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満点人間から創造は生まれない・小説家の楡周平氏

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楡周平氏(59)はテレビドラマにもなった「再生巨流」に始まる物流3部作のほか、大企業の衰退を描いた作品など様々な経済小説を著してきた。そこには米イーストマン・コダック時代の経験が反映されている。話では日米の働き方の違いとともに大企業志向への警鐘を鳴らした。

――再生巨流は今の宅配便の問題を予言していたかのようです。

「米アマゾン・ドット・コムや楽天が日本でインターネット通販を始めたころに書きました。物流は単純作業だと思って日本人は行きたがりませんが、あらゆる産業で最も大切。『前線が偉くて後方支援の地位は低い』は大きな間違いです」

「ヤマト運輸はサービスレベルを上げてパンクしかかりました。日本人は得意分野で突き進み、自分たちの武器は何で、どんなビジネスができるのかに目が向きません」

――コダックではどんな仕事をしましたか。

「日本の物流を見直してマーケティングに反映させることを長くやり、その後はデジタル事業のマーケティング。いずれも誰もやっていない答えのない仕事です。米企業はアイデアを出す人を買います。日本では100点満点から失点しない人が大会社のホワイトカラーや官公庁のキャリアになります。米国は満点の概念がなく120点でも130点でもつき、求められた以上を出し続けないと生き残れません」

「午前7時には出社して自分の仕事に2時間集中しました。会社で最も出社が早かったと思います。必要な時は徹夜もしましたが、ふだんは午後5時には退社。米本社の人たちはもっと割り切っていて午後4時くらいに帰っていましたね」

――「外資な人たち」で指摘した「奉仕の精神」などが日本人の働き方に影響していませんか。

「日本人のメンタリティーは愛社精神と大会社志向の点で変わっていません。産業そのものがどうなるか分からない時代なのに大学の就職説明会では親が大企業と中小企業の生涯収入の差を尋ね、就職人気ランキングの上位は同じ顔ぶれが並びます。しがらみを抱え、新しいことへの身動きが取れない大企業はこれから本当に危ない。デジタル化の波にのまれたコダックのように『来るものは来る』。親も若い人も職業観を変えなければ」

――近作の「ぷろぼの」では「仕事と上司は選べない。それがサラリーマンだ」と言い切りました。

「希望していた仕事と違うと言う人たちがいると聞きます。何をやるかは会社が決めるのです。やれと言われたら歯を食いしばって働くしかない。それが大前提です」

――政府は「働き方改革」で様々なメニューを打ち出しています。

「残業規制では残業手当が付くのがいけません。生活給を目当てに会社に残る人がいるからです。ホワイトカラーは政府が主導しなくても給料を上げて年俸制にしたら問題は解決するのでは。経営者が必要以上に働かせたら、交流サイト(SNS)で拡散すれば『ブラック企業』の評判が立ち、安全網になります」

「地方紙の連載では物流倉庫で働く人を扱っています。日本は非正規社員にもっと目を向けるべきです。同一労働同一賃金では、本人が望めば1年以上雇用した非正規社員を正社員にしたらどうでしょう。経営者にもリスクがあるので1年は試用期間にしてパフォーマンスを見るのです」

――作品には地方や零細店も多く登場します。都市と地方の格差にも関心があるのでしょうか。

「地方は壊死(えし)が始まっています。東京のホワイトカラーの働き方より、魅力的なビジネスモデルを作って早急に地方に安定した職業を創出する必要があります」

「小説の構想でもありますが、丼物やカレーライスなどの大衆食を冷凍食品にして世界に出せば日本の上質なコメや野菜、肉も求められるのでは。いわゆる6次産業を通じて1次産業が活性化し、地方に人が住み、本来の家族が生まれます。1軒のラーメン店も世界に飛躍できます。1食で何万円も取らなくても大きなビジネスになる。同じ分野でも考え方ひとつで歩む道は違ってきます。これからの人たちは常に2つの道を考えて仕事を探していくべきです」

 ■ 記者の読み方 ■ ■

楡氏の作品には同族経営や新興のインターネット系、合理性を追求する外資系など多様な出自の企業が登場し、過酷な現場労働、リストラと転職、介護などの様々な境遇が描かれる。本人の話で経験がちりばめられていることを再認識したが、克明な描写の裏には徹底した取材もあるはずだ。

疲弊する地方の話に及んだ際、「外国人労働者が増えれば長期的に日本語は英語に次ぐ第2言語になりかねない。海外発の英語情報が主になって日本のマスメディアも出版社も作家も発信できなくなり、果ては日本語による過去の知の所産にアクセスできなくなる」と話した。危機と責任を感じた。(小木曽由規)

 にれ・しゅうへい 慶大院を修了し、米イーストマン・コダックの日本法人に勤務。在職中の1996年に犯罪小説「Cの福音」でデビューし、退社。2005年には物流会社を舞台にした「再生巨流」で経済小説に領域を広げ、「象の墓場」や「異端の大義」などを著した。岩手県一関市出身。

[日経産業新聞 7月20日付]

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