logo

 

町の全小中校を統合 9年間の「義務教育学校」に

 福岡県香春町は4月、町内にある全ての小中学校6校を統合し、新たな義務教育学校「香春思永館(しえいかん)」を開校する。学校の数が、県内の市町村で唯一「義務教育学校1校」という教育体制となる。子どもを取り巻く環境はどう変わろうとしているのか。現状を取材した。

 校名は小倉藩が幕末時代に町内に置いた藩校の名称から取った。同町高野にある勾金(まがりかね)中の敷地内で現在、最終盤の工事が進む。4月からは町内4小学校と2中学校に通っていた児童生徒ら約730人が登校する。

 義務教育学校は小学と中学の9年間の義務教育を一貫して行う学校。1人の校長の下、1つの教員組織で構成される。同じ校舎を使っていても小学と中学それぞれに校長を置く小中一貫校とは異なる。

 町教育委員会によると、小学1年から英語学習を始める▽中学の部活に小6の2学期ごろから体験入部できる-といった小中の垣根を越えた連携が、新設校の特長になるという。1人に1台ずつ用意するタブレット端末や、全教室に設ける電子黒板の活用によるICT(情報通信技術)教育も売りとする。筒井澄雄町長は「町に住み続けたい、住んでみたいと思われるような魅力ある学校づくりが目標」と力を込める。

   □    □

 人口約1万人、65歳以上が占める高齢化率は県内で4番目に高い41・7%(2019年10月現在)という香春町。30年前には約1800人いた小中学生は、半分を切るまでに落ち込んだ。小中6校の在籍数は現在、各校83~179人といずれも小規模にとどまる。急激な少子化の中、町にとって学校の再編は長年の懸案だった。

 1997年に「学校の統廃合は町の最大の課題」と町が行政改革大綱に位置付けて以降、停滞しながらも続けられた議論がまとまったのは2015年。町教委は学校再編整備基本方針を策定し「6校を小中それぞれ1校に再編する」とした。その後、学校、地域、保護者の代表や有識者でつくる審議会の答申を基に、町教委が新設校用地や義務教育学校制度の導入を決めた。

   □    □

 関係者は入念な準備を重ねているが、子どもたちが環境の変化に順応できるかどうか不安に思う保護者はいる。

 香春思永館から直線距離で約4・5キロ離れた採銅所小(85人)の児童は、4月から全員がスクールバスでの通学の対象になる。同校校区内には10カ所程度の乗り場が設けられ、そこまでは子どもが歩いて集まる。

 3年生と2年生の息子がいる宮原絵理さん(41)は「初めてのバス通学に加え、クラスは今の倍以上の30人規模。最初は慣れるのが大変だと思う」と2人を気遣う。同級生が多くなることで競争意識が育ったり、部活の選択肢が増えたりする利点も分かるが「先生が一人一人の個性をくみ上げてくれる、今の教室のような雰囲気は薄まるかも」と寂しさもある。

 採銅所小校舎は他の5校に比べ新しい2007年の完成。採銅所区長会の大坪松雄会長(72)は思いの外早い閉校を残念がるが、校舎を何とか有効活用したいと考えている。町は地域コミュニティー複合施設とする計画を立てており、大坪さんは「住民が立ち寄りたくなる場所にするため、知恵を出したい」。9日に告示される町議選の候補者の訴えにも期待している。「候補者は学校や町の未来像をしっかり語ってほしい」 (坂本公司)

sponsored by求人ボックス
この記事もオススメ
西日本新聞me

福岡ニュースランキングを
メールで受け取る(無料)

「みんな何を読んでるの?」毎日17時に
ニュースTOP10をお届け。 利用規約を確認

PR

PR