“収入”月10万円…電気代不安で酷暑に耐える日々 生活保護世帯のエアコン事情
生活費「やりくり」に限界
6畳一間の室内は、午後6時を過ぎても気温34度、湿度80%を超えていた。 「今日はまだ風があっていい」。福岡市の隆之さん(60代)=仮名=は7年前にこのアパートに入居して以来、備え付けのエアコンの電源を一度も入れたことがない。電気代が不安なのだ。夜も玄関を開け放って風を通し、気温が少し下がる明け方に眠りにつく。 年金と生活保護を合わせて月10万数千円、そこから家賃3万9千円を支払う。電話を持っていなかった時に「信用性が低い」と入居審査に落ちたため、スマホを購入して通信費がかかるように。ガスは契約せず、冬も冷たいシャワーで済ます。エアコンを使う隣人の電気代が月6千円以上と聞くと、手を出せない。1日に何度も水浴びをしたり、冷やしたスプレーボトルで体に水を吹き付けたりして扇風機に当たっている。 両親を早く失い、きょうだいはいない。ほぼ見えなかった左目は40代で失明。アルバイトで食いつないだものの、椎間板ヘルニアで働けなくなり、十数年前から生活保護を利用する。国は倹約してエアコンを使うよう呼びかける。でも「普段から欠けたところを穴埋めするような生活」で、やりくりには限界を感じる。 それでも家計から捻出して買いたいのは本だという。「タバコも酒もやらない。読書だけは人間らしさを失わないために必要」。夜には小さな電気スタンドの明かりでページを繰り、線を引きながら何度も読み返す。「これも自分の選択ですから」。諦めたようにエアコンを見上げた。