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【未来くりっぷ#15】ローコード開発、社内のうねりの中心に若手リーダーの挑戦がある──山田幹也(デジタルデザイン部 DX戦略担当)

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NTT東日本のデジタル事業に関わる人へのインタビュー15回目は、デジタルデザイン部で社内初のローコードによるアプリ開発に取り組んでいる山田幹也さんです。そのアプリとは、「マイバトラー」 シリーズの一貫としてリリースされたフリーアドレスの座席予約アプリ「ロケバト」。今や2万人規模の社員が使うようになったアプリ開発の舞台裏について語ってもらいました。

可能性や発展性を秘めて「私自身がローコード」

──山田さんご自身を一言で表すとしたら、どのような表現になりますか?

山田: 私は自らローコード開発をしたり、ローコードで内製アプリを開発したりする体制作りを担当しています。その絡みから、「私自身がローコード人材」と表現できると思います。

私自身、デジタル人材としてプログラミングなどの基礎知識がある状態で入社したため、新卒で入社後、1年目からローコード開発に携わることができたので、まさにローコードが社会人としての出発点です。最初のプロジェクトでは苦労もありましたが、同時にローコードの可能性を感じることができました。

今後はローコードによる大規模な開発であったり、自身の技術力を高めてスクラッチ開発にも挑戦したい。まだまだ発展途上であるという点でも、自分はローコード人材だと思っています。

──学生時代のプログラミングの経験は?

山田:学部・大学院は、情報科学系の研究室でIoTの研究をしていました。シングルボードコンピュータの「Raspberry Pi」を使って、Pythonでプログラムを書いていました。町工場での生産管理にIoTを活用したり、畜産農家にお邪魔して、牛にセンサーをつけて発情期の管理をする研究もやっていましたね。まだまだ基礎的な研究で、実用化には至っていないのですが。

院生のときに農業IoTの経験を活かしたいと思い、農業関連のビジネスを展開しているNTT東日本をインターンシップ先の一つに選びました。わずか3日間のインターンでしたが、とても有意義な経験ができました。

自分で手を動かしてIoTのシステムを構築し、温度を測ってデータを分析する。IoTでは不可欠なサイバーセキュリティの実習などもありました。他にもインターンシップは数社経験しましたが、NTT東日本が一番実務に近く、自分のこれからの仕事を十分イメージすることができました。

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──入社後、最初の配属はデジタルデザイン部ですね


山田
:インターンシップ時に、従来の通信・ネットワークのビジネスから脱却して、新しい領域を開拓するデジタルデザイン部を知りました。システム開発の内製化やDX化の最前線をリードし、メンバーのリスキリングも含めて進める部署だと聞き、志望しました。

配属後、「マイバトラー」 シリーズの一つとして、座席予約アプリをローコードを用いて開発するプロジェクトが、最初の仕事となりました。マイバトラーは、システムの内製化を進めるデジタルデザイン部が社内向けツールとして開発しているアプリ群。これを初めてローコードで開発することになったのです。

具体的には、Microsoftから提供されているローコード開発サービス「Power Platform」を使いました。最初のプロジェクトメンバー7名のほとんどがネットワークエンジニアで、システム開発もローコードも未経験。私も情報系出身なので、プログラミングの基礎知識はありましたが、ローコードに触れるのは初めてだったこともあり、最初は苦労しました。

基本的な使い方は、チームのサブリーダーが「Power Platform」を教えてくれましたが、そこからは自分で調べてキャッチアップし、習熟していきました。マイクロソフト社に「Power Platform」に強いベンダーも紹介していただき、サポートも受けました。

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アジャイル開発でわずか3カ月リリースにこぎつけた

──座席予約アプリ「ロケバト」について聞かせてください

山田:NTT東日本本社はほとんどがフリーアドレスなので、出社するときに座席が空いているかどうかを確認して予約できるアプリです。現在ロケバトは、本社営業部門の約2300名とサテライトオフィスを利用できる従業員約2万人に使われています。

──実質わずか3カ月で最初のリリースにこぎつけたそうですね

山田:社内ツールなので要件定義がしやすかったことや、最初から「Power Platform」を使う前提もあり、技術選定に迷いはありませんでした。ローコードは初心者にも学習しやすく、スピーディーな開発が可能なのです。

私たちも、まずはアプリケーションを作成し、1週間区切りのスプリントで成果物を評価・改善していくアジャイル開発の手法を採用しました。その結果、未経験者による開発にも関わらず、開発開始から 3カ月で初版をリリースすることができました。

ただ、リリース直前は予期せぬトラブルが発生して大変でした。チーム一丸となって作ったものが動いて、社内のユーザーに使ってもらえた瞬間は嬉しかったですね。

一番苦労したことは、どこまでの機能を実装するかという点です。ローコード(PowerPlatform)は簡単にプログラミングができる代わりに実装できる機能やデータ量に制限があったり、他のサービスと連携がしづらい場合があったりなど、仕様をローコードの機能に合わせていかないといけないという課題がありました。

そこで最初のリリースでは、最低限の機能だけにすると決めました。例えば、座席予約が当日1日分しかできない仕様でした。しかし、使い勝手が悪いという意見もあり、急きょスコープを拡大して、1週間分の予約ができるように変更して、なんとかリリースにこぎつけました。現在は1カ月分の予約ができるように、バージョン6を開発中です。

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ローコード開発、社内の第一人者の一人という自負がある

──ローコード開発の経験は、山田さん個人にとってどんな意義がありましたか

山田:社内で初めてローコードでのアプリ開発をやりきったことは、大きな自信になりました。最初は何が正しいのかわからなかったのですが、ある程度サイクルを回すうちに、進め方のパターンが見えるようになります。

失敗も多かったのですが、次からは失敗をしないように工夫する。そうした知見は、積み重ねていく中で身に付いていくものですね。入社後の2年間はみっちり「Power Platform」のローコードに携わってきましたから、今はその知識や経験を社内に伝えられるようになってきたと思います。

──ローコード開発の将来性をどう考えていますか?

山田:ローコードは、動くものを簡単にプログラミングできることが最大のメリット。私も数日でデモアプリを作ることができたので、嬉しくなって上長に見せた記憶があります。小中学生やプログラミング初心者が、最初に触れる学習教材としてはとても良いものだと思います。


若手でもこれだけできる。自分自身がロールモデルに

──ローコード開発がデジタルデザイン部にもたらしたものは何でしょう

山田:私のような入社早々の社員に、要件定義から設計、さらに実装も保守も含めて一連の開発工程を任せてくれたのは、やはりデジタルデザイン部ならではだと思います。いわば若手人材に裁量のある仕事を任せて、急速に成長させるモデル事例になったのではないでしょうか。

デジタルデザイン部には、最新技術を活用してプロダクトを内製し、そのPoCを進めることで、いずれは新しいビジネスに繋げるというミッションもあります。例えば自治体のお客様に向けては、ローコードを使ったDX推進というビジネスが生まれつつある。そうしたビジネスの先駆けになったと自負しています。

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──今後は、ローコード開発をどのようにビジネスに繋げていきたいですか

山田:ロケバトについては、使い方を解説する社内向け動画も自分たちで制作しました。他にも、PowerPlatformを題材にした動画を教材に、ローコードを使って社員のリスキリングを実施しています。さらには、新たなデジタル人材育成研修プログラムも作成し、多くの社員が参加。ローコード開発を入り口とした、人材構造の変革のうねりが生まれていると実感しています。

その先のことで言えば、私もいずれはお客様の課題を解決するビジネスに、業務SE[1]な立場で関わっていきたいですね。ただ現在は、私自身がお金を生み出すというより、自身が身に着けてきた経験を伝播させ、お金を生み出せる人材を育てていくことに関心があります。

もちろん、ローコードだけにこだわっているわけではありません。私自身、ローコードからプロコードへのステップアップが重要だと考えていますし、いずれはより大規模なシステム開発に携わってみたいと思っています。

私が尊敬するプロジェクトマネージャーが「お客さんの業務を押さえろ」とよく言うのですが、社内外のユーザーの業務の流れや仕組みを理解して、今どこに負荷がかかっているのを分析し、システム化を通して便利にしたり、効率化したりするのは絶対に面白い仕事。それができる人材に自分も成長していきたいと考えています。

[1] 顧客の業務を理解した上で、業務上のボトルネックになっている箇所の抽出、ITを用いた課題解決を行うSE


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山田 幹也(デジタル革新本部 デジタルデザイン部 ファシリテーション部門 DX戦略担当)
学生時代は情報科学を専攻し、デジタル信号処理を用いた動物の活動量推定の研究を実施。大学院卒業後、2021年4月NTT東日本に入社し、デジタルデザイン部に配属。最初のプロジェクトのミッションは、社内ツール「マイバトラー」シリーズの新しいプロダクトをローコードで開発すること。プログラミング未経験者を含む社内の7名のチームで取り組み、2021年12月に最初のバージョンをリリース。現在は、NTT東日本の本社における座席予約アプリ「ロケバト」を展開し、社員約2万人に利用されている。

撮影・刑部 友康
文・広重 隆樹

※所属・役職は取材当時のものです