【Q&A】マイナ保険証 資格確認書って何? 今の健康保険証との違いは?あくまで一体化方針を目指す政府<更新>

2023年8月4日 19時09分
来年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードとひも付けた「マイナ保険証」に一本化する政府方針を巡り、別人の情報がひも付けられたり、読み取り不具合のトラブルが絶えず、国民の不安が高まっています。
岸田文雄首相は8月4日の記者会見で、保険証の代わりとなる「資格確認書」をマイナ保険証を持たない人全員に交付し、その有効期限を5年以内に設定する考えを示し、不安払拭に努める方針を強調。現段階ではあくまでも廃止方針を維持する考えを示しました。
資格確認書とは何か、現行の健康保険証とどこが違うのか。マイナ保険証をめぐる課題や問題点をまとめました。(デジタル編集部)※8月4日更新

◆保険証と資格確認書、どう違う?

マイナンバーカード(一部画像処理)

マイナンバーカード(一部画像処理)

Q 資格確認書とは?
A 政府は、マイナンバーカードを持っていない人、持っていても保険証とひも付けていない人、または紛失した人、介護が必要な高齢者や子どもらカード取得が難しい人でも保険診療を受けられるように、健康保険組合などの保険者が保険証の代わりとなる「資格確認書」を無料で発行する仕組みをつくっています。
Q 資格確認書には何が記載されているのですか?
A 氏名、生年月日、被保険者等記号番号、保険者情報などが記載され、紙または電子データで提供されます。
Q 資格確認書は申請しないともらえないのですか。
A 政府は当初、本人からの申請に基づき交付する方針でしたが、寝たきりの高齢者など本人申請が見込めないケースがあることから、岸田首相は8月4日、マイナ保険証を持たない人全員に対し、申請がなくても交付する考えを表明しました。
Q 資格確認書に有効期限はありますか。
A 政府は当初、期限は最長1年間で、期限が切れたら1年ごとに更新する運用方針でしたが、首相は「(健康保険組合など)各保険者が5年を超えない期間に決める」と述べました。
Q マイナ保険証と資格確認書では、患者が窓口で負担する受診料が変わるのですか。
A 資格確認書を利用した場合は、現行の保険証を利用した場合と同様、マイナ保険証を利用した場合よりも、政府は受診料を高く設定する方針です。
Q 現行の健康保険証は2024年秋に廃止されたら、どうなりますか。
A 発行済みの保険証は最長1年間有効とみなす経過措置が取られます。ただ、個人が加入する公的医療保険は、勤務先や居住地によって変わるほか、75歳になると後期高齢者医療制度に移ります。現在は、加入する保険が変わるたびに、健康保険組合や自治体などが新しい保険証を発行していますが、厚労省は加入する保険が変わった時点で経過措置は終了と説明。転職時期や年齢によっては、猶予期間が1年ではなく、ただちに終わるケースも想定されます。
Q 資格確認書と現行の健康保険証の違いがよく分かりません。健康保険証を残せば済むのではないですか。
A 政府は医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めることを理由にあくまでも現行の保険証を廃止する方針です。一方、国民皆保険制度の下、マイナ保険証を持っていない人でも保険料を支払っている以上、保険診療を受ける権利があるため、三つが混在することになりました。このため、資格確認書の発行や運用を拡大すればするほど現行の保険証との違いが分からなくなり、その分、健保組合や自治体の事務量も増えそうです。
歯科に設置されたカードリーダー=さいたま市中央区で

歯科に設置されたカードリーダー=さいたま市中央区で

Q 医療機関にとってマイナ保険証はどんなメリットがあるのですか。
A 政府は、患者の資格情報を病院システムに入力する手間が軽減され、誤記リスクが減少すること、災害時は、特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができなくても、薬剤情報・特定健診等情報の閲覧ができることなどを利点として挙げています。
Q 医療機関の受け入れ態勢は進んでいるのですか。
A 医療機関には今年4月からマイナカードの保険証情報を読み取る「オンライン資格確認」のため、顔認証付きカードリーダー (読み取り機)の原則設置が義務付けられました。厚生労働省によると、7月23日現在、全国で9割以上の施設が申し込みを済ませ、実際に運用を始めているのはその8割です。
Q オンライン資格確認の義務化には医療機関側に反発も根強いと聞きます。
A 全国保険医団体連合会(保団連)が今年6月に実施した調査では、導入した医療機関の約5割で不具合やトラブルが発生していることが明らかになっています。2月には、東京保険医協会の医師ら約270人がオンライン資格確認の義務化は「費用がかさみ、医療サービスの低下につながる」として撤回を求めた訴訟を起こしています。
Q 具体的にどんな問題が起きているのですか?
A 例えば、窓口負担割合がマイナ保険証と健康保険証とで食い違うケースが相次いでいます。窓口負担割合は、年齢や所得に応じて1~3割となりますが、実際には3割負担の患者が、マイナ保険証では2割と表示される、といったトラブルで、保団連によると、少なくとも東京都や千葉県など全国17都府県で57件のトラブルが確認されています。
Q マイナカードに保険証機能を持たせるにはどうすればよいのですか。
A まず、カード取得者向けサイト「マイナポータル」や市町村の窓口、セブン銀行のATMなどで登録手続きをします。医療機関などの顔認証付きカードリーダーの画面で、そのまま初回の利用登録もできます。
Q 政府はなぜ健康保険証からマイナ保険証への切り替えを急ぐのですか。
A 政府はマイナ保険証を、世界に遅れを取っているとされる医療DXを進展させる基盤に据えようとしているからです。開業医における電子カルテの普及率は、2021年時点でOECD加盟国平均が93%に対して日本は42%で、38か国中35位でした。河野太郎デジタル相は7月26日の国会審議で「わが国の医療DXは待ったなしだ」と訴えました。
Q 政府はマイナ保険証によって具体的にどんなDXを目指しているのですか。
A マイナ保険証の利用者は「オンライン資格確認」により、医療機関・薬局での診療情報や薬剤情報、40歳以上のメタボリックシンドロームに着目した健診結果の情報、医療機関などに支払った医療費の情報などを専用サイト「マイナポータル」で確認でき、医療機関や薬局も患者の同意があれば閲覧できます。政府はこれらの情報に加え、医療機関のカルテ情報や自治体の予防接種、介護認定情報などをデジタル化して利用者や医療機関などが互いに閲覧、共有できる全国的なプラットフォームをつくろうとしています。
Q マイナ保険証を利用すると、どんなメリットがあるのですか。
A 政府は、患者が医療関係者と診療情報や薬剤情報を共有することで、正確でより良い医療を受けられ、投薬の重複を避けることができる、などと説明しています。また、患者には、窓口での支払いが高額になる場合に、自己負担額を所得に応じた限度額にするために医療機関に提出する「限度額適用認定証」がなくても限度額を超える支払いが免除される、転職後も健康保険証としてずっと使うことができる(医療保険者等への加入の届け出は引き続き必要)という利点を挙げています。
Q 実際、利用者はメリットを感じているのですか。
A 厚生労働省が6月、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)に示したインターネットによる計2000人を対象に実施したアンケートでは、「マイナ保険証」での受診歴を持つ10~70代の1000人のうち、56.5%が「メリットは特にない」と感じていました。

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