くまのプーさんがホラー映画に 二次創作可能の背景に「著作権切れ」

6月23日から日本でも公開が始まった「プー あくまのくまさん」のワンシーン(c)2023 ITN DISTRIBUTION, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
6月23日から日本でも公開が始まった「プー あくまのくまさん」のワンシーン(c)2023 ITN DISTRIBUTION, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

児童小説のキャラクターをモチーフに実写化したホラー映画「プー あくまのくまさん」(英国、84分)が全国の映画館で公開され、SNSを中心に話題を呼んでいる。アニメなどでおなじみのくまのプーさんの愛らしいイメージとは全く異なる新たな作品が制作可能となった背景にあるのが、「パブリックドメイン」(著作権保護の存続期間が切れ、知的財産権が発生していない状態)の存在だ。パブリックドメインを巡っては、今後も二次創作が発表される可能性がある一方、人気キャラクターをテーマに作品を制作してきた映画会社にとっては頭の痛い状況となっている。

キャッチコピーは「はちみつはもう飽きた」

6月23日から全国の映画館で公開が始まった「あくまのくまさん」は、英国出身の児童文学作家、A・A・ミルン(1882~1956年)が1926年に発表した児童小説「Winnie the Pooh」(くまのプーさん)がモチーフになっている。映画の原題は「ウイニ―・ザ・プー ブラッド・アンド・ハニー」で、キャッチコピーは「はちみつはもう飽きた」。続編の制作も既に決定している。

映画は、くまのプーさんにも登場してきた親友のクリストファー・ロビンが青年になり、大学進学のためプーたちを森に残して旅立つ。その後、婚約者とともに森に戻ってきたロビンだったが、目の当たりにしたのは血に飢えて野生化したプーたちの姿だった-といった内容のホラームービーだ。

著作権保護の存続期間は、日本と海外では期間がそれぞれ異なる。くまのプーさんの場合には、原作の著作権が昨年1月に切れ、パブリックドメインとなった。宣伝担当者は「原作がパブリックドメインになったことを受けて、(監督とプロデューサーが)10万ドル(約1440万円)を切る低予算で制作したと聞いている」と説明する。

日本国内で公開する上で注意を払ったのが、邦題のタイトル。「『くまのプーさん』はすでに商標登録されており、ネーミングをどうするかで悩んだ」(宣伝担当者)と明かす。国内で公開されると、SNSで話題に。「10~20代の来場が目立っている」(宣伝担当者)という。

ミッキーマウスが生まれ変わる可能性も

米国では今年2月に封切りされたが、米通信社のブルームバーグ(電子版)では「くまのプーさん、新作映画で殺人鬼に 著作権切れで恐ろしい変貌」との見出しで特集記事を掲載した。

記事では「米ウォルト・ディズニーは1961年からくまのプーさんを巡る権利を保有しているが、2022年1月に原作の著作権が切れ、二次創作がほとんど自由になった」と指摘。「所有する人気キャラクターに付随する著作権が近く切れる大手映画会社にとって、この作品はぞっとするような未来を示唆している」と懸念を示した。

ディズニーの人気キャラクターを巡っては、ミッキーマウスが初めて登場した1928年制作のアニメーション作品「蒸気船ウィリー」の著作権保護の存続期間が来年に期限切れを迎える。あくまのくまさんの宣伝担当者は「パブリックドメインを迎える作品に関しては、その作品をモチーフにした新たな映画が今後も出てくるのではないか」としている。(浅野英介)

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