敗戦にたたずむメッシ。バルサでの彼とはまるで別人のようだ<br>(Photos by Tsutomu KISHIMOTO)<br>

写真拡大 (全5枚)

 ホームのブラジル戦に続いて、アウェーでパラグアイにも敗北。マラドーナ監督のアルゼンチンが負けることは、いまや珍しいものではなくなった。エクアドル戦から始まった連敗は3に伸びた。W杯予選3連敗は同国史上初めての屈辱だ。

 6戦して2勝4敗と、まったく振るわないマラドーナ体制は、いままで2度、試合会場を巡って「墓穴」を掘っている。

 ひとつは、1対6という大惨敗を喫した敵地でのボリビア戦。

 ご存知の通りボリビアは、ホームゲームを標高3600メートルの首都ラパスで行なっている。

 過去を振り返ると、2007年12月にFIFAは原則として海抜2750メートル以上での試合を禁止する決定を下している。だが、この決定は高地開催をアドバンテージとする中南米諸国の反発に遭い、いったん保留された。この反対運動にマラドーナも加わっていたのだ。

 親交のあるボリビアのモラレス大統領に招かれて、マラドーナはラパスで地元大学生と親善試合を行なった。このゲームで彼は大活躍を見せ、高地で試合ができることを身を持って証明してみせた。このパフォーマンスから半年後、自分が代表監督を率いてラパスで惨敗することになろうとは、さすがに想像できなかっただろう。

 ちなみに、ラパスでの一戦にマラドーナは高地対策をほとんど行なわなかった。気合いがあれば十分、と堂々と乗り込み、こてんぱんにされたのだ。

 ふたつ目は9月5日、ロサリオでのブラジル戦の敗北である。

 アルゼンチン代表はいままで、ブエノスアイレスの名門リーベルプレートの本拠地「エル・モヌメンタル」をホームとしてきた。代表ゲームはモヌメンタルと相場が決まっていた。ところが、マラドーナが「芝の状況が悪い。こんなところで試合をするのはメッシやテベスに失礼だ」と主張し、前述のブラジル戦はロサリオで行なわれることになった。

 結果は1対3の惨敗。難癖をつけられたリーベルの幹部が一斉に「どこでやっても一緒じゃないか!」と反発した。

 頑固なマラドーナは、最後のホームゲーム、10月9日のペルー戦もロサリオで行なう意向を示していたが、これだけ負けると、さすがに思うがままにならなくなってくる。アルゼンチンサッカー協会のグロンドーナ会長は、モヌメンタルで試合を行なうためにマラドーナを説得する意向を表明した。

 2試合を残して、予選敗退の危機に直面するアルゼンチン。メンバーを見れば、こんな順位にいるのが不思議でならないが、ゲームを見れば納得もできる。

 代表チームのメッシはバルサのメッシとは同姓同名のそっくりさんにしか見えないし、それはアグエロもテベスもベロンも同じこと。だれひとり、クラブとは別人のような、冴えないパフォーマンスに終始している。これは監督の問題といっていい。

 だが、マラドーナはパラグアイ戦後、堂々と「俺は辞めない」と宣言。最後まで予選を戦い抜くことをアピールした。

 こうなったら、メディアも国民も見届けるしかない。

 パラグアイに負けたことで、国民やメディアは相当辛口になった。「マラドーナは監督としてやってはならないミスを、ほとんどすべて犯した」などと書いたメディアもある。だが、「神様」に向かって「やめろ!」とは、だれもいえない。

 マラドーナのアルゼンチンは、いったいどこに向かうのか。「神様」もまったくわかっていないだろう。