「テレビ出演させたい元SMAPの3人」
―公正取引委員会 ジャニーズへ注意―


あまりテレビを見ないので、恥ずかしながら、SMAPというグループについて、よく知らなかった。そのSMAPが、国民的アイドルとしていかに影響力をもつ存在であるかを知らされたのは、2020年東京パラリンピック大会を盛り上げる活動を通じてである。

日本財団は2015年5月、パラリンピック競技団体(28団体)の体制整備やパラリンピックスポーツの普及啓発を目的に「日本財団パラリンピックサポートセンター」(パラサポ)を設立した。SMAPは、そのパラサポの活動を、じつに精力的に支援してくれたのだ。例えば、2015年11月、東京・駒沢オリンピック公園で行われた「パラ駅伝 in TOKYO 2015」にはSMAPのメンバー5人がそろって参加してくれ、障害のあるランナーと健常者ランナーがたすきをつなぐレースやブラインドサッカーの体験などに汗を流してくれた。この数日間のイベントは入場券が一万数千枚で札止めの盛況となったほどだった。

2016年末にSMAPは解散し、メンバー5人のうち稲垣吾郎さんと草彅剛さん、香取慎吾さんの3人は翌2017年9月、所属していたジャニーズ事務所から独立した。それでもSMAP時代からの取り組みを忘れることなく、パラサポの特別サポーターとして活躍し続けてくれている。3人は国際パラリンピック委員会(IPC)の特別親善大使に任命された。熱心な活動に対して、パラサポや筆者が会長を務める日本財団には、彼らのファンからたくさんの激励の手紙が寄せられている。3人の活躍なくして「パラリンピック」の認知度が今ほど上がることはなかったと筆者は思う。

ところが、である。まことに不可解、どうにも納得できないことが起きた。絶大な国民的人気を誇っているはずのこの3人がテレビから消えてしまった。ジャニーズ事務所との契約終了後、3人のテレビ出演はコマーシャルを除いてゼロになってしまったのだ。そして、ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに、SMAPの元メンバー3人を出演させないよう圧力をかけた疑いが浮上したのである。

東京パラリンピック大会まであと1年に迫った今こそ、元SMAPの3人が、自ら体験したパラリンピックの各競技種目について、あるいは障害者スポーツで頑張る選手たちの姿をテレビで語ってくれたら、東京パラリンピック大会はさらに盛り上がるだろうに。そんな期待を壊してしまう深刻な事態だ。

ジャニーズ事務所の〝圧力〟もさることながら、テレビ局の姿勢にはあきれてしまう。日ごろ「報道の自由」を金科玉条にしているはずの各テレビ局が、国家的イベントである東京パラリンピック大会の成功よりも、多くのタレントを擁するジャニーズ事務所の意向を忖度したとしか思えない。公正取引委員会はジャニーズ事務所に対し、独占禁止法への違反行為は認められないものの、違反につながる恐れがあるとして注意したという。これはジャニーズ事務所が、SMAPの元メンバー3人を出演させないよう各テレビ局に圧力をかけたことを物語ってはいまいか。

7月18日の日本テレビ系の番組「スッキリ」の司会、加藤浩次さんは「ジャニーズ事務所に限らず(芸能界では)周知なんですよ。大手の事務所を独立したタレントは何年かテレビに出られなくなるのは、見ている方も気付いていると思う」と勇気ある発言をしていた。また、こうした実態について、「芸能界、テレビの歴史の中で当たり前のように扱っているが、今の時代おかしいんじゃないかっていう部分もある。業界が変わるきっかけになれば」と話していた(7月19日付産経新聞朝刊から)。

視聴率を1%アップするためにしのぎを削る各テレビ局が、根強い人気をもつSMAPの元メンバーを 2年間も出演させないこと自体が異常である。「出演の可否は独自の判断で決めている」「ジャニーズ事務所からの圧力はなかった」などとするテレビ局側の白々しいコメントを信じる視聴者など、どこにもいないだろう。独禁法違反につながりかねない状況を公取委が確認したのであれば、各テレビ局も謙虚に事実を認めるべきである。東京パラリンピック大会を成功させるためにも、早急に3人のテレビ復帰を実現させてほしいものだ。