~とってもおいしいの……~ イヤッホーーー!!!! キムチそばだっ!! ナスの生姜醤油だっっ!!! 和食!! 和食サイコーー☆ L・O・V・E・和食☆☆ 和食だ……。 和食だよ。G-SHOCKじゃないよ。和-SHOCKだよ。な~~んちゃって!! そりゃあつまらんギャグも言いたくなるよ。言いたくなるに決まっているだろうこんな高級料理を前にしたら。言いたくならいでかっっ!!! 生まれ育った故郷、日本を後にしてから15年。僕が、どんなに和食に会いたかったかわかるかい? どんなにむしゃぶりつきたかったかわかるかい?? ああ……今むしゃぶりつくべきは生娘の尻より日本そばじゃ……。生娘の尻を隣にスタンバイさせて、ご飯 → 主菜 → 副菜 → 汁物 → 尻 とマナー通り順番にむしゃぶりつければそれが一番いいが、衣食足りて礼節を知るなので今はマナーを守っている場合ではないしここには生娘もいない。それならば、生娘よりキムチじゃ。さあ食うぞ!! おっと、「どうせインドで出る日本食なんか、まともな味がするわけないだろう」って、そんな声が聞こえてきたぞ?? 今、はっきりと聞こえてきたぞ?? ……これはどこからの声だろう。今まで付き合った女性には全員盗聴器を仕掛けてあるから、なかなかどの発信元かを特定するのは難しいんだよな。……ていうか、このサイトを冗談がわからない警察の人が読んだら、そろそろ任意で引っ張られそうだな。さすがに自粛した方がいいかもしれん。よし、これからは真面目になろう。盗聴の受信機なんて捨てて!! え? 「どうせインドで出る日本食なんか、まともな味がするわけないだろう」って?? ……ええい、インドを馬鹿にするなっ!!! そりゃあ、今まで経験した和食はたしかに悲惨だったさ。デリーで食べた親子丼は鶏肉と卵入りお湯かけごはんだったさ。掻き揚げそばは最悪だったさ(細かく説明したくない)。しかし、この「しゃん亭」をなめるんじゃないよっ!!! 元天皇の料理番志望、その名もMr.なんていう名前の人か知らんが職人気質のインド人調理人が働く、まあとりあえずほらっ!!!
では食べます。パクッ マズーー!!! ……なんていういつもの展開だと思ったあなた。甘いっ!! そんな、オレがバカの一つ覚えみたいに盛り上げて落として盛り上げて落としてという書き方を繰り返す人間だと思ってるのか!? たしかにそういう人間だけど、今日は違うのだ。 うめーーーーーーーっっ(号泣)!!!!! ホントに美味いっっ!!! 和食だっ!! これが和食だっっっ!!! わ~ショック!!(いやん) 日本人というのは、和食があってるんだよやっぱり。そうだよ。オレは日本人なんだ。だからオレは、インドカレーを毎日食って育つようには出来てねえんだよっっ!!! 辛いもんばっか食ってるからおまえらインド人は怒りっぽくなるんだっつーの!! 見てみろ日本人のオレをっ!! どんな理不尽なことをされても全然怒らないだろうがっっ!!! いやー、とにかく、ちゃんと醤油の味がするってのがいいね。ナス好きなんです。本当にナスが好きなんです。ナスてこんなにわだすはナスが好きなんじゃろか。なんとなくこのキムチは油ぎってるというか、まあ新鮮な感じではないけれど、でも味がどうこうというのは、今言うべきじゃない。キムチが食べられるという、和食が食べられるというそのことだけでどれだけ素敵なことかを今は噛み締めよう。あっ、キムチは別に和食じゃないかあ。てへっ! ちなみにこのそば、冷やしそばなんです。暑いバラナシだからこそ、冷たいそばがいいのです。これセオリーです。いや、セオリーではないです。thの発音なので、舌ベロをちょっと噛んでスェオリーです。 ごちそうさまーーー!!! めちゃめちゃ平らげた!!! 珍しく残さずに食べた!! 皿洗いの人に優しい食べ方をした! インドに来てから毎食半分くらいは確実に残してるのに!! 「超ド級に美味しかったですおじさん! はい、代金そしてチップ! これはあなたの腕前に対する尊敬の意味を込めたチップです」 「ありがとなー」 「なんなら明日も来ます。明後日もその次も!」 ああ、最高だった。 ああ美味しかった。 まさかバラナシで、しかもたった100円で冷やしソバが食えるとは……。最高です。本当にここは最高なレストランです。もし僕がミシュランの編集スタッフだったら、このレストランを最新のミシュランガイドには特に掲載しません。まあ、それほどのものじゃないってのは僕もわかってます。ただ、少なくともインドで100円で食える日本食としては最高峰に近い、もうほとんど頂点という、準ミスユニバースの知花くららさんのポジションの美味さでした。 そんなわけで、オレは弾む心に足取りも軽く、ルンルン言いながらレストランを出た。今日もクリケットバットを持っているため、もう夜だというのに子供も大人も「ちょーだい! バットちょーだい!」「なあ、ちょっと貸してくれよ。オレに1回振らせてくれよ!」と怒涛のように寄って来るけど、全然気になりません。美味しい物を食べると、人は自然に笑顔になるものです。 はーい、こんなものどんどん持って行きなよキミたち! はーい、こんなもの好きなだけ振りなよおじさんたち! とは言わないけれど、「ごめん、あげたくないの。貸したくないの」と断りの言葉もいつにも増して優しい笑顔だ。なんだか今夜、自分のことを初めて好きになれそうです。 宿に帰ったオレは水シャワーで1日分の汗を流し、誰もがうらやむ魅惑のボディを自分で独り占めにしてベッドに倒れこんだ。まだこの体は、誰の物でもないの。オレのキャッチフレーズは、「作者つよし29歳、まだ誰のものでもありません」なの。……なんか今日オレ全体的に明るいでしょ。引きこもりを卒業したかのようでしょ。ふっ……。そりゃあ、あんな最高のメシを食えばこんなテンションにもなるわ!!! さあ寝よーっと。 ということで、オレは寝た。3時間くらい寝た。そして、発症したのは夜中の2時頃であった。 …………。 気持ち悪い……。 胃が……胃が腸が……。うう、気持ち悪い~~っっ。 ぬお~、経験上、非常にまずい種類の気持ち悪さだなこれ。これは……、く、来るぞ。始まる。これから、とっても苦しい時間が始まる。「苦しい時間イズ カ~ミ~ング トゥ~ナ~イト♪」と腹痛マスターの直感が歌っている。ねぇ聞こえ~て、来るで~しょ♪ 苦しみの音が~すぐそこに♪(号泣) うう~、気持ちわり~~(涙)。吐く~~。おえ~~~。なんかこの、吐きそうに気持ち悪いけど吐くほどひどくは無いという、頂点に達する1歩手前な準ミスユニバースの知花くららさんのポジションの気持ち悪さ、これが一番いやなんだって……。一気に森理世さんレベルのトップに上り詰め、ゲロ~ッ!とやらせてくれれば多少は楽になるはずなのに。だからって喉の奥に手を突っ込むなんて、そんな怖いことできるわけないだろっ!!! 絶対無理!! 自分で指を喉に入れてゲロを吐ける奴は、マゾだっ!! ドMだっっ!!! そして自分を虐めるという点ではSでもある。究極の変態だっっ!!!! 5 なんだ…… 何が原因だこのヤロウっっ!!!! …………。 キムチだ。キムチに完全にやられた。 4今思えばあのキムチ、キムチにしては尋常じゃなくマズかった。なんとなく「キムチを食べられるんだから美味しいと思わなきゃダメだ!」と、冷静に分析すればあのマズさは「白菜も大根も腐りきっちゃったけど、まあ唐辛子をぬりたくるからバレないだろ。使っちゃえ使っちゃえ! ノープロブレム」としゃん亭の店員が牛でも下痢になるレベルの腐った野菜の使用を強行したというのが容易に想像できるレベルのものであった。だがとにかくキッコーマンを使うような本格料亭でキムチなんてものを食べられるという興奮に、オレの意識は全ての疑念を封印していたのである。というか、 3 ←なんじゃこのさっきからちょこちょこ出てくる数字はっ!!! 邪魔なんだよっ!! なんだっ、カウントダウンか? 腹痛のカウントダウンとでも言うのかっっ!!! 何を小細工をしてやがる!! そんなくだらねー小ネタは必要ねえんだよテメー!! 来るならさっさと来ればいいだろうが!! 今すぐ来ればいいだろうがっ!! オレがカウントダウンを早送りしてやらあっ!!! 3、2、1、0!!! いっでええ~~~~~~っ(涙)!!! いだいっ! 腹がっ!! 腹が痛い~~~~~~っ(号泣)!!! ゴロゴロロゴリョリョロロ……ゴロゴロロゴリョリョロロ…… はうっ!!! キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!! 来ましたよ! やっぱり来ましたよいつものあいつが!! オレは幸いトイレつきのシングルルームに泊まっていたため、ベッドの上で衣服を全て脱ぎ去り全裸になってトイレに駆け込んだ。いや、と言っても暑すぎて元々部屋の中ではパンツ一丁になってるから、ただパンツを脱いだだけなんだけど。だからそんなたいしたことじゃない。1枚脱いだだけであれば、全裸とはいえそんな卑猥な感じはしないでしょう? ぐううううう~~~~~っっっっ!!!!!!! ※ …………。 ビチャビチャッ! シャ~~~~~ まさしく尻がビクトリアの滝状態。 い~や~だ~~~(号泣)。 旅下痢では毎度のことであるが、本来の姿を見失った謎の液体が尻からとめどなく流れ、便器へ向かう激しい水流(奔流)を巻き起こしている。この勢いでは、尻から噴射されていったものが便器に当たってそのまま跳ね返って戻って来そうである。洋式トイレでもたまに溜まっている水が帰ってくる「お釣り」があるが、今回の場合帰って来るのは便器の水ではなく全て現品なので、言うなればお釣りではなく返品である。 しかもただの返品ならまだいいが、一度便器の表面にぶち当たるため、ここに代々蓄積されているいろんな歴代のおまけがついてくることが予想される。ここは、出来るだけ尻を持ち上げて、更になんとか尻筋の力で激流の勢いを弱める努力をせねばならない。 ……こうやって、ただ下痢ということだけでなく、それに死ぬほど汚くくだらない問題が付随してくるのが、日本製とは違う旅下痢の特徴である(号泣)。 一旦大腸から今ある全て、ボヤ程度なら消せる量の液体を放出したオレは、右手で手桶をうまく操り水をかけながら、左手で尻を拭いた。いつものインド式は尻を手で拭くと「ムニュッ」という何かの感触があるのだが、激しい下痢の場合は水をかけるだけでキレイになるような気がしてちょっとお得だ。触っても水なのかアレなのか判断がつかないから、そんなに汚い感じがしない。 ちなみにまだインドを体験したことが無い方々のためにアドバイスをしておくと、尻を手で拭く時は、今触っている尻と(自粛)は自分のものではないんだという想像をすると、そんなにインド式トイレも苦痛ではなくなる。自分のものでなければ誰のものだと思えばいいかというのは、それは自由です。みんな自分が好きなあの人を想像すればいいではないですか。ではとりあえず僕は失礼して…… アッキーナだ!! アッキーナ!! 今オレが触っているのは自分の尻ではなく! うおっ! 興奮する!! 同時に、尻側に意識を向けた場合、尻を主とした場合は、「今私を触っているのは、自分の手ではないんだ」と思うことによりこちらでも興奮を味わうことができます。反対側の立場の妄想を素早く交互に行えるようになったら、もうあなたも一人前です。 適当に左手を水洗いして、オレはベッドに戻った。 しかし、尻を洗ってからすぐ全裸でベッドに横になると、シーツがめっちゃ濡れるんだよな……。問題はこれがキレイな水だけで濡れているのか、それとも何かが混ざっているかということだが……。まあ自分のだしいいか。 ゴロゴロロゴリョリョロロ……ゴロゴロロゴリョリョロロ…… はうっ!!! そこから、オレは何十回と繰り返しトイレに通うことになった。諸葛孔明ですら劉備にたった3回訪問されただけで出仕を決めたのだから、もしこのトイレに軍師が住んでいたら、どんな天才軍師でもオレの繰り返しの訪問に心を動かされ、配下になってくれただろう。 ベッド←→便器のシャトル人間となり、朝まで、いや昼まで、夜中に目覚めてから腹痛のまま10時間ほどが過ぎた頃、第二波として発熱と全身の痛みがやって来た。肩が……腰が……首が……手足の関節が……。痛い(号泣)。頭が、頭が熱い……苦しい……喉が……。 ああああああああ~~~~~~~~~(涙)。 ……間違いない。オレは毒を食った。食の中に毒がある、これすなわち食中毒。かんっぜんに食中毒である。 食中毒の特徴としては、その原因となった料理のことを想像するだけで全身が反応して吐きそうになるというものがある。オレは早速キムチを想像してみた。 おえええええええ~~~~っっ(想像しなきゃよかった)。 やっぱりキムチだ……。100%あのキムチだ。だって明らかに味おかしかったもん。絶対に腐ってる味だったもん(なんで食ったんだ)。 くそ、しゃん亭てめーっ!!!! 何が本格的日本料理だこのヤロウ!!! 本格的な料理を味わって食中毒になるより、不味いメシをしぶしぶ食って健康に過ごす方がずっといいんだよっっ!!!! 最低だっ!!! てめー最低のレストランだっっ!!!! オレはバックパックの秘密のポケットから、奥の手であるアミノバイタルを取り出した。脱水症状や下痢の時に最も効率よく水分を吸収できるORSという薬(水と混ぜて飲むのだ)があるのだが、現地の薬局で買うORSはこのセレブのおぼっちゃんの口には合わないので、代わりに日本製のスポーツドリンクの粉を持参したのである。計算された浸透圧だ!! 最速吸収だっ!!! よし……このアミノバイタルを1リットルの水に混ぜてアラヨと飲めばたちどころに体調不良は……。 水がねえよー(涙)。 背中が痛い……苦しい……。 ミネラルウォーターはもうとっくに飲みきってるんだった……。トイレには水道があるが、尻を洗う用の水を飲むのはいやだ。ましてや、インドの水道水だぞっ!!! 健康な人間でも下痢になるじゃねーかっっ!!! すでに完全に液体の下痢になってるのに、この状態で水道水を飲んだらどうなるんだよっ!!! もしかしたら……、この状態でインドの水道水を飲んだら、行き着くところまで行き着いて今度は気体の下痢になるのではないだろうか?? とめどなく尻から濁った色のついた気体が出続けるという……。それは意外とトイレに行かなくて済むから楽かもしれん。体が痛い~~~~。息がっ、息ができん~~(号泣)!! くだらねえこと考えてる場合じゃねえ~~(涙)。 オレは薄れ行く意識のまま服を着ると、宿を出てバザールまで這い進んだ。…………。あああ暑い。暑い。どんな鬱陶しい太陽なんだよ……。せめて天体はインドでもまともだと思ってたのに太陽おまえもかよ……(涙)。脳が、脳が溶ける。このままトロトロしてると本当に意識を失う。3分以内に買い物を終わらせて帰らないと。 「ジャパニーズー!! ボートどうだ!? ガンガーでボート! ボート乗れよ!」 「ヘーイジャパニーズ!! どこへ行くんだ! 駅か? ドゥルガー寺院か? リキシャで行ってやるからよ、来いよ!!」 「ガバメントショップに来ないか? カーペットに興味ない? 見るだけタダだよ!」 …………(体長不良のためコメント出ず)。 水と、食料を手に入れねば……。食料……衣を油でカラッと揚げたアッツアツのサモサを……おえ~~~~~~っ。このサモサが地球上に残された最後の食料だったとしても食えるかっ!!! 気持ち悪りいよ~~ オレはリヤカーに山ほど果物を積んでいるフルーツパーラーのおやっさんから、リンゴとマンゴーを1kgずつ買った。今食えるのは、果物だけだ。火照る体を持て余す人妻がウェルカムな体勢でやって来ても、今だけは食えん。帰り際にミネラルウォーター数本とジュースを買い、部屋に這い戻るやいなやリンゴを食い、アミノバイタルで最速吸収飲料を作成して一気に飲んだ。 どうだ……、これで、これで回復するだろっ!!! アミノバイタルだぞ!!! リンゴまで食ったんだぞ!!! さらば下痢!! バイバイありがとうさようなら!! いとしい下痢よ! あんたちょっといい下痢だったよその分ズルい下痢だね! また会おう!!! ゴロゴロロゴリョリョロロ……ゴロゴロロゴリョリョロロ…… はうっ!!! その30分後、アミノバイタルとリンゴは、色の濃い液体となってインドの便器に流れて行った。 ぐうう~~、ぐうう~~~。 今日の一冊は、遂に電子の合本が発売に! 合本 坂の上の雲 |