うような謝意を見ることができないこともありえるし、双方にそれぞれの主張があっていい。
 何らか作法的に気になり藤野氏は注意したという。それ自体は何もおかしい行動ではない。キリスト教系や中華系は得てして元気に大きめな音を鳴らすものだ。理想は寛容な心持ちで笑顔で接しながら「いい?こうやるんだよー」と教えてあげる温かみのある姿勢。
 基本的には「注意そもそもがおかしい」とまでは追及される必要はないし、またガイド男性の技量によってうまく穏やかにその場を取りなせた可能性もある。
 先述のガイドが友人に語った証言では、ガイド男性は藤野氏が英語を話したように聞こえた瞬間があったという。

あるツーリズム事業者の声

インバウンド観光業従事Aさんに話を聞いたーー

 まあ、あそこはちょっと厄介なんですよ。この仕事を始めてから気づきましたけどね。業界関係者なら誰でも知ってるのでは?

①振り方、②鈴の音、③柵に当たる音と、3つの要素がありますが、一連の騒動ではそれがゴッチャになっている印象を受けました。主張や証言が曖昧だったので仕方がないですが、曖昧な「音」という表現が先行してました。あの出回った動画の影響もあり、音が大きかったのかと人々に印象を与えたようです。

 「柵に当たる」といってもイメージしにくいと思います。柵の前に立って上を見上げると、若干ですが鈴緒は柵の上方内側についていることが見て取れます。その証拠に垂らした状態では鈴緒は柵に対してやや前方に垂れ、最初から柵に接触しています。つまり手を鈴緒から離すと、元の位置に戻ろうとする力が作用するものの、柵があるため当たりやすいというわけです。
 そして鈴緒の下端付近に付いている、文字の刻まれた六角柱状の木製部分(桐枠)もポイント。鈴緒も桐枠も重くて太い。その重厚な趣向があだとなって、インバウンド客のみならず苦労することがあります。鈴緒全体の重さと柵への近接、それが要因となって重みが原因で離したタイミングでそのままゴンと当たってしまうことが悪意なく起こりえますし、実際にたくさんのお客さんが当ててしまうケースを見てきました。ボールを投げる動作で考えてみましよう。すぐ体の前に壁があると腕を振り切れません。同様に八坂神社本殿では柵あるために前方に振り切らないほど前方の可動分が少ない。その制約のなかで前後に振って鈴に当てる。まるでドラのようにです。重くて太い鈴緒に対して主にしならせることだけで力を伝えるのは日本人でも手を焼く場合があります。
 こうした事情により、最後に当てないためにはそっと手を離す必要があります。日本在住者ならちょっと言われてたら勘が働きますが、「日本どころかアジアも初めて」といった観光客が音を出してしまうのは、やはり温かいまなざしで見つめてあげてほしいものです。

 次に鈴の音の話を。当たる当たらないとは別に、重たいので老齢者のみならず苦労することは珍しくありません。誰しも鳴らしたいものですよ、日本人でも訪日客でも。だからみんな頑張る。鈴と鈴緒は一体化あるいは接触しているのが普通。八坂本殿は、鈴緒と鈴が接地せずに紐状のものでつながり、鈴が鈴緒から見て奥側にある。振るだけでは鈴に力は伝わらない。そのため物理的に当てる感じ。小さなお寺の鐘のイメージ。鈴に当てて音を出す。方向なんか意識せずに軽く揺らすと音が鳴る一般的なつくりとは違います。振って鳴らすというより、前後に振って鈴緒上部で鈴に当てて音を出す。コツがいりますね。重い重厚な趣向の鈴緒で力を伝えてしならせて、若干離れてた鈴に当てるのは若い日本人でも苦労する場面が多くあると思いますよ。初訪日の高齢者が苦労したのは当然です。八坂本殿だとかなり若い人でないと「鳴らしすぎ」がそもそも発生しにくい造りになっています。

 こうした構造的な特徴は伏見稲荷などと比較し大きく異なります。他の神社では通常起きない出来事です。悪意をもって当てるというのは泥酔した人物くらいしかありえず非現実的。数千人を見てきましたが、ワザとなんて一人も見たことありません。

 日本の「しめやかさ」はすぐには分かってもらえるものではなく、どうしても賑やかに元気よくなりがちなんですね。「ハイハイもう十分!」と思うくらい鳴らすことが珍しくない。担当したことはありませんが中華系も派手になりがち。文化の違いでしょうね。八坂神社本殿でそれこそ騒がしいくらい鳴らす中華系訪日グループ(ガイドなし)には注意したこともあります。別に謝ることもなかったのですが、ひと言ふた言でその場を後にしました。それで何か憤りを覚えたとかはなかったですし、納得がいかないからとついて回るようなことはしませんでしたね。とはいえ、この辺りは職業柄と言いますか、慣れていますので一般の方とは違った反応かもしれません。

 老齢の訪日客が苦労してうまく扱えなくても体力と構造を考慮してあげるのがホスピタリティというものではないでしょうか。事情を知らない一般の方が見ると「けしからん!」となるのは理解できますが、一歩相手に踏み込んで「一生懸命だったり慣れてないだけだったりするのかな」と思う心の余裕があれば対応は違っていたと思いますね。一定の寛容なまなざしをもって接することが大切だと思います。

動画に関しては、もちろんガイドが最後に声を荒げたのは控えるべきでしたが、極限の状況ですからね。おそらくは大したことない行為で数分間ついてこられて、カメラも向けられて。「英語話せますか」で「差別ですか」と仰天するような返しをされて。何とか冷静を保っていたところを女性が「rudeはお前やと」とケンカ腰で煽られてキレちゃったんでしょうね。察するものがあります。 
 ただ、よく言われたような「逆ギレ」ではないですよ。なにより、あの切り取りはアンフェアかなと思いました。撮影者が不快に思ったにしろ、あの仕打ちはないですよね。動画画像なしで「こんなことがありました」って投稿だけでよかったんじゃないですかね。(2024年8月)

桐枠とは
https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E9%88%B4%E7%B7%92/
鈴をの根元にある木製六角形状の部分


 

食い違う、注意後の第一声

 藤野氏の言い分では注意のあとに「第一声は”オマエ、うるさい”」だと主張。執筆者が情報筋から得た情報では、ガイド男性は事実無根であると主張しているという。藤野氏の言い分どおりであれば、もちろんガイドとして適切な対応とは到底呼べない。また、藤野氏が気持ちが収まらず付いて回ったことも筋が通る。それこそ「注意して逆ギレ」の構図だ。
 根本的な話だが、ガイドに限らず接客を行う者が注意なり苦情を申し立てられて即キレるなどあり得るのだろうか。長時間揉めて顧客のあまりの悪態に手を持て余し、我を忘れて語気が強くなることはあるかもしれない。しかし第一声で罵声を? 誰もがいち早く丸く収めたいものであるところ、罵声を浴びせるなど何らメリットがない。藤野氏の主張に疑問を覚えるサービス業従事者は多いのではないか。

 撮影者の寛容性とガイド側の取りなし方。そこは気になるところだが、ハッキリした内容が分かっていない。ただ、アベマテレビでの発言から類推でき絞り込むことができる。

女性撮影者寄りの視点

 あくまで仮定だが「自分から純粋な気持ちで注意したのに、あんな風に口論になって、罵声を浴びせあって終わった」のが事実なら、確かにその気持ちは察するものがある。普通に「大変な目にあったね」と言われてもおかしくない。ただ、その労いはガイド男性にも掛けられるべきものだが、ケンカ両成敗にしても1対5なら負担が異なる。 
 公平を期すと、もちろんガイドはどんな状況でも声を荒げるべきでないし、藤野氏にしても5人相手はそれなりに怖さもあり冷静でいられなかったことも理解できる。また荒っぽい言い方にしろ、罵詈雑言ではなく「大事にしてくれ」と伝えた。もう一つ、何もなかったのに苦情を申し立てることも考えにくい。撮影者にすれば翻訳機を介してまで言いたかったわけであり、それは「覚悟」とも読み代えることができる。
   

「相手に負い目のある行動に注意をしながら、口論となり最後に殴った」と同じ

 仮に本当に逆ギレだったとしても、世の中には残念ながら「注意して逆ギレ」は山ほどある。正当な理由から注意したとしても、相手側が荒げた調子で食ってかかることもある。ここで殴ったら負け、最初の純粋な注意も泡と消えて傷害罪だ。
 似たような話。この口論の末に動画を晒したことは、「純粋な気持ちで間違いを正しく注意したものの口論になり、最終的に殴ってケガを負わした状態」と同じではないだろうか。
 どんなに正義心から注意したとしても、ほかの誰かであっても注意してたことでも、動画で晒すことや、個人情報の特定&拡散を正当化することはない。そう差し引きすると、実はあまりにも簡単な話に見えてしまう。ただ、「謝った、謝らない」など、その場の発言から考慮すべき事柄も、晒しや、その後の集団でのガイドへの攻撃で吹き飛んでしまった感がある。
 

Do you speak English? 

 ガイドが発したこの言葉をきっかけに、藤野氏は「差別ですよね」「私を虐げているんですか?」と応じた。

「一体どこの誰が、Do you speak English?を差別と受け取るのだろうか。ただ母国語でのコミュニケーションを求めただけでは?」と思う向きと、「女性が英語ができないことを利用して優位に立とうとしてるのでは」との声で二分だれ、後者が圧倒的優勢だった。

 世間一般の方々と同じように理解に苦しんだが、ある時その境地が分かった気がする。「君は英語を話せないんだろ。話してみろ」と曲解したのではないか。

 

ガイドは藤野氏に動画削除を求め、藤野氏は拒んだ

。藤野氏の投稿によると、以前に外国人から着物姿の写真を撮られ、削除を迫ったという。

  • 写真を撮られることを嫌がる権利はある。

  • 嫌な気分をしたからと「目には目を」で晒すことは法に反する。感情の発露と行動の飛躍について今回のケースと同じ類型を確認できる。

  • 別投稿では写真を撮られたことを嫌がり削除させたという。その権利はあるだろう。では、今回ガイド男性は口論動画で動画の削除を求めていたが藤野氏は拒否した。これをどう説明するのだろう。

  • 最大限に公平を期すならば寛容/不寛容は個人差があり、そこは責められる必要はないのでは。


ガイドの顔と住所が晒され、6歳女児が早々に学校に通えなくなりおびえて暮らす。妻はパニック障害に(The Times)

 せっかく友達もできて、学校に慣れてきたのに⸺。そんな状況かと察する。想像するだけでも、あまりにも哀しく胸が締め付けられるよう。6歳の時にそんな経験をした大人はいるだろうか。母として父として、ひとりの大人の人間としてどう思うだろうか。撮影者擁護派は「これは自業自得なので仕方がない」と考えるのだろうか。

 過激な人が家の前にやってこないか恐怖に駆られる。脅迫まがいのおびただしい数の電話が鳴る。日常の暮らしを脅かす。これが人権侵害でなくてなんだろうか。”側近”は「(ガイド側の)引越し先探そっかなー、やらないと思うけど」などと、基本的人権とストーカー防止法の精神を弄ぶ重大発言もしたという。幸福追求権や穏やかに暮らす基本的人権を侵害しするその言動は、

それぞれが受けた被害、与えた被害

  • 晒しや特定、ネット総攻撃の被害を受けたガイド、余波を受けた家族

  • トリップアドバイザーにて殺害脅迫を受けたガイド男性

  • トリップアドバイザーにて殺害脅迫を行った人物と、いいねをした93人

  • (藤野氏言い分を正とした仮定)注意後に日本語で罵声を浴びせたガイド男性、またその罵声を浴びせられた藤野氏 

  • 「悪質ガイド」とのレッテル貼り、違法ガイド、旅行業法違反、脱税など根拠不明の糾弾を受けたガイド

  • 「(ガイド側の)引越し先探そっかなー、やらないと思うけど」などと、人権とストーカー防止法の精神を弄ぶ発言したとされる関係者

  • 「まずは精神科医で(音が苦手だと見せるために)診断書をもらおう」と謀議を企てる発言したとされる協力者

  • 拠出真偽不明、ガイド男性の謝罪動画へのリンクがあると情報を流布した人物

  • ガイド男性の女性関係(本件に無関係)でおとしめようとする目的なのか、真偽不明のインスタスクショを流布した人物


  • 誇張動画と「叩きつけて遊んでいた」発言により、言われなき信用をおとしめられた外国人旅行客全員

  • 風評被害により言われなき名誉を毀損された外国人ガイド全員


  • 妄信的あるいは確信犯的にフェイクやミスリードを投稿するSNSユーザー

  • 国籍を理由とする言われなき誹謗中傷を投稿するSNSユーザー

  • 動画拡散に協力した悪意あるSNSユーザー

  • 「特定」などの言葉を振りかざされることで声を上げることをやめた数多くのガイド支持者

  • 正しい報道をしなかったメディア

  • 誤報を修正しなかったメディア

  • ガイド男性の証言に耳を傾けなかったメディア

  • 問題の本質をとらえようとしなかったメディア

 

誤った情報やミスリードの拡散

 すべての出発点となった「次々と柵に叩きつけながら参拝していた」も、性善説に立てば藤野氏には主観でそう見えたと受け取ることも可能かもしれない。しかしそれは上記番組にて自ら否定。投稿文は実際の状態を装飾したのではないかと自然に疑義をもつ。仮に「(意図的に悪ふざけきて)叩きつけて」「遊んでいた」という事実無根の表現で脚色したことが事実なら、非常に重い。虚偽のナラティブを形成し、人々に真実味を持たせた格好となるからだ。世間は文字通り「列をなして、次々に、意図的に破壊しようと遊んでいた」の意味に捉えた。ツアー客や外国人ガイドを思うと、これはあまりにも罪深い。

本当に「次々と柵に叩きつけて遊んでいた」場合

 6月4日のAbemaTV発言により藤野氏は事実上虚偽の表現を認めたと言っても差し支えがないが、仮に本当に遊んでいたからといって、注意したらガイドが暴言で返してきたからといって、藤野氏とその協力者の行動が正当化されることは決してないのではないか。顧客の瑕疵を探って注意したことの正当性を打ち立てることも全体を動かすことはない。

営業損失額算定の基礎データ

ある日のツアー収入 18万円 [30ポンド x 30 名]  (The Times)

SNS運営会社による処罰のあり方

 2chなど伝統的に過激な発言が許容されたネット黎明期のプラットフォームの弊習もいまなお名残があるのか、X/Twitterでも驚くようなヘイトスピーチが当たり前のように繰り広げられている。
 活発な言論が保証される一方で、他人の権利を侵害したり他人を傷つけてはいけない。根本的な対策としては、匿名でなく実名で登録する仕組みづくりを導入することで、アカウントをまたがった健全なオンラインアクティビティの担保になってゆくだろう。また、AIを導入することにより通報することなく自動的に検知してアカウント凍結とする体制が今後確立していくはずだ。
 SNS全体についてサイバー犯罪課と連携を緊密に取ることが望ましいのではないか。軽々しく聞こえてしまうが、交通違反の切符のようにSNSの枠組みを超えてた共通のスキームがわかりやすいのではないか。

記事の目的

 この記事の目的の一つは、初期報道によって盲目に不正確な情報を信じてきた方々に"開眼"していただくこと。デマやフェイクニュースが多く、エコチェンバー化するSNSにあって、気づかぬうちに認知の歪みが生まれてしまう。ごく一部の方々だけでも今までの異なる視点で見つめるようになればと願っている。
 「注意して逆ギレ」を超えて、この騒動全体を俯瞰する。顔をさらされて(肖像権侵害)残酷な私刑にあったのは誰か。図らずも公になっていたGoogleマップやツアーサイト「Get Your Guide」で知り得た情報を、悪意をもって拡散した人物は誰か。制止あるいは静観を求めるべき人物は誰だったのか。思いをめぐらす機会になればと思う。
 

いまこそ、晒しについて考えるとき

 ネットの世界でゲーム感覚やリベンジ感覚から生まれ、誰の手にも負えなかった晒し。アップロードのワンクリックで、安全な日常を奪って基本的人権を侵害し、家族を追い込み、仕事を失わせ、メンタル崩壊をももたらす。一方の当人は、名前も顔も明らかにせずにゲームに興じるかのような悪びれないありさま。それがまかりとおってきた。誰も手をつけられなかった。利用してきた者もいた。そして悪事の意識すらなかった人々がいた。晒しは、見過ごされてきた無法地帯だった。
 "晒し動画型"のケースとして、これほどまでに"劇場型"で、かつ、たった一人の人物がおびただしい数の人間によって、爆発的な量の言葉にもできないようなガイドへの嫌悪感と偽情報を流布でネットリンチされたのは、おそらくネット史上初めてかもしれない。
 誰がどんな目に遭うのか。画面を超えて想像力を働かせ、どれほどペナルティがふさわしいのかを社会全体で考える良い機会かもしれない。ネットリテラシーの「ニューノーマル」が生まれる契機となる可能性すらある。 
 私刑の違法性とは。その意識は多くが希薄だが、まぎれもなくネットは治外法権ではなく法的にリアルと地続き。たったひとつの投稿で民事や刑事の対象になる。そこに目を向けるきっかけにもなる大型かつ歴史的な社会問題になることは間違いない。
 今回は「外国人」「神社」の2大要素があり、急進的な右派の方々の心情に火に油を注ぐかたちとなり、誤った情報が過失としてまたは確信犯的に広がっていた。拡散者の手を離れて過激に暴走する人たちをコントロールすることは難しいにしろ、「冷静に」「落ち着きましょう」「間違いやミスリードが含まれていますよ」など、冷静な議論を呼びかける誠実な声明を出すことが抑止になったはず。ネットリテラシー文脈から議論がなされてもよいのでは。



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