KADOKAWAがアビゲイル・シュライアーさんの著書「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」の刊行を中止したことについて、武蔵大の千田有紀教授(家族社会学・ジェンダー論)が6日、産経新聞の取材に応じた。著書は発売前からSNS(交流サイト)上で「差別助長につながる」などといった投稿が相次ぎ、同社本社前で抗議集会も予定された。千田氏は「原作を読んだ上で批判している人はどれだけいるのか」と指摘し、「出版社側に抗議して委縮させるのは極めて卑怯だ」と訴えた。発言要旨は以下の通り
◇
KADOKAWAのような大手出版社が刊行を取りやめる事態は想定していなかった。シュライアーさんの原作「Irreversible Damage(不可逆的なダメージ)」は10カ国語に翻訳されているが、日本語では読めないことになった。知る機会が奪われている。
シュライアーさんは元々トランスジェンダーの取材に積極的なタイプではなかったと聞く。当事者に取材を求められても別のジャーナリストを紹介していたが、あまりに誰も扱わないテーマだから自身が取材するようになったようだ。
そもそもSNSでシュライアーさんの著書に批判的な投稿があるが、原作を読んだ上で批判している人はどれだけいるだろうか。原作の中身についての言及は目立たない。ほとんどの人が読んでいないのだろう。
この状況に驚きを禁じ得ない。みんなが読める状態にして、その後で反論すべきは反論すればいい。言説には言説で反論するのが成熟した社会だろう。出版社に抗議して委縮させるのは極めて卑怯な行為だ。
シュライアーさんの著書については心と体の性が一致しないトランスジェンダーの状況をとらえていると評価する声もある。英タイムズ紙や英エコノミスト誌の「年間ベストブック」に選出されるなど「賛」がある。日本ではヘイト本扱いでよいのか。
論争的な本だからこそ、両極の意見がある。議論が不要となれば、学問の存在意義すらなくなる。賛否両論の「否」だけをとらえて、左翼系の市民団体が街宣活動を行うような事態を許せば、今後出版社は委縮して論争的な書籍を扱いにくくもなる。
トランスジェンダーの問題を巡っては、懸念を発すれば、擁護する側から議論が封殺される傾向にある。トランスジェンダーを増やそうとして、何か知られたくない不都合な真実でもあるのだろうか。シュライアーさんの著書を通じ、当事者の情報公開を行えば、トランスになるにしても、より納得してなれるだろう。
(聞き手 奥原慎平)