KADOKAWAが心と体の性が一致しないトランスジェンダーの若者を取材した米ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアーさんの著書「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」の刊行を中止したことについて、国際政治学者で福井県立大名誉教授の島田洋一氏が8日、産経新聞の取材に応じた。
著書を巡っては、反対派が出版中止を求めるキャンペーンをSNS(交流サイト)で展開しており、島田氏は「伝統社会を切り崩そうと考える人々にとっては、不都合な真実が描かれている。トランスジェンダーイデオロギーが浸透する前に警鐘を鳴らすべき」と発刊を訴えた。要旨は以下の通り
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米国で2020年6月に発売されたシュライアー氏の原書に目を通したが、10代の少女に与える「トランスジェンダーイデオロギー」の影響に対し、実証的な取材が行き届いた本だった。私も著書で、原書のポイント紹介に数ページほど充てている。
その引用を見たKADOKAWAの担当編集者から数カ月ほど前に連絡があり、国内で翻訳本が刊行されれば、推薦することになっていた。評価すべき内容だからだ。
今月3日早朝、「なんとか出版できる」と連絡があった。安堵した矢先の5日夜に発売中止が決まった。出版中止を求める圧力めいた電話などで追い詰められていたようだった。
ただ、米国でも著者のシュライアー氏や出版社に対する「攻撃」はあったが、彼女らは反論し、耐えていた。KADOKAWAの担当編集者は努力しただろうが、その上層部が圧力に屈したのであれば、ふがいなく情けないし言語道断だ。
シュライアー氏の議論はファクトに基づいている。米民主党が提出したLGBT法案の米上院審議で共和党は公聴会に公述人としてシュライアー氏を呼び、著書の内容を尋ねている。米LGBT法の成立見送りに貢献した人物ともいえる。
著書は米国などでトランスジェンダーを称する少女が急増した背景について、当事者や医師、心理カウンセラーらを丹念に取材されている。思春期特有の不安や症状について、「流行り」にのっとった形で、「性自認の違和感」を訴えれば周囲の大人からヒロイン扱いされる。乳房の切除やホルモン治療を選択した結果、その先に後悔や体の不調を訴える事態が待っている。
常識的な性別の捉え方を古い偏見と位置づけることで従来の家族制度を壊し、伝統社会を切り崩そうと考える人々にとっては、不都合な真実が描かれている。
日本社会はこうした事態には至っていない。トランスジェンダーイデオロギーが浸透する前に警鐘を鳴らす上でも出版すべき本だった。KADOKAWAは発売を告知していたのだから、急転直下取りやめとした理由をより丁寧に説明すべきだ。ぜひどこかほかの出版社で出してほしいと思う。
(聞き手 奥原慎平)