SENNHEISER HD 820の個人的レビュー(実例:日向坂46)
September 30th, 2023 23:07・All users
こんにちは、YABです。 今回は個人的に好きなSENNHEISERについて語ります。
SENNHEISERのヘッドフォン HD820は、良い環境でモニタースピーカーが使えない時でもスピーカーと遜色ないMixが可能です。
これは、一言でヘッドフォンというより、耳の横に上質なスピーカーが2つ並んでいるというイメージです🎧𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎
実際に日向坂46の横浜スタジアムライブの複雑かつ膨大なセッションでも相当役に立ちました。
メンバーのワイヤレスマイクだけで30本以上、会場のオーディエンスマイクも20本程。
更に、Day1、Day2合わせて48曲。時間にして6時間半の巨大で複雑なPro toolsセッションです。
セッション上では30本以上のハンドマイクが拾うノイズをひとつひとつ消し、会場のオーディエンスマイクが拾う余計な風の音、不必要な周波数のピークを正確に制御する必要があり、モニタースピーカー・ヘッドフォンでは精密に距離感や広い周波数帯域を再生できなければいけません。
HD 820は、耳にすっぽりと覆い被さる形になっており、ドライバーから耳までの距離があるため、微妙な距離感のニュアンスが確認しやすく、再生可能な周波数帯域の広さもさることながら、音に対するレスポンスも早いので急に飛び出たノイズも非常に探しやすいです。
逆に言うと情報量が多すぎて、初めて聴く人は戸惑うかもしれません(笑)
そして前述の通り、30本以上のマイクのノイズを消去しつつ音を整える作業は、気の遠くなるような時間と膨大な手数が必要となります。
1曲あたりにかかる時間と納期を考えると、24時間体制で作業をしないと間に合わないということもあり、長時間装着しておけるというのも非常に重要なポイントです。
HD 820は360gという重さで、他のモニターヘッドフォンと比べても特別重たいということは無く、むしろ大きさから考えると軽いとさえ思えてしまいます。
イメージしやすいところで例えると、普通のiphone2つ分くらいの重さですね。
ヘッドフォンのいい所と言えば、やはり場所を選ばずリスニング環境を構築できる所です。
YABの場合、色んなスタジオでレコーディングしたりMixしたりするので、どこでもリファレンスとなるヘッドフォンがあるというのは凄く重要になります。
そして、スキマ時間にサクッとPro toolsを起動し作業の続きをするという、1秒も無駄に出来ないワークフローでは信頼出来るヘッドフォンが必須です。
ずっと残る映像商品として販売する物は当然チェックも非常に細かく、何日にも渡ってチェック、フィードバック、修正が繰り返されます。
特に、納品までの最後の一週間では、オフライン映像と重ね合わせて詰めの作業をギリギリまで行います。
絶対に失敗は許されないのです。絶対にです。
全国で何万人もの人が買い、映像と音を楽しむ。
ライブの興奮を何度も何度も体感する。思い出す。
そんな思い出のパッケージングで絶対にミスがあってはならないのです。
しかしミキシングエンジニアや、レーベルのディレクター、プロデューサーも人間です。
能力の限界はあります。一瞬、瞬きをした瞬間、息を吸い込んだ瞬間に入り込んだノイズを逃す可能性もあります。
人間には限界がある。だからモニタースピーカー・ヘッドフォンは最高品質の物を選ばなければならないのです。
プロとして、ミスをする可能性を極限まで少なくするのは使命です。
そう考えると、HD 820はとても安い買い物であるとも考えられるでしょう。