「死後離婚で解放された」手続き増加、大半が女性 配偶者の死後、義父母らと親族関係断絶
■遺産巡りトラブルも
法務省の戸籍統計によると、姻族関係終了届の届け出件数は、10年ほど前の平成24年度は2213件だったが、令和4年度は3000件を突破した。増加傾向にある背景について、死後離婚に詳しい「ガーディアン法律事務所」の園田由佳弁護士は、家同士のつながりが希薄になった社会の変化に言及する。
「現代は結婚は個人と個人の結びつきが中心という考え方が主流になっている。その状況で、義父母との不仲や扶養義務を負いたくないとの思いが重なると、姻族関係を終わらせたいという選択に向かいやすい」。園田氏は、死後離婚が今後も増加するとの見方を示す。
死後離婚は一方的に義父母らとの姻族関係を断絶する。それだけに、法的に関係が清算されても、感情的なもつれをはらむ。園田氏によると、妻が終了届を出したことで義父母との関係が、むしろ悪化したケースがあるという。
「夫は長男だから、いずれ家を継いで、あなた方の面倒を見る」。妻が夫の生前、夫の両親にこんな理由で金銭を要求したり、家の名義を変更させたりしたにもかかわらず、妻は夫が亡くなると終了届を提出。老後の面倒を見てもらえると思い込んでいた義父母は約束を反故にされ、「財産も持ち逃げされた」と憤慨する例もあった。
義父母にとって、孫は姻族ではなく血族であり、姻族関係終了届を出しても関係は続く。その分、遺産分割協議を巡り、義父母らと嫁との対立が激化しかねない、といった課題がくすぶる。園田氏は、終了届の提出は「慎重な判断が必要」と指摘する。
一方、終了届を出された側の義父母の心構えについて「家族なんだから子供夫婦が面倒を見てくれるだろう、という考えはよくない」とも強調する。「そもそも終了届を出すのに義父母の了解は必要ない。自身らの老後の面倒を誰がみるのか、元気なうちに施設を含めて対応先を明確にしておくのが重要だ」とアドバイスする。(植木裕香子)