連休が明けた日の午後 衣珠のところへ行った。

丁度 耳鼻科の検査の為 医師と看護師が数名 病室に訪れた。
考えてみれば 耳鼻科の検査は 怪我をしてから初めてである。

今まで 目やにが酷いとき、歯肉炎が酷い時等 こちらが申し出たときに、それぞれ 眼科医師 歯科医師が診てくれた。
申し出るまでは そのまま放置されることの方が多かった。

この病院(施設)は 定期的に 各担当の医師が 検診してくれるシステムになっているらしい。
耳の状況を聞いたところ 耳の入り口付近に ちょっと傷があったが 鼓膜はきれいで 何も問題ないとのこと。

衣珠の様に 自分で訴えることの出来ない患者は 周りが気づいてあげなければ ずっと苦痛を受け続けることになる。
この病院は そんな患者に 医師の方から 歩み寄る素晴らしい病院だと 改めて思わされた。



そのあと 養護学校の先生が訪れ ベッド脇で授業をしてくれた。

音楽のリズムに合わせて 身体の緊張を和らげる為のマッサージから入り 楽器を使って音やリズムを楽しむ授業だった。

衣珠の顔に 今まで(怪我をしてから)見たことが無い 楽しそうな表情が感じ取れた。
今後 トランポリンを使って 身体を揺らしたりと 色々楽しそうなカリキュラムが待ち受けているらしい。

植物状態になって 7年が経とうとしているが やっと 人間として見てくれる病院に辿り着いた。

あまりにも嬉しくて これは夢なのかな?本当に好きなだけここにいていいのかな?夢から覚めて 「次の転院先を探しましょう。」って 言われるんじゃないかな・・・という不安が胸の中をよぎる。

でももう 心配しなくて大丈夫だよ・・・と 自分の心につぶやく。

やっとの思いで衣珠はこの素晴らしい病院に辿り着くことができた。
でも 今まだ 暗い荒波の中を漂流している方達が沢山いる訳で、私と衣珠が そこから抜け出せたからといって それでハッピーエンドではない。