ここは2XXX年、男女平等が完全に達成された世界―― 妻「夫さん、今月も妊娠負担金AAA円をいただきますね」 夫「えぇ勿論、後ほど電子決済しておきますね」 妊娠出産の労苦を女性にだけ負担させるのは平等ではない。男性はその労苦の半額換算の金銭を支払う必要がある。(なお換算額は法定レートを参照した上で、夫婦間裁判によって合意されている) 男女平等なのだから当たり前のことである。 夫「ところで妻さん、今日は体調が悪かったようですね。大丈夫ですか?」 妻「そうなんです、つわりが酷くて寝込んでしまって。しばらく続いてしまうかもしれませんわ」 夫「それは大変ですね。今日の妻さん分の家事は僕がまとめてやりましたし、今週は仕事も忙しくないから全て負担しますよ。妻さんの介助サポート業者も手配しておきましょうか?」 妻「ありがとうございます、お願いします。家事負担金BBB円/日と手配手数料CCC円は来月末にまとめて精算しますね」 夫「はい、それで結構です」 家事の負担も男女平等。半分のノルマをこなせないのであれば、金銭を以て差額を支払う。(妊娠の労苦に対する金銭は夫から支払われているのだから、言うまでもなく「つわりが酷い」はノルマ免除の理由にはならない) 体調不良時には専門の業者を呼ぶのが一般的だが、症状が軽く期間が短い場合はパートナーのヘルプで済ますこともある。なお夫婦間ヘルプ料の相場はDDD円/時間とされている。 男女平等なのだから、当たり前のことである。 夫「統計的にはN日ほど辛い日々が続くでしょうから…妊娠負担金と差し引きすると、概ね±0になりそうですね」 妻「そうですね。そういえば祖母から聞いたんですが、昔は負担金の精算をせずになぁなぁで済ませていたんだとか」 夫「男女不平等時代の悪しき慣習だったそうですね。酷い話だ」 妻「えぇ、祖母は『私は妊娠中も働いて家事もしたのに、夫は1円も払ってくれなかった』と愚痴っていましたわ」 夫「僕のお爺さんは『2人目を流産したのに、慰謝料を払わないどころか一括払いした妊娠負担金の返金まで渋られた』と言っていました。泥沼の裁判だったそうです」 妻「それはそれは……私達は良い時代に生まれましたね」 夫「まったくそのとおりですね」 ――ここは2XXX年、男女平等が完全に達成された世界。