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cookie(クッキー)の話を真面目に考えてみた。

cookie(クッキー)の話を真面目に考えてみた。


一部のネット広告関係の人がcookie(クッキー)の話をポジショントークで大騒ぎしているので冷静かつ客観的に真面目に考えてみた。…とはいえネット広告業界にいる立場ではあるので、客観的な事実と主観的な意見が混在しています。その辺は踏まえてください。ただ一旦、自分自身でも整理してみたいという意味合いが強い投稿です。

 

 

そもそも何が起きてる?

cookieがプライバシーの塊ということで保護する必要があるだろ?ってことで世界的にIT業界の規制が行われています。また2022年4月1日に改正が行われた個人情報保護法も施行され、日本国内でもクッキーの話は無縁ではなくなっています。

 

特にネット広告領域で利用されてきた3rd Party Cookieが問題視されていますが、そもそも1st Party Cookieもプライバシーの塊であるので、両方とも取り上げます。

 

ネット広告とcookieは切っても切れない問題です。3rd Party Cookieを利用して、WEBサイトにタグを設置することで、ネット広告を経由して購入などの行動を行なった人のデータを可視化することで高い広告効果を広告主に明示することに成功しました。

 

また1度広告をクリックした人(厳密にはデバイス)を追いかけ回すリマーケティング(リターゲティングともいう)で高い広告効果を叩き出して、ネット広告業界のシェアを独占してきたのがGoogleとMeta(旧Facebook)です。これにも3rd Party Cookieが大活躍してきました。

 

この恩恵はGoogleとMeta、そして広告主だけではありません。日本国内のネット広告は3兆3,330億円を2023年になっており、2023年に総広告費全体の45.5%を占めるまでに至りました。(※3rd Party Cookieだけがネット広告の成長要因ではないですが、その一翼を担っているということは紛れもない事実です。)

 

私のような広告代理店に勤務するような職種の人材の仕事を生み出していますし、視点を変えるとYouTuberのような(一時的ではあるにせよ)小学生の将来の人気職種を生み出したのもネット広告の恩恵の一旦であり、社会的なインパクトが大きいのは否定できない事実です。

 

本題とはズレたので、この辺で。

 

3rd Party Cookieは滅亡の運命

3rd Party Cookieを叩き潰した急先鋒はAppleのブラウザのSafariです。2017年からITPというテクノロジーで、いたちごっこの時期もありましたが、徐々に3rd Party Cookieの息の根を止めてきて、2024年現在では3rd Party Cookieは完全に無効化されています。(標準で3rd Party Cookieが無効化されているところがAppleらしいです。Googleだと「無効化も選択できます」になりがち…)

 

Appleが急先鋒になったのはネット広告には殆ど手を出しておらず、プライバシー保護を打ち出す方が50%以上を占めているiPhoneを中心としたメイン事業のデバイス販売での収益向上になると判断した部分が大きいと思われます。

 

ブラウザという部分ではPCもスマートフォンもシェアが大きいGoogleがChromeの3rd Party Cookieを廃止を2020年に2年以内すると表明しましたが、何度も延期を行ない、現時点では2025年に実施すると宣言していますが実際はどうなるか分かりません。

 

1st Party Cookieも規制

AppleのブラウザのSafariでは1st Party Cookieも7日間で削除されています。これは自主的な規制です。

 

Googleアナリティクスといったアクセス解析では1st Party Cookieで計測を行っています。集計は1か月単位で行なうことが多いと思いますが、Safariユーザーの場合、1st Party Cookieが7日間で削除されているので、同一ユーザーの複数カウントで新規ユーザーが非常に多くなる可能性があります。

 

なおネット広告経由の利用者の購入などを計測することは3rd Party Cookieでは不可ですが、Googleアナリティクスであれば1st Party Cookieで計測が可能になっています。

 

しかしAppleの自主規制で1st Party Cookie7日間で削除されるため、7日を経過すると効果計測ができなくなります。(AIを活用して仮想的にGoogleも計測はしてくれますが、実際の購買などとはイコールではありません。)

 

特にスマートフォン経由が90%くらいでWEBサイトの場合、iPhone比率は日本国内では50%程度なので、実質的に半数のユーザーの1st Party Cookieが7日間で削除されているので一部しかGoogleアナリティクスで可視化できていないと考えていいです。

 

Googleアナリティクスで分析するのも容易ではない時代になっています。

 

ネット広告業界の動き

3rd Party Cookieの滅亡を見据えて、Googleはダラダラと3rd Party Cookie廃止の延期を進めながら、自社サービスのネット広告利用を広告主に推奨しています。

また検索エンジン利用者にもGoogleアカウントにログインするように仕向けたりして、3rd Party Cookieではなく自社でコントロールできる1st Party Cookieの利用を推進しています。

日本国内でも社名は敢えて出しませんが、3rd Party Cookieではなく、1st Party Cookieを活用する方向に舵を切ったりしています。

海外でも3rd Party Cookieを活用して高い成果を出していたCriteo(クリテオ)も基本的にはcookieを利用しないネット広告に舵を切っています。

さらにA8で有名な上場企業のファンコミュニケーションズがスマートフォンアドネットワークのnendを2024年3月で終了したり、同じく上場企業のGunosyがGunosy Network Adsを2024年6月に終了することを発表しています。

3rd Party Cookie撲滅の動きは業界全体に波及しています。

 

ネット広告業界の未来

サ終なども多いのでネガティブな感じになっていますが、正常化するだけだと思っていて、ユーザーを追いかけ回すのではない方向でマスメディアのように多くの人に広告するという「広く告げる」という本来の広告になっていくと考えています。

コスパ、タイパと叫ばれる世の中とは逆行しているのかもしれませんが、本来あるべきではない姿は異常だし、そうあるべきではないというのが自分自身の考えです。

もちろん効率は犠牲になり、コストも消費者に転嫁されてしまうと思います。また天下できない中小のスモールビジネスは少なくない打撃を受けるでしょう。

ただネット広告が広告主やGAFAといった巨大IT企業の利益を優先してきてユーザーのプライバシーを犠牲に成り立ってきたのは正常ではないのです。

正常化された中での公正な競争。

それがビジネスとして正しい方向性だと思うのです、私は。

 

▼参考 

www.ppc.go.jp

www.dentsu.co.jp