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テレグラムCEO逮捕、マスク氏批判 SNS規制論議に影響

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浅川直輝さんの投稿浅川直輝

【ウィーン=田中孝幸】約10億人の利用者を擁する通信アプリ「テレグラム」の創業者で最高経営責任者(CEO)のパベル・ドゥーロフ氏(39)が24日、フランス警察に逮捕された。複数の仏メディアが報じた。テレグラムを利用した犯罪を放置した疑いを持たれている。

ロシア生まれの同氏は2013年にテレグラムを設立。ロシアやウクライナなど旧ソ連諸国で多数の利用者を得て、世界の主要SNSの一つに育てた。月間アクティブユーザー数は9億5千万人に達する。

テレグラムは優れた暗号技術を持ちセキュリティー性や秘匿性が高い。22年に始まったロシアのウクライナ侵略では双方が情報戦の主要なツールとしてきたとされる。一定時間が経過するとメッセージが消える機能があり、資金洗浄やポルノなど犯罪の温床になっているとの批判もある。

報道によると、ドゥーロフ氏はパリ近郊のルブルジェ空港にプライベートジェットで到着後、滑走路で拘束された。仏司法当局は犯罪予防に向けた措置を怠ったことによる詐欺などの共謀の容疑で指名手配していた。

ドゥーロフ氏は自らが売却した別のSNS「フコンタクテ」を巡るロシア当局の協力要請を拒否し、14年に同国を離れた経緯がある。17年にはテレグラムをアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに移転。フランスやUAEの国籍も持つとされる。

同氏はSNSや通信アプリなどプラットフォームのあり方として「自由で中立であるべきだ」と主張してきた。SNS側の判断で不適切な投稿を削除したり、注意書きを付け加えたりする「コンテンツモデレーション(投稿監視)」に否定的な立場でも知られた。

テレグラムは25日「プラットフォームの悪用の責任を、その所有者が負うという主張はばかげている」との声明を出した。

ネット犯罪を放置したとの理由でプラットフォーマーの創業者を逮捕するのは異例だ。表現の自由という観点からネットのコンテンツ規制強化に反対する米起業家のイーロン・マスク氏は24日のX(旧ツイッター)への投稿で幾度もドゥーロフ氏の逮捕を批判した。

今回の事件で焦点になったモデレーションのあり方や政府の介入の是非を巡っては、世界的な議論になっている。

米国では21年1月の連邦議会議事堂の襲撃事件後、フェイスブックなどがトランプ前大統領のアカウントを停止した。これへの反発で一部の共和党寄りの州がモデレーションを規制する州法を可決。米連邦最高裁は規制の是非が争われた訴訟で、政府による介入に慎重姿勢を示したうえで、審理を下級審に差し戻した。

今後の事件の推移によっては、モデレーションを巡る米大統領選での論戦にも影響が出る可能性がある。大統領選でトランプ氏の支持に回ったロバート・ケネディ・ジュニア氏はドゥーロフ氏の逮捕を受けてXに「言論の自由を守る必要性はかつてないほど差し迫ったものになっている」と投稿した。

今後、テレグラムの運用指針が変更されれば、ロシアとウクライナの情報空間での戦いに影響が出ると予想される。

米外交政策研究所のロシア安保専門家であるロブ・リー氏は24日のXへの投稿で「テレグラムのポリシーが大幅に変更されると、この戦争に関する情報領域に大きな影響を与える可能性がある」と指摘した。

ロシア軍の将官や兵員に広く利用されていただけに、今回の逮捕には政治的な背景もあるとの見方も出ている。ロシアメディアによると、ロシア下院のダワンコフ副議長は「逮捕は政治的動機によるものであり、利用者の個人情報にアクセスするための手段である可能性がある」と非難。ラブロフ外相に釈放努力を求める書簡を送った。

ロシアでは欧米を非難するプロパガンダに利用しようとする動きもみられる。ロイター通信によると、ロシア下院のブティナ議員は今回の逮捕は「欧州で言論の自由が死んだことを意味する」と語った。

調査会社コインマーケットキャップによれば、テレグラムが開発に関与する暗号資産(仮想通貨)TONはこの2日で約18%下落した。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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    浅川直輝日経BP 編集委員
    分析・考察

    テレグラムはSNSというよりメッセージアプリで、FacebookやXに代表される投稿•公開型SNSのようなコンテンツモデレーションは困難です。メッセージは端末と端末の間で暗号化され、一般にはプラットフォーム事業者もメッセージの中身は閲覧できません。 こうした通信サービスにおいて、テロ行為から児童ポルノまで犯罪抑止のため当局あるいは第三者機関による介入をどこまで認めるか、言論の自由や通信の秘密をどこまで尊重するか、世界中で議論が始まっています。日本も決してこうした議論とは無縁ではありません。

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