令和の「売りたくなった時に見るグラフ」詰め合わせ! 暴落時に現れた良記事

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THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)に、「株価の動きが読めない…投資は見送るべき?→実は「タイミングを考えない継続投資」が望ましいといえる理由【マクロストラテジストの見解】」という記事が掲載されています。

今月、日経平均が市場最大の暴落をするなど相場が乱高下する状況下で「いまは投資を見送ったほうが良いのでは」と考える人に向けて、タイミング投資の非効率性と継続投資の有効性を解説した記事です。

記事自体もとても良いのですが、そこに出てくるたくさんの最新グラフがすべて秀逸で、これは永久保存版だ!と思ったので、いくつか記録しておきます。


まず、インデックス投資家にとっては有名なフレーズ「過去72年間のうち、ベストの5日を逃すと、利益は半減してしまう」(出典:「敗者のゲーム」チャールズ・エリス著)は、いわゆる「稲妻が輝く瞬間」に市場に居合わせることの重要性を説いたものです。

直近ではどうなのか? 1988年1月~2024年8月2日までの調査データのグラフです。


グラフタイトルに【急落ですぐ投資を止めてしまうと「大幅上昇」の日を逃す。「大幅上昇」の日に投資していないと、継続投資に比べ、大きな差】とあるとおりのデータです。スマホなど画面が小さい方は拡大してグラフをご覧いただきたいのですが、いちおう文字でも書き起こしておきます。

1988年1月に 10,000 ドルをS&P500に投資した2024年8月2日までの約35年間のトータルリターンは以下のとおりです。

全期間継続投資で 455,810 ドル
上位1日を逃すと 408,501 ドル
上位5日を逃すと 287,886 ドル
上位10日を逃すと 208,821 ドル
上位20日を逃すと 122,560 ドル
上位40日を逃すと 51,244 ドル

計算すると、上位5日を逃すだけでもリターンの37%を失うことになります。実にもったいないですね。上位40日を逃してしまうとリターンの89%を失うことになります。全期間継続投資と比べて、取り返しのつかない差がついてしまいます。

上記のデータは米ドルベースですが、円ベースで調査したデータのグラフもありました(日本人向けで気が利いてますね!)。より顕著な結果になっています。


1988年1月に 10,000 円をS&P500に投資した2024年8月2日までの約35年間のトータルリターンは以下のとおりです。

全期間継続投資で 545,261 円
上位1日を逃すと 479,845 円
上位5日を逃すと 323,527 円
上位10日を逃すと 224,772 円
上位20日を逃すと 123,801 円
上位40日を逃すと 48,352 円

計算すると、上位5日を逃すだけでもリターンの41%を失うことになります。実にもったいないですね。上位40日を逃してしまうとリターンの91%を失うことになります。全期間継続投資と比べて、取り返しのつかない差がついてしまいます。

エリス氏のデータと近い傾向が確認できたのと同時に、「稲妻が輝く瞬間」を逃すダメージが、米ドルベースよりも円ベースの方がより大きいことが確認できて、日本人としては気が引き締まる思いがしました。

これを見て、「いや、全期間継続投資がリターン最大のように見せてるが、暴落をすこしでも避ければさらにリターンが上がるはずでは…」と考えるかたが出てくると思います。そんなかたは次のグラフを見ていただきたい。


グラフタイトルに【株価が「大幅上昇」を記録するのは、株価急落時が多い】とあるとおりのグラフです。

S&P500(緑の折れ線)と日次上昇率上位40位のタイミング(赤い縦線)を重ねたグラフを見ると、上昇率上位40位のほとんどが、株価急落時にほぼ同時に発生していることがわかります。

これは、株価急落を避けようと一時的に資金を引き上げたりすると、株価大幅上昇(稲妻が輝く瞬間)を逃してしまう可能性も同時に上がってしまうということです。上昇率上位40日を逃すとどうなるかは、先程のグラフで見ていただいたとおりの惨状となります。

暴落時に、SNSで真っ赤なヒートマップや急降下の短期チャート画像とともによく投稿される「一時退却!」「相場が落ち着いたらまた戻ってくるわ」という態度は、長期的にはとても高くつくのです。

「じゃあ、株価大幅上昇を享受したあとに資金を引き上げて、また次の暴落まで待つのが効率的だろ」と考えるかたが出てくると思います。

でも、グラフをよく見てください。上昇率上位40位の株価大幅上昇(赤い縦線)は、どんな間隔で起こっているでしょうか。年に数回来る時もあれば、10年くらいまったく来ない時もあります。人には寿命というものがあり、投資可能な期間として、それほど天文学的な長期間が取れるわけではありません。次の暴落や暴騰がいつ来るのか、それは誰にもわかりません。

となれば、暴落待ちのスタンスは投資期間の大半をリターン0%で過ごす可能性や、十分な金額を投資できず増やせないで人生が終わる可能性を秘めているともいえるでしょう。

もうひとつ、興味深いグラフをご紹介します。S&P500とTOPIXの「年間リターン」と「年初来の最大下落率」を表したものです。


年間リターンは緑の棒、年初来の最大下落率は赤の点です。S&P500もTOPIXも、相場急落は年間リターンにかかわらず毎年あることがわかります。また、最大下落率の赤の点は、年間リターンの緑の棒よりも下にあることがほとんどです。これは、相場急落があったとしても、年末まで持ち切った方が下落率が少ない場合がほとんどであることを表しています。

つまり、相場急落で脊髄反射的に投資を止めてしまうのは、損である可能性が高い。この組み合わせのデータはあまり見たことがなく、貴重だと思います。

上記の引用記事には、他にもいくつか秀逸なグラフが掲載されています。いずれも調査期間が2024年8月までの最新で有用なものとなっています。昔から投資の名著に示されている定番データについて、最新データで答え合わせができたり、米国だけでなく日本のデータもあわせて確認することができたり、もっと深読みして記事以上の学びを得ることができたりして、個人投資家として本当にありがたいです。暴落時に現れた超・良記事といえるでしょう。

これらは、令和の「売りたくなった時に見るグラフ」詰め合わせとして、今後も、相場の乱高下で資産を売りたくなってしまった時に、くり返し見たいと思います。永久保存版として記録しておきます。


以下は、インデックス投資家のかたに向けた当ブログの「売らずに我慢するテクニック」集です。下げ相場の時は自分でも活用しています。もちろん今回の記事も追加しました。ご参考にどうぞ。

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