"リア充"ではなく"厨二病"と歩んだ「オタク文化の10年」(明大アニ研シンポ前編) アキバ総研編集部
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「アキバ総研編集部」連載コラム第38回(文:アキバ総研担当Hokuto.K)
日本最大のオタク系サークルである「明治大学アニメ・声優研究会」の創立10周年記念シンポジウム「アニメ・マンガ文化の10年」が12月6日、明治大学 駿河台キャンパスで開催された。
※明治大学アニメ・声優研究会および同創立10周年記念プロジェクトについては以下の記事を参照。
→明大アニ研「創立10周年記念プロジェクト」発足! 2つの主催イベントを発表
→明大アニ研「創立10周年記念」シンポジウム開催決定! 谷口悟朗監督らが登場予定
→明大アニ研10周年記念シンポジウム、氷川竜介や上田耕行も出演決定!
シンポジウムは、森川嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)による基調講演とゲストを交えたパネルディスカッションの2部形 式。具体的な資料とネタ話を交えてオタク文化の根源を探る森川氏、業界内部の裏話までも明らかになったパネルディスカッションと、(良い意味で)学生サー クルらしからぬイベントとなっていた。
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御茶ノ水・明治大学 駿河台キャンパス | 会場内の様子 |
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月刊アニメージュ(10年分)がズラリ。「全部1人のサークル員の私物」とのこと |
シンポジウムは、森川嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)による基調講演とゲストを交えたパネルディスカッションの2部形式。わかりやすい資料とネタ話を 交えてオタク文化の根源に迫る基調講演、業界内部の裏話までも明らかになったパネルディスカッションと、(良い意味で)学生サークルらしからぬイベントと なっていた。
以下、前編として、森川氏による基調講演のレポートをお届けしよう。
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基調講演を務めた森川嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授) |
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エヴァブームと「厨二病」。画像中央の番宣ポスターは、森川氏がヤフオクで落札(約25,000円)したものらしい |
■はじめに
・ジンポジウムタイトルについて。本来は「オタク文化の10年」というタイトルだったが、明治大学の「米沢嘉博記念図書館」「東京国際マンガ図書館」(仮称)に関わっている森川氏や一般参加者(が引いてしまうこと)に配慮して「アニメ・マンガ文化の10年」となった。
・(この10年を考える上で)アニメ文化とマンガ文化は相当違うものである。さらに、これらに対してオタク文化はどういう関係にあるのか。関わっているようでかなりズレれている文化圏の関係性を考えることが、「オタク文化の10年」を語る上での軸となる。
■アニメ=「厨二」「厨二病」
・アニメ文化とオタク文化について。特に、エヴァブーム(1996~1997年)が決定的な出来事のひとつで、アニメーションの作られ方/売られ方を変えた。現代のアニメやオタクはエヴァブーム以降に存在していることの再確認を。
・当時の番宣ポスター(非売品)から読み取れる情報として、スポンサーや枠情報が重要(そのアニメの立場がわかる)。また、エヴァのポスターは「セカイ系」を明確に示す衝撃的なキャッチコピー「決戦兵器は、14歳。」も入っていた。14歳=中学2年生。2ちゃんねるで言うところの「厨二」である。アニメというメディアは多くの厨二病患者を生んだ。そして、アニメはこの「厨二」「厨二病」を大きなターゲットにして10年20年の間、作られてきた。
・日本の14歳の人口比率について。団塊ジュニアをピークに14歳人口が減少。このことがオタク業界の構造に多大な影響を及ぼしている。
・例えば週刊少年ジャンプの 発行部数。1995年をピークに減少、社会的に見るとオウム事件や阪神大震災と関連しているが、「ドラゴンボール」「スラムダンク」「幽遊白書」が終わっ たことが直接の原因。ドラゴンボールは、団塊ジュニアが14歳を迎える頃に始まったが、彼らが(少年期を過ぎても)作品が終わるまで本誌を読み続けたた めに「発行部数のピークが延命された」という結果と見ることができる。
つまり、14歳人口(本来のターゲット)の不足分を厨二病患者たちが補い続けてきたが、少子化の進行により、やがて厨二病患者がメインストリームになった。
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日本の14歳人口の推移 | 週刊少年ジャンプ発行部数 | コミケの年間参加者数 |
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宮崎事件当時の報道 | アニメブームの流れと当時の盛り上がり |
■業界に反比例するように盛り上がるコミケ
・コミケの年間参加者数は年々増加。特に、宮崎事件(1989年)と有明移転で急増。宮崎事件は大規模なオタクバッシングを巻き起こしたが、皮肉にも、事件の報道でコミケが広く知られるようになった。オタク文化には"叩かれると盛り上がる"という不可思議な部分もある。
・ただし、宮崎事件は団塊ジュニアが思春期から成年になる頃に発生したため、大きな世代ひとつ分がアニメ好き=犯罪者予備軍という風潮のなかで育ってしまった。それがその後のアニメ業界に少なからず影響を与えている。
■アニメ雑誌から見るアニメブーム
現代において、「アニメは社会的に注目を集め始めている」と思われがちだが、当時の盛り上がり方は今と質的に異なるものだった。当時はオタクというより、ハイセンスな若者たちが支えていた、ファッショナブルな若者文化。
・ 例えば、月刊OUT。当初サブカル雑誌だったが創刊号がほとんど売れず、第2号でヤマト特集を展開して大ヒット(=アニメ誌になるキッカケ)。当時、成年向 け雑誌の表紙をヤマトが飾ったことは、かなりの衝撃があった。昨今の出来事で言うならば、STUDIO VOICEがエヴァ特集号を発行した時と同じくらいもの。
・同時期に創刊されたPC雑誌も似たような傾向。堅い雰囲気だったものが、(読者の声により)オタク文化満載のものに変わっていった。そして、パソコン好きとアニメ好きの趣味的な重なりが、後の秋葉原を形成していった。
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月刊OUT創刊号と第2号 | STUDIO VOICEのエヴァ特集号 | 月刊OUTの表紙一覧 |
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PC雑誌「テクノポリス」創刊号 |
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同3号。SF系をやや前面に | 5号目ではすっかりアニメ誌かのような状態に |
■アニメにおける「3つのステージ」
・どういう資本でアニメが作られてきたかに注目。
①お菓子メーカー(紙芝居の名残)・・・・・②バンダイなど玩具メーカー(ガンプラヒットの反復狙い)・・・・・・<エヴァブーム>・・・・・・・③レコード会社と角川書店(OVAなどパッケージ化して作品自身を売る)
つまり、
①大人が子どものために作っていたが、②(ガンダムを機に)製作側にオタクが参入し、見る側もオタク層が多くを占めるようになり、③やがてオタクのためだけのものになった。そのため、アニメに対する意識の違いが世代間で大きくある。
■マンガと団塊世代の強い結びつき
・週刊の少年マンガ雑誌について。当時のこどもたちは自分たちのメディアと して意識し、成人しても読み続けた。その彼らが社会に進出していき、やがて大人向けのマンガ誌が作られるようになった。昨今の大学において、マンガ関連学 科やマンガ図書館が設立されやすいというのは、当時マンガと強く結びついていた人たちが理事会クラスになっていることが最大の理由に挙げられる。
■マンガとアニメの盛り上がりの対比
・当時の人たちの自然な考え方
「マンガに起こったことはアニメにもおこるはずだ!(キリッ」
「きっと大人向けのアニメ誌が出て、マンガのように電車のなかでも普通に読みふけり、年をとってもアニメを見続けるだろう!(キリッ」
前述のとおり、当時のアニメの盛り上がり方は今と質的に異なり、オタクというよりハイセンスな若者たちが持ち上げていた。つまり、(そのまま行けば)アニメはファッショナブルな若者文化として存続していくはずだった。
・なぜそうならなくなったのか
→「機動戦士ガンダム」本放送時(1979年)、SFやアマチュア無線など各方面に散らばっていたオタク気質の人々がアニメをプロトコル(共通言語)として結集。これにより、「アニメ=オタク」のイメージが早急に形成された。
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アニメにおける「3つのステージ」 | マンガ誌とアニメ誌の創刊時期 |
■変わらないオタク像と変わっていくアニメ
・1981年発行のアニメ雑誌にオタクの解説イラストが掲載されているが、現代のメディア(例:2ちゃんねるのオタクAA)で描かれているオタク像ととまるで同じ。ただし、アニメはオタクと密接な関係を持ったため、その後大きく変わっていくことに。
・角川春樹のニュータイプ創刊宣言より
当時のアニメブームを見た角川春樹氏は、TVアニメしかなかった時代にいちはやく「小説のアニメ化」に挑戦していた。こういった80年代の出来事がアニメの将来を決定付けており、その影響は、現代のアニメ業界におけるライトノベルと角川書店の立場からもうかがい知ることができる。
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2ちゃんねるのオタクAAと1981年当時のオタク解説イラスト | 角川春樹のニュータイプ創刊宣言 |
■何が、誰が、アニメを変えたのか
・では、当時、自分が「アニメを作れる立場」だったとしたら、"アニメ=オタク"という流れを変えることはできたのか? 80年代に何か違うことが起こっていたら"アニメ=リア充"という未来も十分有り得たはずだが、何が、誰が、アニメを変えたのか? それは良いことなのか、悪いことなのか?
第2部のパネルディスカッションに対して、上記のストレートな問題を提起したところで、森川氏の基調講演は締めくくられた。続き(パネルディスカッション)は後編にて。
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