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女性アイドルにガチ恋した20歳女、運営から出禁を喰らう。

(2024.4.8 アイドルとの会話などについて大幅に加筆しました。この記事が創作か否かで様々な意見が飛び交っていましたが、女オタクが女性アイドルの運営から出禁を喰らったという話の本筋は紛れもない事実です。)

それは、あまりに唐突だったー。

ある日ライブハウスに行くと、入り口で運営スタッフに呼び止められ「恐れ入りますが、今後お客様の当グループのすべてのライブ、イベントへのご参加をお断りさせていただきます」と通告されたのだ。

え???どういうこと???

女性ファンが女性アイドルの現場を出禁って何事!?すぎる。それが我が身に降りかかるなんて思ってもみなかった。

※これは私の実体験ですが、アイドルの特定を防ぐために一部フェイクを交えています。ご了承ください。

登場人物
あかり(仮名、筆者)
ゆなちゃん(仮名、筆者の推し)

私はゆなちゃんの所属する女性アイドルグループ「天使のささやき」(仮名)の大ファンで、多い時で月に10回以上、少ない時でも月に3〜4回は必ず会いに行っていた。

この表現は好きではないが、「天使のささやき」は世間一般では「地下アイドル」と呼ばれている部類のグループで、テレビではなくライブハウスを主戦場としている。(天使のささやきのオタクは「地下アイドル」という言葉に嫌悪感を持っている人が多い。私もその中の1人だ。みんな一生懸命頑張ってるんだから、地上も地下も関係ない!しかもゆなちゃんが一番よくライブをしてるライブハウスはビルの7階にあるので、物理的にはめっちゃ地上なんです、、、!笑)

ちなみに「天使のささやき」は厳密には「半地下」と呼ばれる地上寄りの立ち位置にいて、本当の地下アイドルと比べると一定の集客力がある。2ショットチェキの値段もかなりお高めで、同性のファンであってもメンバーとの身体的接触(ハグや手を繋ぐ等)は一切禁止だ。

かくいう私も過去にはジャニーズの某グループを熱狂的に応援していたこともあったし、「地下アイドル」なんて自分とは無縁の存在だった。なんなら少し嫌悪感すら抱いていた(小声)。

大好きだったジャニーズのグループが解散したため強制的に推し活も終了。暇を持て余していたところ、街で偶然出会ったのが「天使のささやき」だ。えっ?街で?と思う方も多いだろう。彼女らのCM(そもそもやってない)を観たわけでも、ポスターを見たわけでもない。

突然、駅前で声をかけられたのだ。「すみません!お姉さん、今時間ありますか?」ナンパかと思ったが、声の主は女性だ。続けて「話だけでも聞いてもらいたいんですけど…」と彼女は言う。スパンコールが散りばめられたふりふりな衣装を着た少女、それがゆなちゃんとの出会いである。一目見て「うわ!何この人、怖っ!」と思った。しかし、その日私は友達に約束をドタキャンされ、時間に余裕があったので暇つぶしに話を聞いてみることにした。宗教の勧誘かな?それともマルチ商法?いや、でもなんかアイドルみたいな服着てるし違うよな。メイドカフェとか?

私「時間は大丈夫ですけど、なんですか?」
ゆな「私たち天使のささやきっていうアイドルやってて」
私「あ、そうなんですか」
ゆな「〇月〇日にどこそこでライブやるんですけど、初めましての女の子は無料なのでぜひ遊びに来てください!これ(チラシ)どうぞ!」
私「ありがとうございます。」
ゆな「〇月〇日って予定ありますか?」
私「えーっと…(調べる)。今のところは特にないです」
ゆな「え!ほんとですか!じゃあほんとに1回でいいのでぜひ来てください!絶対に楽しませるので!」
私「まあ、、、考えてみますね」
ゆな「ありがとうございます!天使のささやきって入れてもらったら、私たちのSNSとかいっぱい出てくるのでよかったら見てみてください!」
私「あ、はい!では〜」

ってな感じでその時は終わり。

アイドルに街で声をかけられるという経験が初だったので強烈に記憶に残り、家に帰ってからも今日のゆなちゃん?結構かわいかったなあ。シンプルにタイプだし、ちょっと気になる…!などという思いが頭をぐるぐるしていた。
「天使のささやき」のYouTubeチャンネルを観てみると、地下アイドルに抱いていた闇深い女の子の集団というマイナスな印象は消えた。なんだか純粋に楽しそうで、ぶりっ子もしてないし、でもかわいいし、いい意味でふつうの女の子たちだった。

そして意を決して“女の子は無料”のライブに行ってみたら、ほんとに無料で、それなのにめちゃくちゃハイクオリティで今までに参加したどのスーパーアイドルのライブよりも楽しくて一撃で沼に落ちた。

女性アイドル(しかも地下)の現場なんて気持ち悪いおじさんしかいないんじゃないかと思っていたが、実際には私と同世代の女性も何人もいた。比率で言うと男:女=7:3くらいだろうか。会場によっては前方に女性限定エリアが用意されていたりもして、女性一人でも足を運びにくい雰囲気ではなかった。

ライブハウスというものは会場自体が小規模なので、まずライブ中のアイドルとの物理的な距離が近い。ジャニーズのツアーだと一回のライブでウン万人という数のお客さんがいるが、「天使のささやき」のライブの集客は50〜200名程度。どの席であってもアリーナ最前列と同等の神席だった。しかも、ライブ後にアイドルと話せるって何事?である。地下アイドルのライブ後には「特典会」と呼ばれるアイドルとそのファンとの交流会があり、課金をすれば好きなメンバーとツーショット写真を撮ったり、直接会話したりできる。今日のライブの感想をその場ですぐ伝えられるのは地下アイドルならではの魅力だ。

ステージ上で歌って踊っている姿はジャニーズにも引けを取らないくらいキラキラ輝いているが、ファンとの距離の近さはキャバクラやホストにも近い(※アイドルなのでもちろん身体に触れたりはできない)。アイドル側がファンの顔と名前はもちろんのこと、住処や職業、既婚か未婚かまで把握している。お金を払って特典会に参加し、推しと仲良くなろうと思えばいくらでもなれるのだ。実際私はゆなちゃんと毎月1時間以上は話していた。頻繁に話しすぎて話すことなどもうない。それでも大好きなゆなちゃんと話していたかった。私の声で、ゆなちゃんの鼓膜を揺らしたい(怖い)。

話の内容なんてどうでもよくて、ゆなちゃんと二人の時間を過ごせることがとてつもなく幸せだった。

ライブを観に行った翌日に、某配信アプリにてゆなちゃんが生配信をしていたのでいつものように「こんばんは!」とコメントした。すると、ゆなちゃんから「あ!あかりちゃんだ!こんばんは!昨日はライブ来てくれてありがとう!昨日さ、〇〇って曲を歌ってるときに、あかりちゃんと目が合ったんだけど、めちゃくちゃ泣いてくれてたよね。」と言われた。え!?こちらから切り出したわけでもないのに、ゆなちゃんの方から突然「目が合った」と言ってくれた…!確かに昨日その曲でゆなちゃんと目が合ったような気はしていたけど、気がしていただけじゃなかったんだ…!嬉しい…!私は平静を装い「ゆなちゃんの歌声に感動しすぎて泣いちゃいました!最高でした!」とコメントした。するとゆなちゃんは「ありがとう〜!歌声を褒められるのってほんっとに一番嬉しいの!まじでめっちゃ泣いてくれてて、あ!あかりちゃん泣いてる!って思って私もうるうるしちゃったよ。」なんて返してくれるのだ。私は飛び跳ねて喜んだ。その配信の画面録画を何千回も見返した。私からしたらゆなちゃんはジャニーズのアイドルと同じくらい雲の上の存在なのに、ライブに来た私のことをよく見て覚えていてくれる。なんて素晴らしき世界だ。

ライブ後の特典会では、ほとんどゆなちゃんの列に並んだ。でもたまにゆなちゃん以外のメンバーのところに行くと「お!私のところにも来てくれてありがとう!あかりちゃん今日もかわいい〜!ネイルもかわいい〜!ネイル見せて!」「あかりのほっぺたむにゅむにゅしたい!笑」と口々に嬉しい言葉をいただく。ジャニーズを応援している時には考えられなかった。まさかアイドルと顔見知りになれる世界があったなんて…!嬉しい、楽しい…!!

このことを知人に話すと「お金払ってるんだから、嬉しいことを言ってくれるのなんて当たり前!全部営業トークじゃん」と馬鹿にされることもあった。しかし、そんなことは私も重々承知。それを弁えた上で応援しているのだ。
たとえば高級料理店で極上に美味しいコース料理を食べて「はあ〜しあわせだ」と言ってる人に対して、「それの何が楽しいの?お金払ってるんだから、美味しい料理作ってもらって当たり前じゃん!相手も仕事でやってるって気づけよ!」と言う人はいるだろうか。いや、いないだろう。私も対価を払った上で得られるもの(ゆなちゃんからの言葉)に幸福を感じている。ゆなちゃんが私に対して本当の意味で好意を持っているなんて思ってはいない。多額のお金を落とすファンとして大切にしてくれているだけだ。

来る日も来る日もゆなちゃんのところに会いに行き、気づけば私はゆなちゃんの虜になっていた。寝ても覚めても、ゆなの二文字が頭から離れない。盛りなしで24時間365日ゆなちゃんのことばかり考えていた。ゆなちゃん世界一、いや宇宙一かわいい。ゆなちゃん大好き。今日もゆなちゃんと話せて嬉しかった。できることならずっと話していたい。ライブ後はさっき会ったばかりなのにもうすでに会いたさMAX。愛おしすぎて頭がおかしくなりそうだった。ゆなちゃんと会ったり話したりした後は嬉しくて幸せな気持ちと同時に、毎回とてつもなく寂しい気持ちに襲われた。
会えない日もそうだ。今、ゆなちゃんは何をしているのかな。ゆなちゃん今日も元気かな。あ、SNSが更新されてる!ってことは今この瞬間もゆなちゃんは生きてるんだな。尊い。今日もこの世に存在してくれてありがとう。ゆなちゃん大大大好き。

ほんとにゆなちゃんは世界一かわいいのだ。これは誰かと比較して、たとえば橋本環奈よりもゆなちゃんの方がかわいいという意味ではなく、私の世界の中でゆなちゃんは一番かわいいのだ。比類なきトップはゆなちゃんだ。アイドルとか、女の子とかいうカテゴリから独立したゆなちゃんというカテゴリ。そう、ゆなちゃんはブルーオーシャンだ。ゆなちゃんの笑顔は世界を救う。まずシンプルにお顔がめちゃくちゃ整っているし、体型も素晴らしく私の性癖に刺さった。それにゆなちゃんはアイドルとしてのポテンシャルがとても高い。天使のように美しい声で歌を歌う。ダンスも誰よりもしなやかで力強くかっこいい。それなのに、MC中は子どもみたいに無邪気な笑顔を見せてくれる。(もっとライブ中のゆなちゃんのココがいい!を伝えたいが、ライブの細かい内容を書くと特定されてしまうので割愛。)とにかくゆなちゃんは見た目から中身まで全てが大天使で、人を惹きつける魅力に溢れている。「天使のささやき」というグループのことも大好きだが、ライブに行っても正直ゆなちゃん以外のメンバーは全く目に入らないほどゆなちゃんだけに惚れ込んでいた。私にとっては毎回がゆなちゃんソロライブである。ステージ上にはメンバー全員いるはずなのに、ゆなちゃんにしかフォーカスが合わない。ゆなちゃんかわいいなあ。胸が苦しい。大好きが止まらない…!

こんな感じでゆなちゃんのことをアイドルとしてだけではなく人間として、一人の女性として病的に好きになってしまい、次第に私はゆなちゃんとの距離感がわからなくなっていった。誕生日はもちろんのこと、クリスマスもバレンタインもホワイトデーにもプレゼントを贈った(そんなに高額なものではない)。見返りなど求めていないが、私があげたものを使ってくれているところを見たときは本当に嬉しかった。ゆなちゃんともっと近づきたい。ゆなちゃんに私を注ぎ込みたい。無茶して課金してでもたくさん話したい。正常な判断能力を完全に失った私は貯金を切り崩し、毎月の推し活に月給以上のお金を惜しみなく使った。全てはゆなちゃんと会うため、話すために。儚い存在であるアイドルはいつ解散するか、いなくなるかわからないから話せる機会はひとつも逃す事なく参加した。推しは推せる時に推せ。

歳上のゆなちゃんに対して最初は敬語で話していたが、途中からはもうほとんど友達のようにタメ口で話すようになった。

私「ゆなちゃん今日もかわいすぎる!好き!」
ゆな「おお〜!今日は速攻デレデレじゃん!笑 かわいいでしょ〜!」
私「マジでかわいい!ねえねえ、私が世界で一番大好きな人は誰だと思う?」
ゆな「そんなの簡単じゃん!ゆなでしょ!」
私「大正解!ゆなちゃんしか勝たん!」
ゆな「他の子のこと好きになったらダメだよ?女の子のファンって熱烈に好きになってくれても、結構すぐに他のグループに目移りする子が多いからさ。」
私「何言ってんの!目移りなんてするわけないじゃん!私はゆなちゃんしか見てないし、ゆなちゃんが目の前にいてくれる限りは一生愛するって誓うから(プロポーズかよ)!」
ゆな「ははは!ありがとう!絶対だよ!」
私「うん!!!」

などと、まるでバカップル(死語)のようなやり取りをした日もあった。

好きすぎて苦しい。付き合っているわけではないしもちろん肉体関係もないが、もうほとんど私にとってゆなちゃんは精神的恋人のような存在であった。毎週会うし毎週話している。私にとって今は家族より友達よりゆなちゃんとの時間が大切だ。ゆなちゃんにも「もう私ゆなちゃんのこと好きすぎて無理なんだけど!大好きすぎてしんどい!好きすぎて嫌なの!」と素直に伝えた。するとゆなちゃんは「ええ!笑 どういうことよ!笑 私にガチ恋してるってこと?まあ、なんだろう!それは仕方ないね!ゆなは沼だからね〜!」といたずらっぽい笑顔で応えてくれた。またその微笑みに殺される。胸がきゅううううんってなる。漫画等でよく見る、胸にハートの矢が刺さるやつ、まさにあの動きをしてしまってゆなちゃんに「待って!今のあかりの動きおもしろっ!!」って優しく笑われた。

ゆなちゃんの言う通り、間違いなく私はゆなちゃんにガチ恋していた。特典会でゆなちゃんとお話しするとき、ぎゅっと抱きしめたい気持ちを必死で抑えていた。触れることはできないが、手を伸ばせば届く位置にゆなちゃんの身体があることに高まりを感じる。今日も今日とてゆなちゃんのすべてが愛おしい。心も身体も好きすぎる、大好きだ。

ここまでのめり込んだのには理由がある。地下アイドル界隈ではよくある話なのだが、実は出会ってすぐの頃からゆなちゃんは私のネットストーカーと化していた(言い方)。オフの日でもライブの日でも私がSNSを更新するとメンションの一つもつけていないのにすぐに足跡がついたり、「天使のささやき」にもゆなちゃんにも全く関係のない私の飼っているペットの写真にいいねをくれたり。ある日の特典会で「あかり!こないだ金沢旅行に行ってたんでしょ?いいな〜!どうだった?」と聞かれたので、「え?なんで知ってるの?」と聞き返すと「いやいや、SNS見てるから!書いてたじゃん!」と言われた。その言葉の通り24時間以内にゆなちゃんの足跡がつかないことは非常に稀であった。つまり、私と会っていなくても私のことが気になっているってこと!?絶対そうだよな…!と毎日にやにやしていた。なんのアピールもしていないのに、推しが毎日自分のSNSを見に来ている…!私という人間がゆなちゃんの脳内に少しでも刻まれていることが嬉しい。

毎週のように会って話しているのに、ゆなちゃんと対面すると好きすぎて尊すぎて泣きそうになる。目が合うと脳がクラクラする。冗談ではなくマジで酸欠になり卒倒しかけたこともあった。ゆなちゃんは「待って待って!大丈夫?いつもふつうに話してるのに急にどうしたの!?笑」と驚いていた。

ああ、好きすぎる。ゆなちゃんの全てを知りたい。憧れのゆなちゃんとお揃いにしたくてこんなことを聞いてしまった。

私「ゆなちゃんってさ、普段は上下セットの下着付けてる?」
ゆな「なにそれ!笑 秘密だよ!ってかそんなの男の人だったら絶対聞いたらダメなことだからね!笑」
私「あ、そうだよね!ごめんごめん」
ゆな「もう!ほんとに中学生男子じゃないんだから!笑」

私としてはお金を払い制限時間内で楽しく話していただけだったが、運営側から「特典会でのお客様の発言が不適切である」との判断を受け出禁になった。運営から事前の警告は一切なく、いきなり出禁を言い渡されたので少し、いやかなり驚いた。

ちなみに上記の会話を交わしたのは出禁になるよりもずいぶん前の話で、この後もライブや特典会に参加していた。なのでこの一言で出禁になったわけではない。「男性なら即出禁」の会話を何度かしてしまったことが原因かと思われる。

運営に「どうして出禁になったのか具体的に教えてほしい」と聞いたところ、「性的に不適切と考えられる発言があったため」の一点張りで、あの時のこの言葉がダメだった、というピンポイントな回答はなかった。

端的に言うと私はゆなちゃんに対するセクハラでアウトを喰らったのだ。

昨今、同性間のセクハラが頻繁に取り沙汰されているが、気付かぬうちに私もセクハラの加害者になってしまっていた。ハラスメントに明確な基準はなく、相手が不快な思いをした時点でアウト。ゆなちゃんから「もう!いくら女子同士だからって、何でも聞いていいわけじゃないんだからね!」とか「気になったとしても普通は聞かないから!」とか冗談っぽく注意されたことはあったが、「わかった!ごめんごめん!」などと軽く受け流していた。今思えばこれは本気の警告だったのだ。

私「なんかさ〜、最初出会った頃は私と喋る時、めちゃくちゃよそゆきのにこにこゆなちゃんだったのに、最近は割とローテンションなの面白いんだけど!」
ゆな「だって、あかりとはもう仲良いからね!最初はどんな子なのかわからないから、こっちも気遣って、わ〜!こんにちは〜(テンション高め)!みたいな、よそよそしい感じだったけど、今はもうあかりと話すときは私も全然気遣ってないから!」
私「私に心を開いてくれてるってこと?」
ゆな「そういうこと!もう全開だよ!笑」
私「ほんと!?嬉しい〜!」

「あかりとは仲良いから」そんな言葉に甘えて、質問内容が次第にエスカレートしてしまっていた。世界で一番大好きなゆなちゃんに嫌な思いをさせてしまっていたことをとても反省している。

まさか出禁になるとは予想だにしていなかったが、今思えば前兆はあったのかも知れない。少し前からゆなちゃんが私のことをあまりよく思っていない、厄介がっているような空気は何となく感じていた。突き放すように「ど変態を前にして話してる私の身にもなってよね!」と言われたりもしたし、ゆなちゃんの特典会の列を眺めていると、明らかに他のファンと私とでは対応が違っていた。それは悪い意味で。私にだけ口調がきつい、笑顔が少ないような気がする。でも、思い違いかも知れないし嫌よ嫌よも好きのうち、なんて言うじゃない。冷たい対応も愛なんだ。私だけが嫌われてるんじゃなくて、特別扱いをしてくれてるんだ、そうだそうだ。都合の良い解釈をして、自分を誤魔化していた。恋は盲目とはよく言ったものだ。

ゆなちゃんとの接触を禁止され、私は生きる意味を失った。あんなに愛していたゆなちゃんにもう二度と会えない。話せない。もう本当に死にたい。でもこんなくだらないことで人生を終わらせるのは親に申し訳なさすぎるから死ねない。ああ、でも今日も他のファンはゆなちゃんと会って話せるのに、私だけそれができない。綺麗事では済まされない。ゆなちゃんへの愛情が憎しみに変わる。いっそのことゆなちゃんを殺してしまおうか。そしたら誰もゆなちゃんと話せなくなる。平等だ。いやいや、何を言ってるんだ。人殺しなんてしていいわけがないし、何よりゆなちゃんはこの世で一番健康に長生きしてほしい人じゃないか。

いつかの特典会で、ゆなちゃんに聞いたことがある。かなり痛いオタクであることは自覚しながらも、恐る恐る聞いてみた。
私「ゆなちゃんがいつかもしアイドルをやめて会えなくなっちゃっても、私のことずっと忘れないでね?」
ゆな「いやいや、何言ってんの!絶対に忘れるわけないでしょ!こんな印象的な子、一生記憶に残るよ!」
私「え!ほんとに(歓喜)!?」
ゆな「ほんと!あかりのこと、忘れろっていう方が無理!忘れようと思っても忘れられないよ!」
良くも悪くもゆなちゃんの脳内から私の顔や声が消えることはないのだ。

ツーショットチェキを撮った後の落書き中に、「今日はなんて書こうかな〜!いつも『あかり』じゃつまんないもんね」と言いながら私の本名フルネームを漢字でスラスラ書いてくれたこともあった。沸いた。

ゆなちゃんと共に過ごした時間はかけがえのない宝物。ゆなちゃんに出会えて本当にしあわせだった。人を愛することの素晴らしさ、切なさを教えてもらった。白黒だった私の人生が一気にカラフルに彩られ、明日が来るのが楽しみになった。明日もゆなちゃんに会いたい、毎日そう思っていた。会うたびに苦しくなるけど、また会いたくなる、特別な存在。特典会でゆなちゃんの貴重な人生の数分を買い取らせていただいて、対面で話せたことがとてつもなく嬉しい。合計したら相当な時間になるだろう。ゆなちゃんが私宛に何千回も書いてくれたサイン、ツーショットチェキは消えることのない思い出だ。私の隣にゆなちゃんが存在した奇跡のような夢のような時間をいつまでも忘れない。ゆなちゃんという存在は幻だったのではないかと思うほどに大好きだった。

出禁になってからも、溢れる思いは止まらない。ここだけの話、ゆなちゃんへのラブレターを便箋に何十枚も書いた。嫌な思いをさせてしまったことへの謝罪の気持ち、今もあなたが一番大好きだということ、ゆなちゃんと出会えてしあわせだったということ。でも、その手紙は出せないでいる。出禁の身でそんなことをしてしまったら、脅迫行為になりかねない。これ以上ゆなちゃんに近づくのはよくない。

自分で言うのもなんだが、私はゆなちゃんと触れ合うために同じCDを何百枚、何千枚と購入している太客だった。大金を落としているんだから何をしてもいいとか、太客を突然出禁にするのはおかしいだとか、そんな的外れなことが言いたいわけではない。当然、親しき仲にも礼儀ありだ。ただ、それでも切られたということは、ゆなちゃんは私に対して相当強い嫌悪感があったのだろう。本当に何と謝ればよいのかわからない。

はあ、、出禁が悪い夢ならよかったのに、と何度思ったことだろう。人の感情を読み取るのが苦手、ガチ恋は盲目、で片付けるわけにはいかない。このような事態を引き起こしてしまう性質の持ち主であることを自覚し、今後の人生で人との距離感を間違えぬよう気をつけたい。

あの日、ゆなちゃんにたまたま出会って恋に落ちて、私は抱えきれないほどたくさんの愛をもらった。初めて本当の意味で人を好きになった。会えるしあわせ、話せる喜び、生きる力に満ちた毎日だった。こんなに苦しくなるくらいなら出会わなきゃよかった。生きることが辛すぎる。もうゆなちゃんのことなんて忘れてしまおう。そうしたら楽になれる。しかし、これほど猛烈に好きになった人のことを忘れるなどそう簡単にできるはずがない。人間素直が一番である。私はゆなちゃんのことが大好きだ。

今でもふとした瞬間にゆなちゃんのことが頭に浮かぶ。ゆなちゃんは今何をしてるんだろう。毎日大好きと大嫌いの間を行ったり来たりしている。この感情のアップダウンは躁鬱にも近い。失恋の痛みは恋でしか癒えないという話はよく聞くが、こんな状態で無理して他に好きな人を作るなんて馬鹿げている。恋はするものではなく、落ちるもの。っていつかゆなちゃんにも言われたんだっけ。だから、時間が解決してくれるまではゆなちゃんを想い続けることにした。もう二度と会えないし、話せないけれどー。

アイドルとファン、というより、人と人との関係性というものは本当に脆く壊れやすいと実感した。言葉は凶器だ。


2024.4.8追記。
出禁になった後に手紙を送ることを自重していた私だったが、結局ゆなちゃんが以前から欲しいと言っていた、諭吉1枚分くらいのちょっといいプレゼントを贈ってしまった(何してんねん)。後日、ゆなちゃんがそれを使っているところをSNSに何気なくアップしてくれていてとても嬉しかった。よほどお気に召したようで、天使のささやきのライブ中だけでなく、プライベートでも使ってくれていた。出禁にした人からもらった物でも、気に入ったら使うんだなとちょっとおもしろかった。お前が言うなって感じだが、贈る方も贈る方、使う方も使う方だ。

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