本日のテーマ『高市氏とNTTとブラック企業について』
現在、高市氏が総裁選に出馬しており、他にもさまざまな候補が名を連ねている。高市氏や小林氏、小泉進次郎氏、茂木氏、斎藤氏、加藤勝信氏といった面々が登場している。青山繁晴氏も出馬しているが、帯に短し襷に長しという印象の人物も少なくない。その中で、高市氏を推す人がかなり多い。
石破氏や河野氏のことを忘れてはいけないが、高市氏に関して少し批判をすると、彼女を支持している多くの人から叱られることがある。しかし仕方がないと思っている。何が一番の問題なのか。それは彼女がグローバリストであるという点である。表向きには日本のために活動しているように見えるが、実際にはそうではない。そこが最大の問題なのだ。
高市氏は良いことを言っているように見えるし、実際に多くの人が彼女の発言に好感を持っている。私も彼女の演説を1メートルほど目の前で聞いたことがある。非常に印象深かった。高市氏が元環境大臣の原田義昭氏の応援に来られた時に、私が司会を務めていた。その演説に圧倒され、もし自分が彼女と対峙したら勝てないだろうと感じた。演説の内容や政策に関する知識も素晴らしかった。
問題はエルピーダや産活法(産業活力再生特別措置法)の件に関連するものだ。それ以上に現在の問題として浮上しているのは、NTT法である。NTTの完全民営化が進めば、通信インフラが売却される可能性がある。高市氏は総務大臣として長い間(計4年間)この問題に関わっていて、このNTT法廃止の危険性を理解している。
このNTT法廃止が国益だと主張する保守派の人もいるが誤りだ。櫻井よしこ氏が「NTT法は固定電話のための法律だから時代遅れだ」と述べているのも完全な認識の誤りである。
1985年にNTT法が作られた時、その時の郵政民営化に一人で反対していたのは稲村公望氏であった。彼は郵政のナンバー2でありながら、反対の立場を取っていたために解任されたが、NTT法の成立にも関わっていた人物である。当時もアメリカからNTTの民営化を求める圧力がかかっていたが、NTT法という法律に基づき日本政府が株式の1/3以上を保有することでインフラを守る方策をとった。彼はアメリカとの交渉で「君たちも自国を守りたいだろう。私たちも同様に自国を守りたい」と述べ、NTT法によって政府が株式の1/3以上を保有することを決定し、アメリカ側もこの主張を受け入れた。
NTT法は固定電話のための法律ではない。アメリカで「スーパーインフォメーションハイウェイ」が進められ、インターネットの時代が到来すると予測されていた。そこで稲村氏は光ファイバーを敷設して、日本をアメリカに負けない国にするためにNTT法を作った。通信インフラでアメリカと対等に闘うために作った法律であるので、櫻井氏が言うような単なる固定電話のための法律ではない。稲村氏は、この法律を通じて日本の通信インフラを守るためにアメリカと交渉し、アメリカに対抗するための基盤を作り上げたのだった。
アメリカにとってNTT法の存在は非常に不都合なのだ。アメリカにとって郵政民営化に反対して解任された稲村公望氏がこの法律に深く関わっていたことが厄介だった。
1980年、90年代には、いかにしてNTTの国際競争力を高めるかが議論の焦点となっていた。そのため、NTTを東西に分割し、さらにNTTドコモを別会社に切り離して上場させるなどの措置が取られた。
しかし、現在ではNTT法を廃止して私腹を肥やそうとしている元NTTのCEOで現会長の澤田氏は、高市早苗氏と何度も会談を重ね、突然にNTTドコモを子会社化する決定を下した。NTTドコモは、当初国際競争力を高めるために別会社として上場させたにもかかわらず、国際競争力を高めるためと言って、2022年に再び子会社化されたのだった。
このように、同じ「国際競争力を高める」という目的で、まったく逆の方針が取られているのは理解しがたいことである。このようなことをする政治家をまともだと言えるのか。その矛盾に対して疑念を抱くのも無理はないだろう。
高市氏は総務大臣を務めた経験があるので、現在ブラックロックが岸田氏のもとを訪れて、NTT法を早急に廃止し、NTTを彼らに喰わせろと話をしていることを理解している。NTT法が廃止されたら、ブラックロックにNTTが取られてしまうことも、彼女にはわかっている。総務大臣としてNTT法を熟読しているはずだからだ。
NTT法は非常に短い法律で、1時間もあれば読み終えることができる。そのようなNTT法を理解しているはずの元総務大臣が、NTT法を廃止すれば、日本はNTTの株を放出しなければならず、NTTがなくなれば日本の通信インフラは崩壊することも理解しているはずである。実際、NTTは日本の通信インフラの75%を担っているので、外国の手に渡れば日本の通信インフラが危機に陥ることは明白である。
さらに、高市氏は経済安全保障担当大臣としての経験もあり、サイバーセキュリティに関しても深く関与している。内閣では、サイバーセキュリティを強化するための施策が打たれており、特に銀行や湾岸事業、電力、水道などのインフラ分野が重要視されている。その中で、通信インフラも国民生活を支える重要な分野であり、そのサイバーセキュリティを高めることが経済安全保障に直結していることも理解しているだろう。
仮に通信インフラが外国に奪われ、銀行がハッキングされれば、日本の経済は崩壊する危険性がある。その通信インフラであるNTTを売り飛ばすことが、どうして愛国的な行為と言えるのか全く理解できない。
彼女は総務大臣や経済安全保障担当大臣としての経験がある以上、NTT法廃止には反対しなければならない立場にあるはずである。日本の政治家たちがこういった重要な問題に対して無頓着である。アメリカの政治家、例えばジョン・マケインのように、国の根幹産業に関わる企業が外国に買収されようとした時、彼は一人で立ち上がり、それを阻止しようと戦った。彼は2010年代に、中国の半導体大手の紫光集団がアメリカの半導体企業を買収しようとした際にも反対し、それを阻止した。このように、アメリカの政治家が自国を守るために戦っているが、日本の政治家はどうして戦わないのか。
岸田氏が進める売国取引に対して、反対の声を上げることが今後の関係に良くないのかもしれないが、それでも止めるべきことは止めなければならない。たとえ櫻井氏が通信インフラについてよく知らなかったとしても、NTT法は固定電話のための古い法律だという勘違いも甚だしい主張を信じてはいけない。
高市さんも愛国者だとは思うが、愛国者だと思って、全部任せておけば大丈夫だという思い込みが一番怖い。任せてボーッとしているうちに、この国が茹でガエルになってしまう。8月15日に毎年靖国に参拝される。そのお気持ちはたいへんありがたいが、ただ生きている私たちの大事なインフラを、どうしてそんなに蔑ろにできるのか納得できない。
靖国参拝で愛国ブランディング、イメージ戦略をするのは小泉純一郎さんが始めたが、ポーズやパフォーマンスではなく、その人たちが実際に何を言い、何を行っているのか、本当に国を守るための政策を実行しているかをしっかりと見てほしい。
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