【ライヴレポート】geek sleep sheep、ストレイテナーと対バン「幸せな3分間でした」

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geek sleep sheepが6月7日、東名阪ツアー<tour geeks 2015>のファイナル公演を赤坂BLITZにて開催した。

◆geek sleep sheep 画像

同ツアーは各会場ごとにゲストアーティストを迎え、対バン形式で行われるもの。愛知・名古屋ELLにヒトリエ、大阪・梅田クラブクアトロにPeople In The Box、そしてここ東京・赤坂BLITZにはストレイテナーが招かれた。なお、対バン形式のツアーというgeek sleep sheep初の試みに加え、3公演にはそれぞれカバー楽曲をセットリストに組み込むという企画を実施。大阪公演ではPeople In The Boxの山口大吾とyukihiroによるツインドラム共演が実現するなどサプライズも満載なツアーだが、その最終日は、やはり多くの化学反応が生まれる結果となった。

▲ストレイテナー

開演時間の18時に場内が暗転。ギターのフィードバック音が鳴り響くと、「The World Record」からストレイテナーのステージがスタートした。22インチのバスドラムから発せられるナカヤマシンペイの4つ打ちビートは重くタイトだ。いわゆるダンサブルな4つ打ちとは異なる攻撃力の高いビートが、のっけから会場を煽りまくる。ひなっちの躍動するスラップや大山純の16ビートを基調としたシーケンスフレーズなどアンサンブルも高度。インターでホリエアツシが「一緒に声を上げませんか!?」と語りかけると、場内に「oh~ohoh~!」のシンガロングが轟いた。さすがは巨大フェスのメインステージを幾度となく務めてきたバンドだけに、パフォーマンスや演奏力に隙がない。わずか1曲で赤坂BLITZを灼熱地帯に変えてしまった。

▲ストレイテナー/ホリエアツシ(Vo&G, Key)

「<tour geeks 2015>にお誘いいただきました。俺たち、ストレイテナーといいます。よろしくお願いします」。ホリエによる一発目のMCに続いて演奏されたナンバーは「羊の群れは丘を登る」。おそらく“羊”という単語がgeek sleep sheepというバンド名に入っているからこその選曲だろうか。イントロのギターリフが鳴らされただけでフロア全体が沸く。さらには読売テレビ「キューン!」テーマ曲「シンデレラソング」が披露されるなど会場の熱気は上昇気流を描くように高まるばかり。

▲ストレイテナー w/ momo kazuhiro(geek sleep sheep)

「geek sleep sheepから、momo kazuhiro!」

中盤にはホリエがmomoをステージに招き入れるというサプライズも。赤いムスタングを抱えて登場したmomoは、シンペイが繰り出したリズムに合わせるようにセッションを。シンペイが16ビートを刻むと、そのサウンドがやがて彼らの代表曲のひとつ「KILLER TUNE」のイントロリフへ変化した。同曲の2番ではmomoがメインヴォーカルを務めたほか、大山純のギターソロにオブリをかぶせるなど、5人編成の「KILLER TUNE」が鮮やかで烈しく、新鮮さをともなって届けられた。曲の演奏が終わると颯爽とステージを去ったmomoの姿も潔い。

▲ストレイテナー/大山純(G)

前述したように<tour geeks 2015>は、3公演それぞれカバー楽曲をセットリストに組み込むという企画を実施している。この夜のカバーテーマは“90’s UK”だ。90年代英国ロックバンドからの影響も公言しているストレイテナーだけに、どんなカバーを披露してくれるか、その選曲に注目が集まるところ。ステージ中央にセットされたキーボードスタンドにホリエが移動して披露されたナンバーはSPIRITUALIZEDの「Electricity」だった。フロアタムの重いリズムと8ビートの刻みがどこまでも疾走するアレンジはサイケな原曲とは異なるもの。BPMも上げてスピード感に溢れた完全ロックアレンジが客席をアッパーにさせた。

▲ストレイテナー/日向秀和(B)

「SPIRITUALIZEDの「Electricity」という曲でした。<tour geeks 2015>のコンセプトで「何かカバーをやれ」という先輩からの命により、今日この曲を、すごい久しぶりです。momoさんはさっきロックスターのように出てきて、去って行きましたけどね」──ホリエアツシ

「東洋のジョニー・デップでしょ。もう10年くらい前からオレら、そう呼び続けてるもんね。イヤモニをしてるんですけど、ここからmomoさんの声が聞こえてくる「KILLER TUNE」が幸せな3分間でした。あと私的には、ドラムの大先輩のyukihiroさんが楽屋の扉の向こう側にいらっしゃるというだけでもう。事前に御挨拶はさせていただいたんですけど、通常、対バンだと出番直前に“先に行ってきます”って挨拶してからステージに向かうんですね。yukihiroさんの楽屋に行ったんですが、扉の中からパッドを叩く音だけが聞こえてきて。どうしてもノックができなかったんです。結局は挨拶が出来なかったので、終演後に“超よかったです!”という感想を取っかかりに、yukihiroさんとおしゃべりできればいいなと思ってます!」──ナカヤマシンペイ

▲ストレイテナー/ナカヤマシンペイ(Dr)

と、先輩へのリスペクトに笑いを交えながら語る2人へ場内から拍手喝采が。さらには「345ちゃんの透明感のある歌声も楽しみ。今日はお楽しみが盛りだくさんです!」と煽るホリエのMCに客席が大きく反応した。「ストレイテナーのバラードソングを聴いてください」との紹介で披露された「シンクロ」はひなっちが奏でる和音とホリエの歌から静かに始まるナンバー。それまでの興奮を高める楽曲とはまた違った優しい肌触りが心地よい。

▲ストレイテナー

後半はホリエがアコースティックギターを手にした「彩雲」、最新シングルにして6/8拍子を巧みに織り交ぜた「The Place Has No Name」、彼ら本来の持つグッドメロディはもとより、ワウを使ったソロがエモすぎる「冬の太陽」と人気曲を連発。「“BLOW! THE MELODIC STORM”。良かったら一緒に歌ってください」とラストナンバーの「Melodic Storm」でサウンドの嵐を巻き起こし、約1時間全11曲のステージに幕を閉じた。対バン形式の限られた時間の中で、デリケートな感情の揺れまでもしっかりと音に感じさせてくれるアーティストは少ない。ストレイテナーは、その数少ないバンドのひとつだ。

舞台転換時にはyukihiroとシンペイのドラムセットが横並びになるレアな瞬間もあって、おそらく会場のドラムマニアたちがニヤリとしたに違いない。また、機材がセットされたgeek sleep sheepのステージ上は3人の機材間の距離が非常に近い。これはおそらくどんな広いステージであろうと変わらぬ距離なのではないだろうか。会場の大小は関係ない。いつも同じスタンスで、ただ最高のサウンドを鳴らすだけ。そんな彼らの意気込みが伝わるようなセッティングだ。

▲geek sleep sheep

geek sleep sheepの登場SEはThe Velvet Undergroundの「Candy Says」。アルバム『candy』をリリースしたばかりの彼ららしい粋な選曲に、またニヤリとさせられる。yukihiroはドラムセットに座るなり、スティックを回しながらmomoと345とアイコンタクトをとった。ハイハットを左右の手で交互に4つ叩くとオープニングナンバー「feedback」のスタートだ。そのイントロで「we are geek sleep sheep!」と叫んだmomoにフロアが大歓声で応えた。

▲geek sleep sheep/momo kazuhiro(Vo&G)

以前のBARKSインタビューでmomoは、「前作よりも意識的に方向性を絞ったようなところもあるんです。個人的にはギターをもっとガンガン弾きますって(笑)。そんなにハードすぎず、ノイジーなギターだけど美しい」と2ndアルバム『candy』について語ってくれた。オープニングからの2曲はまさにそれ。momoのスリリングなギターリフを核にしたオルタナサウンドがうねりを上げると、345の16ビートを意識したタイトなベース音が乗り、yukihiroのドラムが重みと疾走感に満ちてどこまでも高揚していく「feedback」。続く「planet ghost」では、深いリヴァーブの掛かったシューゲイザーなギターサウンドが無重力を描くように漂う。ステージからは5つの照明が天井へ向けて放たれ、それを反射したミラーボールの光が場内を駆け巡る演出も楽曲の持つ浮遊感を演出するのに一役買っていたようだ。

▲geek sleep sheep/345(Vo&B)

そして注目は「lost song」にあった。yukihiro作詞作曲による同曲はシンセの味付けが施された音源が印象的だが、ライヴの場ではNO SYNTHESIZER。完全3ピースによる生バンドアレンジで届けられた。他人にお任せ的な邪念のない必要最小限のトリオアンサンブルは演奏に高いテンションを加え、楽曲本来の哀愁をより際立たせるニューウェーヴサウンドが儚く美しい。シーケンサーや打ち込みでは太刀打ちできないほどシンプルで強靱なリズムはライヴならではのものだ。

▲geek sleep sheep/yukihiro(Dr)

「<tour geeks 2015>へようこそ! 『candy』っていう2ndアルバムをリリースしまして、東名阪ツアーを廻ってきました。甘くて、クセになる、いいアルバム。ライヴ向きの曲をたくさん作りましたから。今日はその中から聴いてもらえたら」──momo kazuhiro

その言葉通り、この日のセットリストはほぼアルバム『candy』収録曲から。静寂と狂気の狭間でピンと張り詰めた「Candy, I love you」、廃退的な美しさを持つ「Addicted」など音数の少ない楽曲にこそ現在のgeek sleep sheepのタフさが色濃く映し出されるような気がして、そのエンディングパートで3人が向かい合って演奏する姿に1音1音の凄味と重さが感じられた。そしてステージはお待ちかねのカバーコーナーへ。

▲geek sleep sheep

「<tour geeks 2015>の初日名古屋はヒトリエさんに出てもらって、一緒に何かやろうと思ったんだけど「緊張する」ということで(笑)、打ち上げで最高に盛り上がりました。大阪はPeople In The Boxの山口大吾が乱入してくれて、一緒にカバーをやりましたね。今回のツアーは各地にカバーテーマというものを設けまして、名古屋が“ポストロック”、大阪が“80’s UK”。そして今日が“90’s UK”。“90’s UK”といえばこの人、という方をお迎えしましょう。ストレイテナーのホリエアツシ!」──momo kazuhiro

「僕の青春時代が90年代で。もっぱら90年代のUKロックに影響を受けて、こんな風になっちゃいました(笑)。2000年代はUSを聴いていたんですけど、90年代の終わりくらいの暗~いUKロックが染みついているので。今日セッションさせていただく曲は、geek sleep sheepとしてカバーしたことのあるリストに入っていた曲です」──ホリエアツシ

そのリストの中からホリエが選んだというナンバーは、momo曰く「geek sleep sheepが初めて3人でスタジオに入って演奏した曲でもあるんですよ。yukihiroさんがチョイスした曲」とのこと。さらにホリエは、「そのバンドが僕の青春なんですよ。東京に出てきて初めて観たライヴが、Mansunで」と続け、偶然とも必然とも言える楽曲セレクトの意図を明かした。そして演奏された「Wide Open Space」はメインヴォーカルをホリエが担当。momoがリードギターとコーラス、345がベースとコーラスを務めるなど4人編成のgeek sleep sheepという贅沢なアンサンブルを響かせた。

▲geek sleep sheep/momo kazuhiro(Vo&G)

ホリエがステージを降りた後もカバーは続き、Curveの「Horror Head」を披露。Curveと言えばacid androidの1stミニアルバムにヴォーカリストのトニ・ハリディが参加するなどyukihiroとは親交のあるアーティストだ。轟音の壁が厚いシューゲイザーサウンドの中、345の透明な歌声が爽やかに響き渡った。ちなみにこの日のmomoは『candy』リリース前のインストアイベントで初御披露目をしたマッチングヘッドの赤いジャガーを1曲を除く全曲で使用。オルタナやシューゲイザーの代名詞的なギターだけに、現在のgeek sleep sheepサウンドを象徴するようにも感じられて味わい深い。

▲geek sleep sheep/345(Vo&B)

ライヴ恒例“ジャパネット345”のグッズ紹介コーナーを挟んで、後半は「不思議な不思議なサーカス団の歌を唄います」というmomoのMCから「Strange Circus」へ。イントロやインターに7/8拍子を配した疾走ナンバーは、しかしmomoと345のユニゾンによるメロディラインがポップなロックソング。フロアタムのビートやタム回し、サビの後半で数小節だけ飛び出す4つ打ちなど、起伏が激しいyukihiroのリズムも楽曲をカラフルに演出する。とりわけそのエンディングでのドラムプレイは感情がレッドゾーンに突入したかのように打ち鳴らされて激しい。さらには「kaleidoscope」「kakurenbo」と怒涛のチューンを連発。「ライヴ向きの曲をたくさん作りましたから」というmomoのMC通り、ある意味バンドとオーディエンスとのテンションの高く、そしてピースフルな一体感がそこにあった。

▲geek sleep sheep/yukihiro(Dr)

アンコールに応えて再びステージに登場するなり、3人それぞれがノイズを奏でた。「MOTORCYCLE」というmomoの叫びからスタートした同曲は、キレ味の鋭さとずっしりとした重さを兼ね備えたビートが凄まじい。いきなり野球に例えて恐縮だが、そんな球種を持つピッチャーがいれば誰も打ち返すことなど不可能な無敵のサウンドが目の前で繰り広げられる。もともとはLOVE AND ROCKETSのカバー曲ではあるものの、もはやgeek sleep sheepオリジナルと言いたくなるほどの完成度の高いサウンドにフロアが身を委ねる光景が印象的なものとなった。

▲geek sleep sheep

そしてツアーを締めくくるナンバーは「hitsuji」。ラストナンバーとしてお馴染みとなった同曲は、会場の熱気をクールダウンさせるように優しく響く。万感の思いをこめたラストソングにフロアの合唱も混ざり合い、会場全体をひとつにするバンドとオーディエンスの理想的な関係がそこに築かれた。すべての演奏を終え、ステージからの去り際に左手を挙げて歓声に応えたyukihiro。その姿にツアーの充実度がうかがい知れて、全1時間半全13曲のgeek sleep sheepのステージ、そして東名阪ツアー<tour geeks 2015>が大盛況のうちに幕を閉じた。

▲geek sleep sheep

バンドは8月22日、CULUB CITTA'にて<confusion bedroom vol.4 with candy>と題したライヴを開催する。同ライヴは、2014年10月にLIQUIDROOM EBISUで行われた<confusion bedroom vol.3>以来、約11ケ月ぶりのワンマン。ライヴタイトルにもあるように、ニューアルバム『candy』の世界観をフルスケールで体感できる場となりそうだ。

取材・文◎梶原靖夫(BARKS)
撮影◎河本悠貴(geek sleep sheep)/石川浩章(ストレイテナー)

■東名阪ツアー<tour geeks 2015> 2015年6月7日@赤坂BLITZセットリスト

【ストレイテナー】
01.The World Record
02.Super Magical Illusion
03.羊の群れは丘を登る
04.シンデレラソング
05.KILLER TUNE(w/ momo kazuhiro)
06.Electricity(Spiritualizedカバー)
07.シンクロ
08.彩雲
09.The Place Has No Name
10.冬の太陽
11.Melodic Storm

【geek sleep sheep】
01.feedback
02.planet ghost
03.lost song
04.Candy, I love you
05.Addicted
06.Wide Open Space(w/ホリエアツシ Mansunカバー)
07.Horror Head(Curveカバー)
08.night cruising
09.Strange Circus
10.kaleidoscope
11.Kakurenbo
encore
en1.MOTORCYCLE
en2.hitsuji



■<confusion bedroom vol.4 with candy>

2015年8月22日(土)神奈川・川崎 CLUB CITTA'
開場17:00 / 開演 18:00
チケット料金:¥4,300(税込)※入場時ドリンク代500円必要
※高校生以下は学生証提示で当日会場で500円のキャッシュバックを受けることができる学割サービスを実施
(問)DISK GARAGE  (TEL) 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)

■2ndアルバム『candy』

2015.5.20 on sale
【初回限定盤(CD+DVD)】VIZL-815 ¥3,800(+tax)
【通常盤(CD)】VICL-64341 ¥2,800(+tax)
1. kaleidoscope (Words & Music : kazuhiro momo)
2. feedback (Words & Music : kazuhiro momo)
3. planet ghost (Words & Music : kazuhiro momo)
4. night cruising (Words : kazuhiro momo, yukihiro/Music : kazuhiro momo)
5. rain song (Words : geek sleep sheep/Music : kazuhiro momo)
6. floating in your shine (Words : 345/Music : kazuhiro momo)
7. lost song (Words & Music : yukihiro)
8. happy end (Words & Music : kazuhiro momo)
9. Addicted (Words & Music : kazuhiro momo)
10. Candy,I love you (Words : kazuhiro momo, yukihiro/Music : kazuhiro momo)
11. kakurenbo (Words : kazuhiro momo/Music : yukihiro)
12. color of dream (Words : 345/Music : kazuhiro momo)
-BONUS TRACK-
MOTORCYCLE(初回限定盤のみ収録・LOVE AND ROCKETSのカヴァー)
<初回限定盤DVD>
1. kaleidoscope(Music Video)
2. feedback(Music Video)
3. hitsuji(LIVE at LIQUIDROOM)
4. Weekend Parade(LIVE at LIQUIDROOM)

◆geek sleep sheep オフィシャルサイト
◆geek sleep sheep オフィシャルFacebook
◆geek sleep sheep オフィシャルTwitter
◆ネットラジオ『geek sleep sheepの真夜中にお腹が空いたら』
◆geek sleep sheep オフィシャルグッズ購入ページ
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【ライヴレポート】HYDE、ツアー<[INSIDE] LIVE 2024>完遂「次、デカいところで待ってるからな」

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6月22日の東京・Zepp Haneda(TOKYO)よりスタートしたHYDEのツアー<HYDE [INSIDE] LIVE 2024>が、本日8月25日の福岡・Zepp Fukuokaでファイナルを迎えた。このレポートではツアー4日目の6月26日、東京ファイナルとなったZepp Haneda(TOKYO)公演の模様をお届けする。

◆HYDE 画像

ステージを覆うスクリーンに時刻がデジタルで電光掲示され、カウントダウンの末、ライヴが始まるのはお馴染みのオープニングだが、6:66(19時6分)を示した瞬間、その数字がバラバラに散っていった。今思えばそれは、時を忘れさせ、異次元へと誘っていくコンセプトを象徴していたのかもしれない。

Zepp Haneda(TOKYO)公演はツアー序盤ながら、HYDEの登場シーンから度肝を抜かれ、思わず、あっ!と声が零れた。ステージ上だけではなく、地下に潜んでいる禍々しい魔物を呼び起こして繰り広げられる、摩訶不思議なサーカス。HYDEの内なる世界を露わにし、オーディエンスの心の内にあるものをも曝け出させるような、特別な一夜。その幕開けを予告するかのような登場シーンだったのだ。


「ライヴハウスツアーへ、ようこそ。東京でのライヴハウスは今日で終わりです。悔いのないように全部出しましょう。俺たちは鏡のような存在で…分かる? 俺たちのハジけたところを見たかったら、君たちが弾けないといけない! 分かったか?」──HYDE

舞台装置のシアトリカルな虚構性で惹き付け、甘やかに挑発するような口調で語り掛けるが、求めるのはあくまでもリアルな熱狂と陶酔。HYDEは繰り返しオーディエンスを煽っていく。バンドメンバーも華のあるダイナミックなステージングでHYDEを支えていたのも今回のツアーの見どころ。メンバーが前列に出て横一列でヘッドバンギングをする場面は圧巻だった。近年のHYDEソロ曲に加え、海外アーティストのカヴァー曲を披露した場面では荒々しい超絶ロングシャウトで圧倒、会場をどよめかせた。


地獄から響いてくる断末魔のような叫びから、天使や聖母を思わせる柔らかいファルセットまで、HYDEは多彩な歌声を驚くほどの素早さで切り替えながら、次々と繰り出していった。ラウドな曲でダイバーたちがステージ目掛けて転がっていく場面はもちろん大迫力なのだが、深遠なバラードを情感たっぷりに歌い届ける真逆のシーンを織り込むことができるのは、HYDE固有の強みである、と痛感するライヴでもあった。

「いらっしゃい。今日もかわいこちゃんがいっぱい集まってる。このよく分からない芸術を理解してくれる君たちが、本当にかわいいです」──HYDE

ファンが前へ前へと押し寄せ、ひしめきあう様子を見渡し「一歩ずつ下がろうか」と気遣いながらも、ライヴの折り返し地点を迎えると、ギアを一つ上げていく。

「今日は一番すごいところを観たい。俺は狂いたいんだ!」──HYDE


HYDEがフロアに身を投じると、ステージと客席との垣根は完全に消失して混然一体としたカオスへ。低く湿ったセクシーな声で歌い始める懐かしのダークなソロ初期某曲に陶酔していると、「まだまだ足んねぇ。血が足んねぇ」とHYDEは煽り、VAMPS時代の楽曲を投下。クールに突き放すように歌い始め、やがて狂気の高笑いで締め括るまで、容赦ない轟音がZepp Haneda(TOKYO)を覆った。

ソロ楽曲もVAMPS楽曲も、取り立てて説明することなくボーダーレスにセットリストに盛り込み、全てを“HYDEの世界”として提示する。それだけでも彩り豊かで集大成的なショウだと感じたのだが、まさかあの曲を!という特大のサプライズも含まれていた。ミサの説教台を思わせる装置に立って歌うHYDEは、二階席から観ていてちょうど目が合いそうなほどの高所にいる。上半身しか見えない状態でその曲をパフォーマンスするHYDEは孤高の存在に見える。ステップを踏むこともジャンプもターンもせず、観客に届けられる情報量は単純に見積もれば半減するはずだが、むしろ掻き立てられるイメージは倍増し、今も残像が脳裏から消えない。歌唱そのものの緻密さ、表現の豊かさに加え、指一本一本の動きにも意味を感じさせるパントマイムのような所作には魔術的な眩惑力があった。


不可侵なカリスマ性でノックアウトした後は2階席に出没、ファンはもちろん大歓喜で、花が次々と咲いていくような笑顔があちこちから目に飛び込んできた。HYDEはフロアを見下ろしながら歌ったり、2階席の間を潜ってパフォーマンスしたり、とライヴハウスの会場構造と距離感を活かした演出で楽しませた。

「Thank you, Tokyo! いつもありがとう。次、デカいところで待ってるからな。ちょっと日本を廻って、更にデカくなって帰ってくるから、それまで首洗って待ってろよ!」──HYDE

感謝を繰り返し叫んで投げキッスを放ち、ステージを去ったHYDE。繰り広げられたのはステージだけでなく会場全体を使い尽くした、HYDEにしか成し得ない猛々しくも美しいロックエンターテインメントショウだった。


HYDEはこの後、数々の夏フェスで圧倒的な存在感を示すライヴを重ねながら、追加公演<HYDE [INSIDE] LIVE 2024 -EXTRA->を10月12日および13日に神戸ワールド記念ホール、10月26日および27日には幕張メッセ 国際展示場9-11ホールにて開催する。

取材・文◎大前多恵
撮影◎岡田貴之

■<HYDE [INSIDE] LIVE 2024>6月26日(水)@Zepp Haneda セットリスト

01. PANDORA
02. AFTER LIGHT
03. I GOT 666
04. DEFEAT
05. Given Up
06. TAKING THEM DOWN
07. WHO'S GONNA SAVE US
08. THE ABYSS
09. IN THIS HELL
10. 6 or 9
11. MAD QUALIA
12. SICK
13. DEVIL SIDE
14. CONT DOWN
15. MIDNIGHT CELEBRATION II
encore
16. get out from the shell
17. GLAMOROUS SKY
18. SEX BLOOD ROCK N' ROLL

■アルバム『HYDE [INSIDE]』


●配信:2024年9月13日(金)全曲配信スタート
※iTunes / Amazon:プレオーダー8月23日(金)〜
●CD:2024年10月16日(水)発売
※「完全数量限定BOX」「初回限定盤」「通常盤」
予約URL:https://hyde.lnk.to/insidePR

【UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤(CD+Blu-ray+グッズ+ブックレット)】
PDCV-1269 14,850円(税込)
※完全数量限定BOX
・外装:特別BOX (LPサイズ)
・CD:12㎝プラスチックケース+赤透明スリーブケース
・グッズ:Tシャツ (Lサイズ相当ワンサイズ / 素材:綿100%)
・ブックレット:LPサイズ
▼Blu-ray収録内容
① アルバム収録楽曲のMusic Video / Lyric Video(12曲分収録)
② <HYDE LIVE 2022>@Zepp Haneda (TOKYO)のダイジェスト映像

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
UICV-9369 6,490円(税込)
・CD:12㎝プラスチックケース+赤透明スリーブケース
▼Blu-ray収録内容
アルバム収録楽曲のMusic Video / Lyric Video(12曲分収録)

【通常盤(CD)】
UICV-1169 / 3,300円(税込)
・CD:12㎝プラスチックケース

▼配信楽曲 / CD収録楽曲(全形態共通)
01. INSIDE HEAD
02. LET IT OUT
03. PANDORA
 ※スクウェア・エニックス『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』テーマソング
04. TAKING THEM DOWN
 ※P真・北斗無双 第4章タイアップソング
05. DEFEAT
 ※PlayStation®5版『デビル メイ クライ 5 スペシャルエディション』イメージソング
06. 6or9
07. INTERPLAY (Album ver.)
08. ON MY OWN
 ※TVアニメ「MARS RED」エンディングテーマ
09. BELIEVING IN MYSELF
 ※東京マラソン2020イメージソング
10. BLEEDING
 ※東海テレビ・フジテレビ系全国ネット「嗤う淑女」オープニング曲
11. I GOT 666
12. SOCIAL VIRUS
13. LAST SONG

●購入者特典
▼MONSTERS CHANCE
CD購入者を対象とした抽選型プレゼント企画 "MONSTERS CHANCE" を実施します。賞品は、決定し次第ご案内いたします。
※MONSTERS CHANCEへの応募にはCDに封入されているシリアルナンバーが必要です。
※シリアルナンバーは、全形態共通で初回生産分に封入いたします。
▼店舗別購入者特典
・VAMPROSE STORE:A4サイズクリアファイル
・Amazon:メガジャケ
・その他店舗共通特典:A2サイズポスター
※一部お取扱いのない店舗・インターネット販売サイトもございます。詳しくはご購入ご希望の店舗へお問い合わせください。
※一部インターネット販売サイトでは特典付き商品のカートがございます。特典をご要望のお客様は詳細をご確認の上、特典付き商品をお買い求めください。
※購入特典は先着のプレゼントです。なくなり次第終了となりますので、特典をご希望の方はぜひお早めにご予約ください。

■アルバム『HYDE [INSIDE]』プレオーダーキャンペーン

【特典】
HYDE[INSIDE]デジタル壁紙:応募者全員
【応募期間】
8月23日(金) 0:00~9月12日(木) 23:59
※上記の応募期間以外はご応募いただけません。
※時間帯(締切間近は特に)によっては、応募画面に繋がりづらくなる場合がございます。あらかじめ余裕を持ってご応募ください。
【プレオーダー】
https://hyde.lnk.to/insidePR
※iTunesでの予約購入が対象となります。Apple Musicへの追加登録のみは無効となりますのでご注意ください。
※Amazonのデジタルミュージックの予約購入が対象となります。フィジカルの予約は無効となりますのでご注意ください。
【応募方法】
▼STEP 1
HYDEニューアルバム「HYDE[INSIDE]」をiTunes/Amazonでプレオーダー。
※Androidをご利用の皆様へ iTunesの予約方法:iPhone以外の端末をご利用のお客様は、PCからiTunesにてご予約いただけます。PCで予約した画面のスクリーンショット画像でもキャンペーンへの参加が可能です。
▼STEP 2
購入画面(購入履歴)のスクリーンショットを当フォームへアップロードいただき、必要事項を明記の上ご応募ください。
※Pre-Add/Pre-save画面でのスクリーンショットではご応募いただけません。
【特典について】
※10月までに対象者の方にのみメールにてご連絡いたします。
※必ず事前に[@mail.universal-music.co.jp]及び[@umusic.com]ドメイン受信設定をお願い致します。なお、お客様のメール受信環境によりメールが受信できない場合は恐れ入りますがメール再送のご対応はできませんのでご了承ください。
※特典内容は予告なく変更される場合があります。あらかじめご了承ください。
【応募サイト】
日本語: https://form.universal-music.co.jp/hyde_inside_po_jp/page/index.html
English: https://form.universal-music.co.jp/hyde_inside_po_en/page/index.html

■追加公演<HYDE [INSIDE] LIVE 2024 -EXTRA->

【兵庫公演】
10月12日(土) 神戸ワールド記念ホール
10月13日(日) 神戸ワールド記念ホール
open16:00 / start17:06
【千葉公演】
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888
10月26日(土) 幕張メッセ 国際展示場9-11ホール
10月27日(日) 幕張メッセ 国際展示場9-11ホール
open15:30 / start17:06
(問)ディスクガレージ https://info.diskgarage.com/
▼チケット
●神戸ワールド記念ホール
・アリーナスタンディング ブロック指定 ¥9,350(税込)
・スタンド指定席 ¥9,350(税込)
・[FC限定] スタンド指定席 アップグレードシート ¥14,850(税込)
※チケット料金¥9,350+アップグレード料金¥5,500(いずれも税込)
●幕張メッセ 国際展示場9-11ホール
・スタンディング ブロック指定 ¥9,350(税込)
・指定席 ¥9,350(税込)
・[FC限定] 指定席 アップグレードシート ¥14,850(税込)
※チケット料金¥9,350+アップグレード料金¥5,500(いずれも税込)
一般受付:9月14日(土)10:00〜
※未就学児童入場不可
※再入場不可
※アリーナスタンディング ブロック指定、スタンディング ブロック指定チケットは整理番号順の入場です。
※スタンディングエリアのブロック分けは、公演日当日に会場にて発表いたします。
※公演の中止及び延期の場合以外は、払い戻しの対応はいたしかねます。予めご了承の上、チケットをご購入ください。
※神戸ワールド記念ホール公演は、演出やステージセットの決定後、ステージサイド席等の販売がある場合があります。
※アップグレードシート:HYDEIST / HYDERoom会員の方がお申込みいただけます。

■ワールドツアー<HYDE [INSIDE] LIVE 2024 WORLD TOUR>

10月06日 釜山 2024 BUSAN INTERNATIONAL ROCK FESTIVAL
11月05日 台北 Zepp New Taipei
11月07日 香港 MacPherson Stadium(麥花臣場館)
11月27日 New York Brooklyn steel
11月30日 Los Angeles THE NOVO
and more...
※チケット情報等の詳細は後日発表

■国内フェス出演情報

09月15日(日) <テレビ朝日開局65周年記念 テレビ朝日ドリームフェスティバル>
09月21日(土) <イナズマロック フェス 2024>
10月20日(日) <LIVE AZUMA 2024>
11月02日 or 03日 <MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!!24>
11月09日(土) <氣志團万博2024〜シン・キシダンバンパク〜>

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