令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書
出入国在留管理庁調査チーム(令和3年8月10日)

第3 事実経過
1 収容に至る経緯等

(2) 収容に至る経緯等

A氏【注1】は,令和2年8月19日,静岡県内の警察署管内の交番に出頭し,不法残留により警察官に現行犯逮捕された。その際,A氏は本邦に身寄りがない旨供述し,その所持金は1,350円であった。A氏は,同月20日,入管法第65条の規定により警察から名古屋局入国警備官に引き渡され,収容令書に基づき,名古屋局の収容施設に収容された。A氏は,出頭の経緯について,同日の違反調査における入国警備官による取調べ【注2】において,「 8月19日,恋人に家を追い出されて,ほかに帰るところも仕事もなかったので,スリランカに帰国したいと警察に出頭したところ,不法残留しているので逮捕された。」旨供述した【注3】。

【注1】A氏は、ウィシュマ・サンダマリさんのことを指す。

【注2】シンハラ語の通訳あり。

【注3】B氏(ウィシュマさんの恋人)は,調査チームの聴取に対し,「A氏が警察に出頭する2日前頃,A氏から『もう一度やり直してほしい, 一緒にスリランカに帰ってほしい。』と言われた。既に日本人女性と交際していたため,私がこれを断わると,A氏が怒り出しけんかになったが,A氏に答えを2日ほど待ってほしいと伝えると,けんかが終わった。私がA氏を追い出したことはなく, A氏は,家を出て行った当日朝も,仕事に出かける私を見送っており,特におかしな様子はなかった。」旨を述べている。

また,A氏は,不法残留の経緯について同取調べにおいて,「学費が払えず,お金を貯めようと2018年(平成30年)4月から学校へ通わず働き始めた。同年7月頃,学校に戻ろうと思ったが,学校からもう戻れないと言われた 【注4】。

【注4】A氏が在籍していた日本語学校に確認したが,2018年4月下旬頃以降,A氏と連絡が取れたことはないとの回答であり,A氏が同年7月頃に同校へ連絡を取った事実は確認できなかった。また,同校によれば,A氏の学費は,入学時(2017 年7月)に1年分が納入されているとのことであった。

その後は在留期限まで働いてお金を貯めようと思い帰国せず,在留期限が近づくと,もう少し働きたいと弁護士【注5】に相談をし, 難民申請の話をされたので,難民申請をしたが,難民として認められず,在留期間の更新が不許可となったが,まだ日本で働きたいと思い不法残留した。」旨供述した。

【注5】A氏が供述する「弁護士」を特定することはできず,弁護士の助言を受けた事実についても確認することはできなかった。


A氏は,令和2年8月21日,不法残留による退去強制令書の発付を受け,死亡した令和3年3月6日までの間,名古屋局の収容施設に収容されていた。

2 収容時の状況等(健康状態等を除く。)

(1) 送還に向けた取組状況等

収容開始当初,A氏が入国警備官に対してスリランカへの帰国を希望する旨述べていた【注6】ことから, 名古屋局では, A氏の送還に向けた取組を開始した。

【注6】A氏は,入国警備官に対し,「1日も早くスリランカに帰国したいです。」旨述べていた。

A氏が収容されていた期間中,新型コロナウイルス感染症の影響により,スリランカ行きの定期便は就航していなかったため,名古屋局の関係職員は,A氏を臨時に運航されるスリランカ行きの帰国便に搭乗させて送還することを検討し,A氏の承諾を得て,在京スリランカ大使館等の関係機関と連絡を取り合い,A氏を臨時便搭乗希望者リストに登載するなどした。しかし,A氏は,所持金が乏しく,退去強制令書の発付を受けた直後,執行部門の入国警備官に対し,「本国の家族とは連絡がつかず,日本には友達もいない,恋人に家から追い出されたので,恋人の所在も分からない。」旨述べていたことから,当時,臨時便搭乗の条件である航空機代金及びスリランカ帰国後の隔離施設(ホテル)の利用代金等の合計約20万円を直ちに工面することは困難な状況であった【注7】。

【注7】B氏は,調査チームの聴取に対し,「私は,令和2年11月27日に名古屋入管で仮放免を許可された後,スリランカのA氏の母親に3回電話をかけ,A氏を助けてほしいと伝え,自分の連絡先をA氏の妹達に伝えるように頼んだ。しかし,A氏の母親には断わられ,A氏の妹達からも連絡はなかった。」旨供述している。

そこで,名古屋局では,国費による送還も検討したが,前記費用のうち,航空機への搭乗手続時の前払いが条件とされている隔離施設の利用代金等については,国費負担の場合は請求書による後払いが一般的であったため,これを事前に現金で支出するには会計手続上の調整等を要する状況であった。そのため,名古屋局は,在京スリランカ大使館担当者に,ガバメントローン(相手国政府等による帰国費用の貸借制度)の利用や無料の隔離施設利用の要請等を行ったが,同担当者から,ガバメントローンは存在せず,無料の隔離施設はスリランカ国内の感染者等に既に利用されており,帰国者に利用させることは困難であるとの回答がなされた。名古屋局では,本国のA氏の家族に隔離施設の利用代金等の工面を求めるため,令和2年12月15日,在京スリランカ大使館に対し,A氏の家族の所在調査と連絡先の確認を依頼した 【注8】。

【注8】執行部門の職員は,令和2年12月15日,スリランカ大使館に電話をし, A氏の家族の連絡先の確認を依頼した。令和3年1月頃に執行部門の職員がスリランカ大使館に問い合わせたところ,大使館から,A氏の家族の連絡先は判明しなかったとの回答がなされた。

ところが,A氏が同月中旬頃,帰国希望意思を撤回して本邦在留希望に転じたため,その後,臨時便による送還に向けた動きは滞るようになった。A氏は,同月21日,入国警備官に対し,本邦在留希望に転じたことについて,「私はもう帰国したくなくなった。私は今までとても辛い生活を送ってきた。日本で交際していたスリランカ人の恋人には殴られ続け,母や姉( あるいは妹)【注9】からは連絡を絶たれた。スリランカ人なんて嫌いだ。」旨を述べた。

【注9】当該入国警備官はA氏の発言内容を「母や姉」 と記録したが,これまで把握されている限り,A氏には妹2名がいるものの,姉の存在は確認されておらず,当該入国警備官は,調査チームの聴取に対し,姉と妹を聞き間違えたのかもしれない旨述べている。


 

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