「サル痘」から名前が変わった理由
ーそもそも「エムポックス」はどのような感染症なのでしょうか?
安田教授:
「一言で言うと『急性発疹性の感染症』です。1980年に根絶宣言が出された『天然痘』の原因ウイルスである『天然痘ウイルス(痘瘡ウイルス)』と遺伝子が非常によく似た、近縁の『エムポックスウイルス』による感染症です」
「『人獣共通感染症』で、元々はネズミの仲間が持っているウイルスが、ネズミに噛まれたり、感染ネズミの血液・体液に触れたり、ネズミを食用として摂取することで他の動物や人に感染が拡大しました」
「最初にサルから見つかったため『サル痘』『モンキーポックス』という名前がつきましたが、サルもネズミから感染しています。誤解と混乱が起きないように、去年感染症法上の名称が『エムポックス』に変わりました。ただし『エムポックス』の『エム』は『モンキー』の『エム』なんですけどね」
ー感染するとどのような症状が出るのでしょうか?
安田教授:
「まず発熱・倦怠感・筋肉痛・頭痛の症状から始まって1週間位経つと、天然痘でも見られるような発疹が顔に出てきて、その後、手のひら・足・かかとなどにも出てきます」
「これまでに流行した『I』『II』『IIb』系統のエムポックウイルスは致死率0~10%。つまりほとんど死ぬことはないというものでした」
「これに対して今アフリカのコンゴ民主共和国を中心に流行している『Ib』系統のウイルスは重症化率も高く、致死率も子供だと5~10%位という報告もあります」