令和7年度予算編成に向けた概算要求の総額が過去最大を更新する見通しとなった。「金利のある世界」の到来で国債の利払い費が10兆円を超えるほか、人件費や物価も上昇基調が続いており、財政健全化の道のりは容易ではない。予算編成には、これまでと異なる姿勢で臨む必要がある。
前年度に続き設定する「重要政策推進枠」は4・2兆円規模を見込む。賃上げの定着や官民連携による投資拡大、少子化対策、防衛力強化などの事業で活用する。
代わりに、財務省は優先度の低い政策の経費削減を求めている。鈴木俊一財務相は30日の閣議後の記者会見で「重要な政策の選択肢を狭めることのないよう工夫をしている」と強調した。ただ金額を示さない事項要求も多く、どこまで切り込めるかは未知数だ。
歳出を膨らませる要因はさまざまだが、目下の最大要因は金利上昇と国債の利払い費の増加だ。
日本の財政政策は日銀の超低金利政策を頼りに国債を大量に発行して借金を重ねる姿が常態化してきた。しかし、日銀が利上げに踏み切り、国債の利払い費が10兆9320億円に。財政運営も転換が急務となっている。
人件費や調達価格の上昇への対応も難題だ。これらのコストをどの程度認めるかを今後検討することになる。財務省のある幹部は「将来の人口減少などを踏まえ、必要な事業を見極めてほしい」と語る。
政府が秋にも策定する経済対策の裏付けとなる6年度補正予算にも注意が必要だ。
内閣府は国・地方の財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)が7年度に約8千億円の黒字になると見積もる。念願の黒字化まであと一息だが、第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは「近く想定される衆院解散・総選挙対策で補正予算は膨らむ恐れがある。プライマリーバランス黒字化は遠のくだろう」と警告する。(米沢文)