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 生成AI(人工知能)のブームで建設ラッシュが続くデータセンター。サーバーメーカーは好況に沸くが、その裏で「資源枯渇」のリスクが顕在化している。「水」「銅」そして「電気」。需給バランスが崩れれば価格高騰は必至だ。第2回のテーマは銅。電力ケーブルや精密機器など幅広く利用され、「電化の金属」と呼ばれる銅に顕在化したリスクを描く。

 米Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が2021年に「新たな石油(Copper is the new oil)」と呼んだ銅の供給不足リスクがにわかに注目されている。生成AIブームを背景とするデータセンター建設と電力需要の増大が、銅需要に拍車をかけているからだ。

 銅は高い導電性と熱伝導性を持ち、安価で加工性にも優れることから、幅広い産業で利用されている。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によれば、主要な用途は(1)電力ケーブルや通信ケーブル、自動車や電車などの配線といった電線、(2)発電機や半導体のリードフレームなどの加工品――の2種類だ。

高い導電性を持ちケーブルやモーターなどに使われる銅は「電化の金属」と言われる
高い導電性を持ちケーブルやモーターなどに使われる銅は「電化の金属」と言われる
(写真:国際銅協会)
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 銅は電化の金属と呼ばれるように、近年では電気自動車(EV)や太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギーに必須の資源として注目されてきた。EVにはガソリン車の4倍の銅が必要とされる。ゴールドマンが新たな石油と呼称したのも、こうしたエネルギー転換のトレンドを踏まえたものだ。

5月に史上最高値を更新

 さらに生成AIブームが銅需要に拍車をかける。指標となるロンドン金属取引所(LME)3カ月先物は2024年5月に1トン1万1000ドルを超えて史上最高値を更新した。製造業の業績回復が相場を押し上げたほか、「AIが需要を加速させる」との観測が浮上したためだ。足元では投機マネーの流出などによって9400ドル前後で推移するが、依然として高値を保っている。

銅のLME3カ月先物価格の推移
銅のLME3カ月先物価格の推移
(出所:LME)
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 世界の銅関連企業が加入する国際銅協会によれば、世界の銅需要は2020年時点で年間2830万トン程度。需要全体に占めるAI向けデータセンターの割合はまだ小さいものの、調査会社各社はこぞってAIによる銅供給リスクを訴え始めた。

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