友好の歴史広める絶妙のトルコ料理 白浜・串本

勝部真一
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 「世界三大料理」の一つに称される「トルコ料理」だが、残りの二つ「中華」「フレンチ」に比べるとなじみが少ない。「トルコライス」を思い浮かべる人もいるかもしれないが、イスラム教徒が多いトルコでは食べない豚肉を使った長崎のご当地グルメで、トルコ料理ではない。

 そんなトルコ料理を食べることができるカフェが和歌山県白浜町串本町にある。

 経営するのは串本町出身の本田景士さん(41)。高校を卒業後、大阪のIT関係の専門学校に進学した。その後、東京でシステム関連や広告の会社を起業したが、2011年の東日本大震災の影響もあり、会社をたたんで帰郷した。母親が経営する居酒屋を手伝う中で、「これまでは金もうけをしたくて会社を作ったが、なにか人のためになる仕事をしたい」と、地元に残る串本とトルコの友好の歴史を広めることを考えた。

 トルコには親日家が多い。その理由は、130年以上前にさかのぼる。

 1890年9月、串本町の樫野崎沖でオスマントルコ軍艦「エルトゥールル号」が座礁し沈没。600人近い乗組員が犠牲になったが、69人は島民の救助や介護を受けて生き残った。

 本田さんは高校卒業まで串本で育ったが、トルコとの歴史を意識したことはほとんどなかったという。いったん離れたからこそわかる地元の宝に気がついた。「生まれ育ったまちのすばらしい物語を、多くの人に伝えたい」

 13年7月にランプやお守りなどトルコ商品の輸入、販売をする会社「KCR」を設立した。商品の保管や販売をする場所を探す中で、白浜に店を構えることになり飲食店を兼ねた「紬(つむぎ)カフェ」を14年9月にオープンさせた。

 提供する料理の中心はトルコの国民食ともいわれる肉料理ケバブ。国内だけでなくトルコにも渡り、食べ歩いて「日本人の好みに合う絶妙なバランス」を追求した。本場は羊肉を使うが鶏肉にしたり、ソースに梅酢を使ったり工夫を重ね、リピーターの多い人気メニューに仕上げた。「古座川ジビエ 山の光工房」(古座川町)と共同開発した鹿ケバブもメニューに取り入れている。

 18年3月には、エルトゥールル号を題材に、妻のやまぐちさゆりさんが執筆した絵本「タイヨウのくにとツキのふね」が出版された。「子どものころに親しんでいると、中学や高校で学んだときに、しっかりと心に残ってくれる」。自身の経験も踏まえた思いだ。

 そして19年3月には、串本町に「タイヨウのカフェ」を開店した。ここでは、トルコのハンバーグともいわれる「キョフテ」も注文できる。「ミンチ肉のステーキみたいで、普通のハンバーグとは違う。味付けも異国っぽさ満載。おいしいですよ」と本田さん。こちらもおすすめだ。(勝部真一)

     ◇

 紬カフェ 和歌山県白浜町2927の1704(0739・33・7683)。9~17時。月、火曜日定休。ケバブライス(1080円)のほか、ランチプレート、チキンカレー、バクラヴァ(トルコのパイ)、トルコアイス、トルコ式チャイなどもある。キーホルダーやブレスレット、ピアスなどの制作体験もできる。

 タイヨウのカフェ 串本町串本2079の2(070・3317・4075)。10~19時。無休。タイヨウのケバブライス(880円)、グリルキョフテ(トルコのハンバーグ、サラダ、ライス、スープ付き1480円)など。制作体験もできる。

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