最後はひとりぼっち

私が元居たコミュニティを飛び出して、かれこれ10年以上の月日が流れた
正確にはいつだったか覚えていないが、10年、11年前の5月くらいだったような?
元居たコミュニティというのも、なんというか、適当な呼び方が無く
ただ、スカイプで繋がっていた人達

だから、方法は簡単だった
スカイプを使わなければいい
丁度、しばらくしてPCを新調し
新しいPCにはスカイプを入れずにいたら、IDとパスが頭から消えていた
良くも悪くも人間は忘れる生き物

飛び出した理由は単純で、
「私しかPSO2をプレイしていない」
……なんて、それは理由の大部分ではあるが、そう、
「なんとなく疎外感があった」
そんなふんわりとした確認しようのないものが、本当の理由なのだろう

元々、当時のリア友から始まった繋がり
ちょっとリアルでもいろいろやらかして、あんまり彼に頼りたくもなく
「一人から始めよう」
前向きなようで、その実は後ろ向き
だからだろう、当然の帰結というか
「全然ダメでした……」
それからはほぼずっと独り

一応、ずっと仲良くできたらいいなと思う人はいた
けど、あるときぱたりとログインしなくなって、それきり
この時ほど後悔したことは、他にあまりない
私にもっと魅力があったのなら、推定彼とは今もゲームを遊べていたのだろうか

7から10へとPCを乗り換えるのとともに、PSO2と一度サヨナラをして
NGSで復帰をしたとき、他のプレイヤーと少々絡みはした
ただ、その頃にはもう自分の価値をゴミほどにもあるとは思えていなくて
「私は地雷なので」
チームに誘われても(たぶん)丁重にお断りをした

NGSも辞めて、コミュニティ要素のあるゲームからは完全撤退
ウマ娘とかラスバレとか、一応その類は存在しているがノータッチ
どちらもソロで世界観を楽しんでいるだけ
ゲーム部分は糞くらえだ

ソロ専と言えば聞こえはいい……こともない、か
苦労は絶えなかったが、やってやれないこともなかった
だから別に、いまさらあの頃に戻りたいとか、そういうことはあまり思わない
ただ、うん、元気でいてくれればそれで
それだけはずーっと思っている

自分から繋がりを切って、その上、特に深い繋がりがあったわけでもないが
便りのないのはなんとやら
嫌だよ、実はあの人はもう……とかはさ





ずっと、心に刺さったトゲがある

私には幼稚園の頃から仲の良かった友達がいた
彼とは本当によく遊んでいて、ずっと友達なのだと思っていた

小学生の頃、彼が引っ越しをした
といっても、同じ学区内
通う学校は同じで、疎遠になるなんて思えなかった

しかし、通学路が変わり、朝一緒に登校をしなくなり
私と彼の家を隔てるように、その真ん中にはバイパスが開通した
元々工事はしていたのだが、全く関係のないことだと思っていた
大きな道を挟んで、向こう側とこちら側
地下道を通らなければ行き来出来ず
薄暗いそこを通るのは、少し怖くて気持ちが悪かった

私は地元のスポーツ少年団に入り、その繋がりで先輩・後輩という存在も増えた
当時の私はとても活発的で、誰彼構わず家に押しかけていた
ちょっと立場の弱い人だろうと気にせずに

ウチの学校では目立って大きなトラブルはなかったが
そうは言っても、若干いじめられているような人がいないわけでもなかった
そういう相手でも遊びに行くものだから、当時その自覚はなかったが
相手の親からの扱いが若干丁寧だったような気がしないでもない

かと思えば、誓って私は手を出していませんよ
小学生からタバコを吸うようなヤツとも遊んでいた(家の問題だよ、そういうのは)
本当に多くの人の家を訪れたが、まあ、八方美人だったのだ、私は

一方、彼は彼で習い事が多く、放課後の自由時間は多くなく
お互いの交友関係は学年が進むごとに大きく変化
遊ぶ機会はめっきり減ってしまっていた

それでも、地元のお祭りでは変わらず一緒に騒ぎまわっていた
……いたはずだ
どこか私より先に大人になっていっている彼から目をそむけている感覚はあった

昔から、私は彼の方が上の存在だと思っていた
かっこいいし、勉強もできるし、身体を動かすのも得意
それでも、負けない部分だってあるから
だから……

そして、青天の霹靂……そんなものじゃないな
寝耳に水の出来事が起きる

小学6年生の頃の話だ
いつの間にか、彼は中学受験をしていたのだ
そのとき、もうどうにもならない差、溝がそこにあるのだと
思ったのかどうか、あやふやだな
衝撃は受けた、間違いなく


卒業式を最後に、次に彼と会ったのは、その半年後
地元のお祭りで、しかし、私は小学生の頃のように騒ぎまわったりせず
元気に屋台を引き回す小学生らを横目に、退屈で窮屈な気持ちを持て余していた

バイパスが開通してなお、お祭りの屋台はそれを越えて行き来をしていた
そこを通る際は、一瞬の交通規制と、大人が原動機をフル稼働させてそそくさと渡り切る
子供たちは安全に地下道を通って
それしか方法がないとはいえ、今にして思えば何とも言い難いな

私の家の前を過ぎ、バイパスを渡って向こう側
お囃子を披露して、再び屋台は進み、彼の家の前
久しぶりに彼の……母親と会ったんだと思う
屋台が通るときはご祝儀を渡すから
たしかそのときに
「今家にいるよ」
って、そんなことを聞いて

彼の家の駐車場へ歩を進め、そうして
窓越しに目が合った

ただ、
ただ、
私は彼にかける言葉が、本当に何も浮かばず
逃げるようにその場を後にした

それから、一度も彼とは会っていない
彼が今何をしているのか
いや、これについては彼に限った話ではない

その後、私は高校受験で地元を出た
といっても同じ県内ではあるのだが、遠くの寮のある学校へ
私をネトゲに誘ったの人物とはそこで出会った
「サービス終了しそうなゲームがあるから、一緒に見届けない?」
一言一句を正確に覚えているわけではないが、そんな風な言葉で誘われて
Flyffを始めて
FEZやらAIKAやらTERAやらと旅をして
私は独りPSO2へ

その当時も、ちょっとリアルでひどいことが起きて
ネットゲームの顔も知らないどこかの誰か達には、すごく助けられた
ありがとう、感謝している
感謝しているし、私はすごくお調子者で、知ったかぶりで
言葉もきつくて、大変迷惑をかけたと思う
ごめんなさい、すごく後悔している

話がズレた

だから、彼に限らず、中学校までの同級生たちがどこで何をしているのかも知らない
なんなら、その後に交流のあった人達全てもだが
私はひどく無責任で薄情な人間なのだろう

そんな幼馴染との経験が、他人へと踏み込むことに躊躇する気持ちを生ませている
他人へ踏み込めないというのは、自分を晒せないということ
言葉で着飾って、小さいものを大きく見せて、あるいは嘘を吐いて

そんなことに気が付いたのは、独りになってしばらくしてからのこと
愛犬を亡くして、本当に独りになってからのこと
家族は元気……存命だから、本当に独りというには、まだ、まだ?
まだの先は見たくないねぇ

それが私のトゲ
たぶん、おそらく
彼と会って話す以外では、そのトゲが抜けることはないのだろう
会おうと思えば手段はある
だけど、とても怖いのだ
そのトゲが抜けるのかどうかもそうだが、抜けたあとの心にどんな変化が起きるのか
あるいは、そんなトゲなんてなくて、私の心はこの形のままなのか、と

それに、刺さっているのはそれだけじゃない
誰だってそうだろう?
一番大きなものはひとつかもしれないが、他にも無数に刺さっているもの

わかっている
みんな、多かれ少なかれ、大なり小なり抱えて生きている
私もありふれた悩みを抱える一人に過ぎない
けれど、悩みは人それぞれで、その重さの感じ方も人それぞれ
当人以外には、本当のところはわからない

助けて欲しい気持ちはある
けど、自分でどうにかするしかない
答えはいつだってそうだ

最後は自分でどうにかするしかない

それは、ひとりぼっちでも、そうでなくても変わらない