業界関係者が本音を明かした「オタク文化の10年」PD(明大アニ研シンポ後編part2) アキバ総研編集部
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「アキバ総研編集部」連載コラム第40回(文:アキバ総研担当Hokuto.K)
日本最大のオタク系サークルである「明治大学アニメ・声優研究会」の創立10周年記念シンポジウム「アニメ・マンガ文化の10年」が12月6日、明治大学 駿河台キャンパスで開催された。
※このレポートは以下の記事の続きです。
→"リア充"ではなく"厨二病"と歩んだ「オタク文化の10年」(明大アニ研シンポ前編) アキバ総研編集部
→業界関係者が本音を明かした「オタク文化の10年」PD(明大アニ研シンポ後編part1) アキバ総研編集部
森川嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)による基調講演に続き、パネルディスカッションには、以下の著名人が登場。森川氏がコーディネーターとなり、各ゲストが職業/経験上から「オタク文化の10年」について率直な意見をぶつけあった。
<ゲスト>
・谷口悟朗(アニメーション監督・演出家)
代表作:「コードギアス 反逆のルルーシュ」「コードギアス 反逆のルルーシュR2」「プラネテス」「無限のリヴァイアス」「ガン×ソード」
・上田耕行(アニメプロデューサー)
代表作:「serial experiments lain」「NieA_7」「灰羽連盟」「TEXHNOLYZE」「HELLSING」OVA
・氷川竜介(アニメ評論家)
主な著書:「20年目のザンボット3」「世紀末アニメ熱論」「アニメ新世紀王道秘伝書」「ガンダムの現場から ― 富野由悠季発言集」「アキラ アーカイヴ」
・喜屋武ちあき(タレント)
アニメ・マンガ・ゲームを愛するオタクアイドル。アニメ特集番組のMCや「中野腐女子シスターズ」で活躍中。
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御茶ノ水・明治大学 駿河台キャンパス | 会場風景 |
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森川嘉一郎氏 | 谷口悟朗氏 | 上田耕行氏 |
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氷川竜介氏 | 喜屋武ちあきさん | 森川氏による各ゲストの世代紹介 |
■作り手と視聴者とインターネット
きゃ:「ハルヒ」「らき☆すた」の京アニ(京都アニメーション)さんみたいに、最近は作り手が見る側を意識してますよね。
氷:発表後イジられること前提にしてるから。
上:もともと京アニさんはマジメな下請け。だから若いファンの意見をマジメに取り込んで、その結果ウケたんでしょう。
きゃ:たしかにロケハンとかもスゴイですよね。京アニさん以外もネットを意識してるんですか?
上:スタッフは意識してますね。僕は精神的に悪いので見ないw 良いこと書いてあるよって時は見ちゃうけど。
谷:(2chができた1999年は「リヴァイアス」を撮ってた時期なので)「2ちゃんねる」ができてすぐの頃に見てました。でも、これはいかんわーてことでアニメ・特撮関連は見ないことに。まず、スタッフワーク的な問題が起きます。
みんなうれしくて2ch見ちゃうんです。プリントアウトしてスタジオに持ってくる人もいるほど。(それまでは雑誌とかレターで間接的だったが)リアルタイムの生の声が聞けるようになったから。反面、レスを見ると特定個人への誹謗中傷や晒しがヒドイんですよ。内容もスタッフしか知らないことが書かれててどう考えても内部犯。みんな疑心暗鬼状態になって、チームワークがなくなってしまう。
でも、この業界で1人前になるということは"2chで個人のアンチスレが立って罵声浴びること"なので、その覚悟はあるか?と、監督を目指したいという人によく言いますw それが、世間的に認知された証であり、そこまで精神力があるなら目指しなさい、と。2chで潰れるスタッフも多いですが、それはまた本人の問題ですね。
■想定するファンのズレと情報漏えい
谷:方向性の問題もありますね。2chを見て、「ここにファンがいる」って勘違いしてしまう人が多い。実際は「ここにもいるけど違うところにもいる」のですが、2chに存在するファンに向けて作品を作ってしまうという…。
きゃ:一部をすべてだと思ってしまうんですね。
上:TVは結果がわかるのが遅いんですよ。でも、感想が早くもらえると作り手はエネルギーになる。距離の問題は難しいです。
谷:スタッフの守秘義務についても難しい。ブログとかネット経由で情報が漏れたり…。
上:ここ数年で現場も情報管理がきびしくなってきましたね。ゲーム業界の影響もあるし、最近はパチンコ業界の影響。発表タイミングなど熾烈な競争があります。
氷:NDAとかね。僕はネットで大変な目にあったことがありますよw 商売もそうですけど、単純に観る側とってネタバレするとつまんないから迂闊にしゃべれない。
森:男性陣はキャリアの途中でネットが普及しましたが、きゃんさんは?
きゃ:気づいたときにはネットがあったので意識したことないですね。ケータイでもできますし。
谷:でも、ネットみたいな新技術を取り入れるのは楽しいですよ。(制作会社のランク、制作会社の中でも監督のランクで回ってくるお金が違うが)ネット上であれば回ってくる資金に関係なくいろいろできるので平等性が増したといえます。
上:昔のことも全部ログに残るからいい加減なことができなくなりましたw
■ファンの変化2
谷:今まで雑誌などで、自分が想定したファン層(=アニメの制作業務を知りたい人、制作者候補)へ向けての発言してましたが、これをやめようかな、と。ここ10年でお客さんが一般化したというか、お客さんはスタッフなんか気にしてない。ここ(=今回の客席)にいる方々は、病をこじらせたような方々なんで別ですがww (会場爆笑) 昔はポスターでもスタッフの名前が大きくて多かったはずです。
上:昔はクレジット掲載で血みどろのケンカとかもありましたからねw 今は番宣ポスターは「見たいな」と思わせる部分(絵だったり、売れるスタッフ)を大きく書く。TVのエンドロールが早いのも、チャンネル変えられたくないからですよ。クレジットは自分がちゃんと仕事していると伝えられる数少ない場所。アニメでやったら暴動が起きるw
谷:TV業界だと、アニメは映画やドラマに近い考え方ですね。アニメは"監督"、他は"ディレクター"ですし、テロップも文化が違う。
氷:70年台中盤までは"監督"じゃなくて"演出"としてクレジットされるケースも多かった。
■原画マンの増加
氷:ここ10年のクレジットで一番変化したのは原画マンの多さ。すごい数になってますよ。
谷:それは、線が増えたり情報量が増えて、1枚を描くのに時間かかるようになったからです。もうひとつはTV局のせい。以前は半年~1年前に新番組の発表ができたんですが、最近はせいぜい3ヶ月前くらいじゃないと無理。
上:テレビ局の枠を購入するために、要望を出すのですが他社との競合もあり、編成が確定するのが遅いんです。だから枠が決まるのがギリギリになる。番宣ポスターは放送局を書かないで作ってることがあります。
谷:実際、アニメ雑誌でもTVアニメかOVAか書いてないんですよ。下手に情報を出せないので。結局、資金が潤沢なスタジオは発表前から作ってるんですが、ほかの制作会社は予算が降りなくて資金がヤバイ、という具合になります。そして、予算が出た時点で、大量にアニメーターを募集する。結果、アニメーターはみんな資金が潤沢なほうの仕事をすでにやってるから作業量は増やせない。これが大人数化の理由です。
■「今後10年、どういうアニメが見たいか?」
(喜屋武さん、退場時間が近いために最後の質問)
きゃ:10年後って想像がつきませんが、アニメでしか描けないことを描いてほしいです。今は日常系が多いですが、まっすぐな冒険譚とかが見たいですねー。谷口さんは「プラネテス」みたいにありそうな未来の話、「スクライド」「リヴァイアス」みたいに不思議な世界観のものがありますが、世界観の作り方をお聞きしたいです。
谷:実はスタートは全て違う。「リヴァイアス」はサンライズに眠ってた企画書を見つけたことが始まりだったし、「スクライド」は単純に男の殴り合いが描きたい!と。
アニメの現場は集団作業なので、スタッフのフェチ部分許容するために意図的にゆるくゆるく作る。私はどちらかというと締め付けていくタイプらしいので、その点を気をつけています。あとは、私はアニメーターじゃないので、絵が描けないことを前提にしてる部分がある。
上:(谷口監督は)真っ直ぐな冒険譚が似合いそうだけど、作ってないですよね? というか、谷口さんは苦しい雰囲気の作品が多いですよね。きっと現場も苦しいんだろうなーって思うようなw
谷:この10年でそういったスタイル中心にシフトしていかざるを得なかった、と思います。時代ごとに作風は変えたい。
高畑さん・富野さん・押井さんといった絵が描けない監督の共通傾向として、自分たちの技術を論理で組み上げて、スタッフを説得させなきゃいけない。描ける監督は自分で描いて説明できるからいいけど、我々はカットの必要理由をひとつずつ説明しないといけない。その違いが作品の雰囲気に出てるんじゃないかなぁと。
氷:フェチ的な部分については?
谷:色とか自分でコレと決めたものは通すけど、迷うときはできるだけ現場スタッフ集めて、多数決で決めたりします。おっぱいの専門家とかパンツの専門家とかもいるので、できるだけ聞いたほうがいいw
■男性パネラーのみになったということで…、はばかるところのないお話を(森川氏)
谷:スタッフにもバランス型と特化型があるんです。特化型のほうがハッキリしているから使いやすくて上にいきやすい。
上:パンツにしても、版権絵でここまで描かなくても…。という人もいますからねw
谷:「舞-HiME」のときは、ほとんどのスタッフが初めての美少女モノでした、プロデューサーですら初めて。バンダイビジュアルもサンライズもマジメだからw それで、「よくわからんけど、楽しんでもらうためにはどうしよう」ってことで過去の作品を見て練るんです。スタッフを全員集めて、興味のあるヤツから意見を聞くんです。それで何らかのフェチに目覚めたマジメなスタッフが出てきたりw
上:サンライズはオープンなんですねww
谷:オープンすぎて困ることもあるくらいですよ!w
■パッケージがアニメビジネスの大きな割合になったことと「こだわり」(フェチ)の関係性
谷:明確に関係していると思います。それまでは30分放送したらそれで終わり。子どもが楽しんでくれればいいだろう、とか捉え方があいまいだった。
(駆け出しのころ関わった子ども向けシリーズは)元々影が無かったが、シリーズ後半で影つきにされたり…。これは、女性ファンをつけるための指示なんですよ。だから、子どもたちには関係ないこと。むしろ雰囲気が怖くなるってことで、上とモメたことがありました。
「ライディーン」はローテで演出をやってましたが、やる回ごとに方向性が違ってましたww シリアス・ギャグ・ほのぼのホームコメディと。これはアニメをビジネスモデルとして発展させるために、制作会社もテレビ局も試行錯誤していた時代だったから起こったことです。
このような状態で監督をやる場合、足場を固めて始めないと、テレビ局や制作会社だけでなく、スタッフ(自己主張があるので)含めて各方面の力から押しつぶされる。
上:各パートで意見があるので、均一になる方が少ないですよね。だからこそ監督は中間管理職的ではあるが、なにかビジョン(こだわり)がないとまとめられない。
日本のアニメはピーク時と比べて今は2/3。来年にはおそらく(ピークの)半分近くに減る。喜屋武さんの言った「真っ直ぐな作品」が見たいというのは嘘偽りの無い言葉だと思います。オタク系や一発ネタで売れる要素だけ考えてここ10年の後半は乱雑に作ってきちゃった。結果、だんだん飽きられてきてます。消費している文化なのでそれはそれで良いんですが、もう1段階考えて作っていかなきゃいけないという流れがちょうど今。
※後編part3へ続く
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