撃沈された悲劇の引き揚げ船、海底に眠る79年後の姿 最新機器で

新谷千布美
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 第2次世界大戦終戦の「玉音放送」の後、南樺太(現ロシア・サハリン)から引き揚げようとしていた緊急疎開船3隻がソ連軍の攻撃を受けた。この「三船遭難事件」で沈没した2隻の現状を調べようと、研究者らでつくる団体が20日、最新機器を使った調査に臨んだ。

 3隻は1945年8月20~21日、計5千人を乗せて出港し、22日に攻撃を受けた。小笠原丸と泰東丸が沈没し、1700人以上が犠牲になった。

 調査は、浦環・東京大学名誉教授が代表理事を務める「ラ・プロンジェ深海工学会」(長崎県)が行った。地元の遊漁船に乗り、小平沖の泰東丸、増毛沖の小笠原丸の順に調査。動画サイト「ニコニコ生放送」で全工程をライブ配信した。

 調査では「マルチビームソナー」という音波で地形や船の形を計測する機器を使用し、海底に眠る2隻の姿を立体図として浮かび上がらせた。泰東丸は砂に埋まっており、海底から3~5メートルほどが確認できた。一方、小笠原丸は形をとどめており、ほぼ水平に沈んでいた。

 また、これまで2隻のおおよその位置は知られていたが、誤差があったことも分かった。調査チームは遊漁船の船長の案内で場所を特定。2隻とも水深約60メートルのところに沈んでいた。

 調査メンバーは船の上で献花。浦名誉教授は「きれいにデータがとれた。印刷して22日の遺族会でお配りしたい」と話していた。(新谷千布美)

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