新浪氏「賃上げ、成長エンジンに」 同友会トップ2年目
経済同友会は26日に都内で通常総会を開き、新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス社長)が率いる体制が2年目に入った。新浪氏は「まさに賃上げの春となった。長らく止まっていた経済成長のエンジンがようやく再び動き出そうとしている」と述べた。
総会ではNPO法人から初めてピースウィンズ・ジャパンの大西健丞代表理事が同友会の副代表幹事に就任した。今夏には企業向けに経営戦略と社会的責任(CSR)を両立するためのガイドライン(指針)を作成する予定だ。
ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長や日本ケロッグの井上ゆかり社長、マネーフォワードの辻庸介社長も副代表幹事になった。新設した筆頭副代表幹事には日本たばこ産業(JT)会長の岩井睦雄・副代表幹事が就いた。
新浪氏は2023年10月にいち早く自社の賃上げ方針を表明し、機運の醸成に努めた。「動かず耐えることが最適解だったデフレの時代が終わり、動かずにいれば負けていくインフレの時代を迎えつつある」と語った。
エネルギー政策を巡っては「2050年や60年の時点で日本のエネルギー自給率100%を目指すには何をしたらいいか、国民的コンセンサス(合意)を得ながら議論したい」と主張した。
原子力発電所のリプレース(建て替え)や新増設、核融合などの先端分野の研究開発を提起した。中東依存のリスクに加え、人工知能(AI)の普及で膨大な電力が必要になると指摘した。
経団連も16日に50年までを見据えた電源構成の明示を求める政策提言を公表した。政府は24年度に見直す「エネルギー基本計画」で40年度の電源構成を策定する方針だ。経済界からはより長期的な見通しを立てるべきだとの意見が強い。
このほか新浪氏は民間主導での経済・社会構造の改革を訴えた。政治資金の透明化・厳格化を進める法改正も求めた。
新浪氏が2年目に注力するのは同友会が掲げる「共助資本主義」の実行だ。社会課題の解決に取り組むNPO法人やベンチャー企業との協働は企業価値の向上やイノベーション創出の原動力になるとみる。大西氏の副代表幹事就任もこれを踏まえた人事といえる。
賃上げは賃金水準を一律に引き上げるベースアップと、勤続年数が上がるごとに増える定期昇給からなる。2014年春季労使交渉(春闘)から政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が始まった。産業界では正社員間でも賃金要求に差をつける「脱一律」の動きが広がる。年功序列モデルが崩れ、生産性向上のために成果や役割に応じて賃金に差をつける流れが強まり、一律での賃上げ要求の意義は薄れている。