テレビ番組「報道特集」の予告がいろいろ物議を醸しているので、離婚・DVモラハラ・親権監護権・面会について私の考えをまとめてポストします。 ①DV・モラハラは男性であろうと女性であろうとしてはならない。 ②配偶者からDV・モラハラの被害を受けた人が別居をすることは何ら責められることではない。 ③そもそも配偶者が別居することを法的に阻止することは不可能である。 ④別居の理由や経緯が極めて悪質な場合、同居を命じることはできないが慰謝料が発生したり有責配偶者として離婚請求が制限されたりし得る。もっとも、実際のところはかなり限定的。 ⑤子供の身体は一つしかないので、別居をするにあたって置いていくか連れていくかのどちらかを選択するしかない。 子供が幼い場合は従前の主たる監護者が子供を連れていくことは基本的に正当化される。子供の年齢が高い場合は本人の意思が尊重される。 ⑥従前の主たる監護者であっても任意に幼い子供を置いて家を出た場合、その後に法律に基づいて子の引き渡しを求めても認められる可能性は低い。 幼い子供を置いて別居をするということは親権を放棄するということに等しい。 ⑦別居又は離婚に伴って子供が一方の親と一緒に暮らさないようになったとしても、親子間の関係は継続する。 しかしながら、双方の親で半分ずつ監護養育をし合うというのは、当事者間で合意をすればできなくはないが、子供の生活にとって負担が大きく非現実的であることが多い。どちらか一方の親の元を生活の本拠地とするのが通常である。 ⑧一般的には子供と非監護親も定期的に面会交流をした方が子供の福祉に叶うと考えられる。 しかしながら、面会交流を実施することが子供の福祉に反する場合は、逆に面会交流をすべきでない。 ⑨面会交流にあたって、子供本人の年齢が高い場合は、子供本人の自己決定権が重視される。子供本人の年齢が低い場合は、子供の発言が身近な大人の意向によって容易に左右されたり本人の表現能力が拙かったりするので、子供本人の発言はあまり重視されない。 ⑩面会交流の実施が子供の福祉に反するケースとしては、面会交流を実施することによって子供が心身に不調をきたすことが典型的な例である。また、面会交流を利用して非監護親が子供の返還を拒否する危険性が高い場合も子供の福祉に反するとされる。 ⑪面会交流を実施することによって子供が心身に不調をきたす原因として典型的な事由としては非監護親が同居中に子供を虐待していたとか子供の面前で同居親に対してDV・モラルハラスメントを行っていたとかである。 ⑫非監護親には非がなくむしろ監護親の方に問題があるにもかかわらず、父母間の対立が激しくなった結果、面会交流を実施することで父母の板挟みにあった子供が心身の不調をきたすようになるケースもある。 これは非監護親としては非常に納得のいかないところだとは思うが、子供への負担を考えるとあきらめてもらうしかない(なお、このような状況を理由に親権・監護権の変更を認めた裁判例を私は知らないです)。 ⑬DV・モラハラ等があった場合、面会交流を実施することで子供には悪影響がなくとも、監護親が心身の不調をきたすことがある。 この場合であってもよほどのことがない限り面会交流不実施とはならず、家族・知人・第三者機関等を利用して面会交流を実施することになるのが多い。 ⑭面会交流の時間や頻度は原則として月1回数時間程度だが、個別具体的な状況に応じて頻度が増えたり宿泊を伴うものにすることは多い。 他方、月1回数時間よりも頻度を減らすのは当事者間の合意でない場合は何らかの事情があることが多い。 ⑮面会交流実施中は楽しそうに過ごしていた子供が面会交流後に心身に不調を来たすことはよくある。 逆に、面会交流開始前は拒否する姿勢を示していた子供が、面会交流の場に連れて行くと非常に楽しく過ごすこともよくある。 ⑯面会交流実施に伴い子供が心身に不調を来たしていると監護親が主張した場合、それが事実であるのか否かが非監護親にはわからないので、非監護親としてはかなりもどかしい。 逆に事実であったとしても非監護親から疑われるのがやむを得ないということが監護親にとって精神的負担となる。 ⑰監護者の指定にせよ面会交流にせよ、全知全能の神ではなくただの人間に過ぎない裁判官が判断する以上、判断の前提に当たる事実を調査するのにどうしても一定の時間がかかってしまう。昨今は家裁の事件が増えている一方で裁判官や調査官の数は増えておらず、家事事件が滞留しているため、余計に時間がかかってしまう。 この状況を改善するためには、裁判所の予算を増やす等してマンパワーを増加させるしかない。 ⑱全知全能の神ではなくただの人間に過ぎない裁判官が判断する以上、当事者の主張を一方的に鵜呑みにするのではなく証拠に基づいた判断をしなければならない。 しかし、あらゆることを証拠化するのは不可能だし相手方の領域にある事情の証拠を入手するのは困難なので、裁判所の認定する事実が真実と異なるものになってしまうことは避けられない。 これは夫・妻、DVモラハラ加害者・被害者、監護親・非監護親のいずれにとっても有利に働くこともあれば不利に働くこともある。