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なぜテレグラムはトラブルメーカーに人気なのか-QuickTake

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  • 他のSNSよりも緩いコンテンツ規制、過激な情報拡散の場に
  • ロシア人兄弟が開発、ドバイに本社-司法当局による規制困難

陰謀論の拡散に暴動の計画。通信アプリ「テレグラム」はオンライン上の過激派活動の中心となっている。

  2013年に開始され、世界で最もダウンロードされているアプリの一つであるこのプラットフォームは、非公開チャット機能により、独裁政権下の国々では自由な議論の場となっている。一方で、コンテンツの管理が比較的緩く、犯罪行為や社会を不安定化させる誤情報の拡散の阻止に取り組む政府に目を付けられてもいる。

  24日、フランスの当局は、犯罪利用を防止するための措置を怠った疑いで、テレグラムのパベル・ドゥーロフ最高経営責任者(CEO)の身柄を拘束した。拘束についてまだ公式な説明はなく、同社は、欧州の法律を順守しているとの声明を発表した。

テレグラムとは何か?

  テキストベースのチャットサービスで、米メタ・プラットフォームズのメッセージアプリ「ワッツアップ」に似た外観と使用感を持つ。X(旧ツイッター)やフェイスブックにあるような追加機能も備えている。テレグラムのチャット機能は、シンプルで日常的なコミュニケーションツールとして、世界中で数億人が利用している。

  利用者は、ストーリーを投稿したり、ディスカッショングループを作成したり、チャンネルと呼ばれるものを開設することもできる。チャンネルでは、何百万人もの購読者を集め、ニュースや情報の発信源として影響力を持つこともある。

  新規ユーザーは、スパムの送信やユーザーへの詐欺行為、暴力の助長、違法なポルノコンテンツの投稿を行わないことに同意する必要がある。しかし、実際には、米国系の大手ソーシャルメディアネットワークと比較すると、コンテンツの管理は控えめで、暴力をあからさまに助長するようなコンテンツを原則として削除する程度だ。

テレグラムの機密性は?

  テレグラムの暗号化の程度は、依然としてはっきりしていない。 競合するサービスのワッツアップとシグナルは、利用者のメッセージを保護する最善の方法の一つと考えられているエンドツーエンド暗号化(E2EE)を採用しているが、テレグラムは採用していない。

  その代わり、「シークレットチャット」を開始したユーザーだけにE2EEを提供することで、テレグラムや、あらゆる詮索好きな利用者によるメッセージの閲覧を不可能にする。また、テレグラムは独自の暗号化プロトコルに依存しているため、シグナルと違い、セキュリティーの専門家がその主張をテスト・検証することはできない。

なぜ過激派にとって強力なツールとされるのか?

  テレグラム上のコンテンツは、Xや動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」、フェイスブックといった他のプラットフォームと違い、ユーザーの利用履歴に基づいてプッシュ配信されることがない。

  とはいえ、テレグラム上でもヘイトスピーチやデマが拡散される恐れはある。利用者が自分のチャンネルのコンテンツを、他のチャンネルにも投稿できることが理由の一つだ。例えば、米共和党大統領候補のトランプ元大統領の支持者向けチャンネルをフォローしている利用者は、より攻撃的な政治的内容を配信している陰謀論者の標的になる可能性がある。

  利用者がそうしたチャンネルへのリンクをフォローすれば、より急進的な論調を発信する過激なユーザーと関わる恐れがある。

英国の暴動でのテレグラムの役割は?

  テレグラムは、8月初めに英国で起きた反移民暴動の扇動や企画に利用された。

  ロンドン拠点のシンクタンク「戦略対話研究所」(ISD)の調査によると、7月29日に英北部サウスポートで少女3人が殺害された事件後、過激派がテレグラムのチャンネルを利用してイスラム教徒に対する憎悪をあおり、暴動の場所や標的、暴動をもくろむ人々向けの実践的なアドバイスを拡散した。

  ISDは、テレグラム上の16の著名なチャンネルとグループを調べ、「暴動に関連する反イスラム、反移民のコンテンツを積極的に投稿、拡散している」ことを確認した。暴動に直接反応して作成された六つのチャンネルは、今月5、6日にテレグラム上から削除されたことも分かった。

  英国暴動における役割について問われたテレグラムの広報担当者は、同社の管理者が「状況を積極的に監視し、暴力を呼びかける投稿やチャンネルを削除している」と述べた。同担当者によると、公開された投稿の直接的な監視のほか、人工知能(AI)の使用、利用者からの報告などを監視に活用している。

  英国のスターマー首相は、騒動をあおったソーシャルメディアを取り締まる考えを示した。

なぜ各国政府はテレグラムを問題視するのか?

  テレグラムを利用し、個人宛てに、またはチャットルームやチャンネルで、虚偽や扇動的な情報を直接発信する過激派を追跡することは、非常に難しい。

  フェイスブックやワッツアップを持つメタは米国に本社を置く上場企業で、法執行機関にとっては、違法行為に関与する利用者の特定に協力するよう、同社を説得できる余地が比較的大きい。一方、ドバイに本社があるテレグラムに対しては、法執行機関はほぼ無力であることが分かっている。

  テレグラム上では特に、親ロシア系のアカウントの活動が活発で、ウクライナへの支持の弱体化を目的とした誤情報を拡散している。ロシアの情報機関員はテレグラムを利用し、ヨーロッパ主要都市で妨害工作を行う犯罪者の採用活動を行っている。ゼレンスキー大統領も含めた多くのウクライナ人にも利用されている。

テレグラムの始まりは?

  テレグラムは、ロシア人起業家のパベル氏と、兄でプログラマー兼数学者のニコライ氏が開発した。2人は06年にロシアを拠点とするソーシャルメディア「フコンタクテ」を開発し、巨万の富を築いた。フコンタクテはロシア人の間で急速な人気を博し、ロシア政府とつながりのある億万長者の標的となった。パベル氏はロシアを脱出し、フコンタクテの持ち株を売却。同時期に、ニコライ氏がデータ転送システムを開発し、テレグラムのアイデアが生まれた。

  「ロシアのマーク・ザッカーバーグ」と呼ばれることもあるパベル氏は、現在も自主的な亡命生活を続けている。純資産が100億ドル(約1兆4400億円)を超える資産家として、よくニュースの見出しを飾っている。

  テレグラムは暗号資産(仮想通貨)とも切り離せない存在で、18年には独自の「テレグラム・オープン・ネットワーク」ブロックチェーン(分散型デジタル台帳)で、新規仮想通貨公開(ICO)を行った。

どのように収益を得ているのか?

  パベル氏は20年、創設以来収益がゼロだったというテレグラムの収益化計画を発表した。22年には、定額制の「テレグラム・プレミアム」を開始した。利用者は、より高速なダウンロードや、より大容量のファイルのアップロードなどのメリットがある。

  また、コンテンツ制作者が自身のチャンネルで得た広告収入の50%を保持できる報酬システムも導入した。それでも、テレグラムの資金の大半は、依然として創業者自身によるものだ。

原題:Why Telegram Became a Go-To App for Troublemakers: QuickTake(抜粋)

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