新宿のベンチに座って電話をしていたら、目の前を通った女性が「坂爪さんですか？」と言った。電話をしながら「はい！」と答えたら、女性は「購読料です」と言ってお金をくれた。私も、女性も、電話をしていた相手も、全員、びっくりしていた。数時間後、女性からメールが届いた。そこには「購読料少なくてごめんなさい！！！お会いできて嬉しかった！！！生きててくれて、いつも、ありがとう！！！」と書かれてあった。購読料少なくてごめんなさいだなんて、俺はギャングスターなのかなと思った。

三重からたまたま東京に来ていた女性から「一緒にデートしませんか」と誘われて、表参道のケーキ屋さんに行き、高田馬場の預言カフェに行き、池袋の星座パフェ屋さんに行った。自分一人じゃ絶対行かない場所に、人に連れられて行くのは好きだ。預言カフェでは預言を授かった。預言より預言カフェに一人で行く女性客の陰気な雰囲気が気になった。余計なお世話だが「元気出せよ」と思った。神様を愛するのもいいけれど、人間の男も愛してくれよと思った。

耳が聞こえない女性から「これからカナダ人の男性と会うのだが、彼はフランス語圏の人なので、一人で会うのは心許ないからお供して欲しい」と連絡をいただき、都庁前のロイヤルホストに行った。多言語がひしめきあい、現場はカオスと化した。カナダ人の男性は自分のことが大好きで、延々と自撮りをしていた。女性から「私も私を好きになりたかったけれど修正できないままここまで来てしまった、あなたは自分のことが好きだから素敵ですねって翻訳してください」と言われた。自分を好きなカナダ人も素敵だが、自虐的な日本人も素敵だと思った。

新宿で虚無に襲われていたら、神田で働く女性Ｋ様から「三十分後に池袋に来れますか？」と連絡を貰った。私は「行けます」と返信して、三十分後に池袋の洋食屋さんで合流をした。なんでも好きな物を頼んでくださいと言われたので、ナポリタンとパンを頼んだら超絶美味しかった。Ｋ様から「三十分後に来てと言ったら来てくれるなんて本当に便利ですね、今度は築地の朝市に呼び出します」と言われた。男は女のおもちゃである。帰り際、今日は癒されましたと言われて嬉しかった。その日は大変なことがあった日だったので、私も癒された。元気がない時は、元気な人に会うのが一番だと思った。

俺もブラジャーをしたら女心がわかるのかなと思った。こっそりブラジャーをしていたら変態になるけれど、女心を理解したいから俺にブラジャーをつけさせてくださいとお願いしたら、案外女性陣はキャッキャ言いながら私をおもちゃにしてくれるのではないだろうか。私の顔は彫りが深いので、化粧のやり甲斐もある。どんどん私をおもちゃにして欲しい。小学生の頃、私の夢は「芸能人になること」だった。人気者になりたいとかではなく、旅をしたり、食レポをしたり、クイズ番組に出たり、色々な体験をしながら生きていけるだなんて最高じゃないかと思った。芸能人にはならなかったが、貴重な経験を重ねている。こどもの頃の夢は叶った。精一杯面白く生きて「ああ楽しかった」と言って死にたい。自暴自棄な訳でも投げやりな訳でもない。ただ、生きていることを楽しみたい。