「モリウラ君 誰」
皆さんのまわりにも、こんなタイプの友人が一人や二人、いるのではないでしょうか。
もともとモリウラ君は、クラブで知り合ったお友達。
マイペースな雰囲気でつかみどころがないが、十分な愛嬌(あいきょう)と、ほどよい失礼さを持ち合わせた「後輩気質」のナイスガイ。
顔も広く、妙な引きの強さや運の強さを持っていて、各方面から愛される存在なのである。
▲なぜか乃木坂46川村真洋さんのPVに出演しているモリウラ君
さらに、いいイベントに対しての嗅覚は鋭く、面白そうなパーティーにはたいがいいる「クラブの妖精」としても一部で有名。
モリウラ君がいるかいないか、それがナイスパーティーかどうかのバロメーターとなっているといっても過言ではない。
だがそんなモリウラ君も、ナイスパーティーを堪能しすぎて泥酔し、まわりに迷惑をかけてしまうことも多々……。
▲パーティー明け、チャーハンを枕にして寝るモリウラ君
「あのモリウラ君がお店を始めるらしいよ!?」
そんなうわさを聞いたのはごく最近のこと。
あのモリウラ君が一念発起してお店を始める……。
きっと興味深いお店になっているだろうという期待感と、日頃の彼の行動から来る「大丈夫なんか……」という明確な不安感を抱えつつ、彼の立ち上げたお店に潜入してみました。
本当にこれがあの「モリウラ君」のお店なのか
場所は下北沢、駅から5分ほどのかなりの好立地。
エレベーターで上がって3階。
え、ここ?
ここ?
いや、外見だけかもしれないから。まだ油断できないぞ。
(……ガチャ)
あれ?
あれ?
あれれ?
内装も雰囲気めちゃイイやんけ……!
「ふふふ……いらっしゃいませ~」
そ、その声は!?
モリウラ君だ~~!!
「ジャケ飲み」したくなるお酒
百合おん:めちゃ良い雰囲気のお店だね。ビックリしちゃった。
モリウラ:ありがとうございますー。取材なんて初めてなんで、うれしいです。せっかくだから飲んでいきます? なにがいいですかね。
百合おん:あ、そうだね。どうしよう……なにがいいかな……あんまり苦くないのが良いかな……ごにょごにょ……。
モリウラ:なんで取材する側が緊張してるんですか。じゃあ、これとかどうですか?
▲TW Pitchers' ラドラーラガー&グレープフルーツ(800円)
百合おん:へー、飲んだことないや……って、なにこれ!? めっちゃおいしい!
モリウラ:グレープフルーツとブラッドオレンジを使ったビールなんです。
百合おん:すごい果物が効いててすいすい飲めるし、最後にふわっと広がる苦味も自然でビールの持ち味を殺してないね! ビールが苦手な人でも好きになるきっかけになってくれそう。
モリウラ:「飲みやすい」を超えて完全にフレッシュジュースですよね。氷を入れるとよりサッパリしておいしいですよ。でもしっかりアルコールも入っているお酒なんで気をつけてください。女性にも好まれる味かもしれませんね、フフフ。
百合おん:いやー、感動しちゃった! やるな~。
▲親切かつ細かく説明してくれるモリウラ君
モリウラ:あと、テキーラなんでどうでしょう。
百合おん:え! テキーラはちょっと……。度数高めでイベントでの気つけ・罰ゲームのイメージしかないし、ちょっと勘弁願いたいな。
▲ プレミアムテキーラ オチョブランコ2015(800円)
モリウラ:まあまあ、ソーダ割りにしたので飲んでみてください。
百合おん:……ん! スッキリしてて飲みやすい。嫌味な感じがないからなんでも合いそうだね。
モリウラ:デザインもカッコよくないですか?
百合おん:確かに! さっきのビールもそうだけどボトルのデザインも気になってた。
モリウラ:ものづくりマインド高めのお酒が好きで、クラフト系のお酒や自然派のワインを中心にそろえてるんですよ。ビジュアルもこだわってるものが多くて面白いんです。なので迷った時はレコードのジャケ買いみたいに、気軽にデザインで選んで飲んでみる、みたいな「ジャケ飲み」をオススメしてます。
百合おん:ほほーっ!
モリウラ:このオムニポロというビールもオススメです。いわゆるラベルじゃなく直プリントなんですよ。左から二番目のレオンはシャンパンの酵母を使っていて独特なコクが癖になります。
▲ 左から ペリクレス(1000円)レオン(1100円)フリックソーダ(1200円)ネブカドネザル・インペリアルIPA(1100円)
百合おん:いいねいいね~。……やば、ちょっと飲みすぎちゃいそうだから取材に戻ろう。
ダメなだけじゃない! モリウラくんの「人脈力」
百合おん:しかし、なんでまたいきなりお店をはじめたの? ビックリしちゃったよ、きっかけとかあるの?
モリウラ:いや、もうマジでノリですね。
百合おん:ノ、ノリ!? ノリでお店ができるものなの?
モリウラ:まあそれはちょっと言い過ぎですが、「場所」が欲しかったんですよね。時おり浮かぶちょっとしたパーティーの企画が、ちょうどいい塩梅で実現できる場所が欲しくて。なんで最初はそこまで具体性もなかったです。
百合おん:「クラブの妖精」らしい理由だね。
モリウラ:そんなとき、タイミングよく当時働いてた飲食店でラウンジを任されることになり、いろいろと進めていたんです。だけどその計画が頓挫してしまい、そのスペースのためのアイディアだけが残ったんです。せっかく考えたアイディアだし「じゃあお店、始めるか!」となりました。
百合おん:ノリといえども、きっかけはあったのね。それでもすごい決断だよ。
モリウラ:良かったのが、この下の階にある古着屋さんをやっている友達の海野君が、コンサルティングとして協力してくれたのもありますね。実店舗がすぐそこにあるのでレスポンスの点でも良かったんです。
百合おん:なるほどそれは心強い! しかし普通、そんな知り合い近くにいないよ。
モリウラ:それでいうとロゴデザイン(みゆととさん)、天板・インテリアサインとかのインテリア制作(SUEKKO LIONSさん)も近しい人に頼みました。感覚が合いそうな人にお願いして。
百合おん:どれもバッチリハマってるね。目を見張る人脈力だ……。
百合おん:あと、工事現場っぽい感じが面白いよね。あと、天井に飾られた葉っぱ? もインパクトあるし。
モリウラ:葉っぱて(笑)。エアプランツですね。植物はサンルームという植物屋さんに頼みました。もともと絵を描かれた時期もあったり、植物屋さんとしてアートイベントにも出展してたりして、不思議なセンスを持っている感じにひかれて依頼しました。年齢も近いんですよ。
百合おん:いやはや、人脈力をフル活用してるね~。あのダメダメなモリウラ君がなんでこんなカッコいいお店を!? と思ったけど、そういうことなら合点がいくよ。皆のサポートのお影なんだね。うん、納得納得。
モリウラ:(なんだこいつ……)
「ナヨナヨした」「たよりない」という意味の店名
百合おん:店名が「mou(ムー)」。シンプルだけど響きがいいよね。どうやって決めたの?
モリウラ:最初は人がたくさん居るような明るいイメージで、キャッチーなものならなんでもいいかなと思っていて「パレード」が候補でした。
百合おん:自分でざっくり決めてたのね。
モリウラ:でもその時いた友達(みゆととさん、Dorianさん、shakkeさん)から「そんないい加減じゃダメだよ、今から決めるぞ!」と言われ、下北沢のサイゼリヤで朝まで話し合い、それでも決まらず、マックをハシゴして昼頃にやっと「mou(ムー)」に決まりました。
百合おん:そこでも友達の功労が! ちなみに由来は?
モリウラ:フランス語で「ソフト」「柔軟な」という意味なんです。抽象的でぼんやりした感じがフィットしました。いろんな解釈が出来るような。明確な意味合いは避けたくて、お客さんに合わせていろんな感じに変わっていけたらいいなあと。
百合おん:へー! 「パレード」でも悪くないかなと思ったけど、そう聞くとやっぱりちゃんと決めて正解だね。お店に対しての作り方が明確になる。
モリウラ:あと「ナヨナヨした」「たよりない」みたいな意味もあるみたいで。自分のキャラクターを投影させられてるのも理由ですね。
百合おん:ハハハ! それもいいね。
モリウラ:あと、モリウラのMを入れたかった。
百合おん:なんか恥ずかしいけど、入れたくなるよね。
クラブとミュージックバーのちょうど間くらいを狙いたい
百合おん:正直言うと、モリウラ君に対して「いい加減!」っていうイメージがあったから、雑多でフリーダムな雰囲気なのかな……と思ったけど、そこはいい意味で裏切られたよ。お店のコンセプトみたいなのはあるの?
モリウラ:うーん、ちょっと説明が難しいな……。くくり的にミュージックバーと言われる業態なんですが、自分のイメージするミュージックバーとこのお店は違うんですよね。かといってDJバーとも違う。それでこのステッカーにもあるんですが……。
百合おん:「DRINK AND MOOD」……?
モリウラ:音楽! お酒! って押し出すというよりも、それらによって作られた雰囲気を大切にしたお店にしたいなと。クラブとミュージックバーのノリのちょうど間くらいを作っていきたいんです。
百合おん:そこで「ムード」を看板に掲げているのか。
モリウラ:そのためのいい音楽(音響)といいお酒を用意している感じですかね。
百合おん:音響にも凝ってるんだね。
モリウラ:サウンドシステムも知り合いのエンジニアに協力してもらいました。音響の評価が高い東日本橋にあるホステル「CITAN」なども手がけるエンジニアさんです。
百合おん:また有能な知り合い!? モリウラ君、顔広いな!!
▲パーティーも精力的にやっています。DJは基本的にジャストな選曲が出来る知り合い中心(またまた知り合い……)
モリウラ君の愛したナチュールワイン
モリウラ:そうだ、ワインも飲んでくださいよ。
▲ファネッティ ビアンコ・サンタニェーゼ(700円)
百合おん:ナチュールワイン*1か! モリウラ君のお店告知ツイートで言ってたもんね。飲む飲む!
百合おん:わ! すごいパンチがある味だね。独特の風味がガツンと来る! こんなワイン、初めて飲んだな。なんか珍味みたいな……癖になる感じだね。
モリウラ:このワインは、樽の熟成感が強いのでそういう感想もあるかもですね。
百合おん:こんな独特の味わいなのに、ウッ! っとならないね。不思議だ。面白い!
モリウラ:もともとワインはあんまり好きではなかったんですが、こういう自然派ワインでハマりました。ちょっと変っているけど飲みやすいものも多くて。あとは生産者の方の思いが強いものが多いのも魅力だと思います。
お店がオープンするまでは想定外のことばかり
百合おん:いろいろ教えてくれてありがとう! 最後にお店をオープンしての感想を。
モリウラ:うーん……「なんとか間に合った」ですかね。
百合おん:ギャハハ! リアルな感想だ。
モリウラ:もう予想外のことしかないんですよ。全部想定外! 前日ならまだしもオープン当日までお店作ってましたからね。
百合おん:オープニングパーティーの様子をタイムラインで見たけど顔に必死さが出てたもん。
▲まったく余裕がなく土気色のモリウラ君
モリウラ:そのパーティーも3日間やったんですが、トータル200人(?)くらい来てくれました。10年ぶりに会う人とか。縁を再確認しましたね。
百合おん:さっきのお店オープンに協力してくれた、たくさんの知り合いたちもそうだね。つながりに感謝だ。
モリウラ:ただ、もうひと息つく暇が無くて……。大変だったオープニングパーティーの次の日は貸し切りパーティーだったし、感傷に浸る時間がないんですよ!
百合おん:走り抜けてるなー。引き続き忙しいだろうね。友達というのを抜きにしても良いお店だから、自分も普通に通っちゃいそうだな。
モリウラ:ありがとうございます! あ、デートでも使ってくださいね。自然な対応を心がけますんで(ニヤニヤ)。
百合おん:うぜ~! (でも本当に使えそうだな……)
いやはや、取材なのに楽しく飲みすぎてしまった……。文句なしにいいお店なので、モリウラ君と知り合いじゃなくても素敵な時間を過ごせるかと。
それもこれも……
- 才能ある仲間たちがたくさんいるという「人脈力」
- ほっとけなさからまわりが自然とフォローしてくれる「愛され力」
- お酒・音楽・パーティー。好きなものと寄り添い続けたことによる「信用力」
これら3つの「モリウラ君パワー」のおかげなんだろうと思いました。
そう考えると、モリウラ君的な人物から学ぶべきところは、かなり多いですよね。
皆さんもぜひ足を運んでみてください!
お店情報
mou(ムー)
住所:東京都世田谷区北沢2-32-7 青柳ビル 3F-A
営業時間:19:00~翌2:30(LO 翌2:00)
定休日:月曜日
*1:ナチュールワインとは:無農薬・有機栽培のぶどうのみを使用して作られた、自然製法のワインのこと
書いた人:ディスク百合おん
ナードコアという特別なテクノを得意とするミュージシャン。コンビニで手に入る食品を合わせて新しい料理を作りあげる「コンビニかけ合わせグルメ」を紹介する人として様々な媒体に取り上げられ、同名の初書籍が2017年11月2日(木)に発売。山本さほ「岡崎に捧ぐ」に登場する杉ちゃんのモデルという棚ぼた知名度も獲得している。