今回のテーマは星空を語るうえで欠かせない星、「北極星」がテーマです。

夜空を見ていると星座はどんどん動いていくな。カメラで撮るとまるで1本の線のようになった星の軌跡を取ることができる。しかし、北の空にある北極星は動かない。そのため海を旅する時の目印とされてきた。ところでこの北極星、実は時代と共に変わるのを知っていたか。といっても、何千年という途方もない時間の中で変わるので現在の人間にとっての北極星はこぐま座のしっぽの先にあたるα星・ポラリスのことといっていい。

今回はそんな北極星や、現在の北極星であるポラリスについて説明する。解説は休日は職場のプラネタリウムに入り浸っているという興味を持ったら猪突猛進な科学館職員、たかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

いつかプラネタリウムに関わる仕事もしてみたい、まだまだ修行中の科学館職員。最近やっと星空を見て少し星座が分かるようになってきた。

1.北極星はどんな星?

それではさっそく北極星がどんな星か確認していきましょう。

北極星とは?定義から考える北極星

image by PIXTA / 47434099

北極星をコトバンクで調べると「天の北極近くに輝き、北の方角の目印になる。北辰(ほくしん)。」と書かれています。

天の北極、という言葉が聞きなれない人も多いでしょう。星座を観測するとき、無限に大きな半径を持った半球に星座が張り付いているようにイメージします。この仮の半球が天球です。プラネタリウムをイメージするとわかりやすいですね。そして天の北極とは地球の自転軸を伸ばした時に、天球と交わる場所のことを指します。このあたりに北極星は存在しているのです。

北極星は地球の自転軸の延長にあるため、地球からは動かないように見えています。ちょっとイメージしやすいように、星の動きと方角について確認してみましょう。

image by Study-Z編集部

東の空 右上がりに移動

西の空 右下がりに移動

南の空 東から西へと円を描くように移動

北の空 北極星の周りを反時計回りに移動

image by PIXTA / 76004223

朝、太陽は東の空から登りますね。そして南の空を通りながら向かって左から右へと時計の針のように移動しながら西の空に沈みます。この動きは星座も一緒です。さらに星座は北の空にも見え、こちらは北極星を中心に反時計回りに移動しています。ちなみにこの時の移動速度は1時間に15度です。これは360度を24時間で移動する(360÷24=15)と計算できます。このような地球の自転による天体の見せかけの運動を日周運動と呼ぶのです。

ところで、地軸の北に伸ばしたのが天の北極なら南側はどうなるのでしょうか。こちらはもちろん天の南極になります。しかし残念ながら南のそらには北極星のように動かず目印になる星は在りません。そのため、南の海を航海する時には南十字星が目印となっています。

航海に関する記事はこちらから。

時代とともに変わる?北極星の移り変わり

天の北極に最も近いところで輝く北極星。この近い、ということで気付く人もいるかもしれませんが、実はこの北極星は地軸の延長線上にあるわけではありません。延長線上よりは少しだけずれていて、北極星も長い時間をかけて位置が変わっています。そしてなんと北極星自体も星が変わってしまうのです。現在の北極星はこぐま座 のしっぽの先にあたるα星・ポラリスですが、同じ星が次に北極星になるまでにかかる時間はなんと約2万6000年。現在の人類にとって北極星はポラリスと言って問題ないですね。

紀元前12000年頃 こと座α星、ベガ(夏の大三角形のひとつ、織姫のこと)

紀元前10000年頃  ヘルクレス座ι星

紀元前7700年頃  ヘルクレス座τ星

紀元前5300年頃 りゅう座ι星

紀元前3000年頃 りゅう座α星

紀元前1100年頃  こぐま座β星

西暦500年頃   こぐま座α星、ポラリス

 現在の北極星、約80年後の2100年頃に最も天の北極に近づくと思われる

西暦4000年頃  ケフェウス座γ星

西暦6000年頃  ケフェウス座β星とケフェウス座ι星

西暦7800年頃  ケフェウス座α星

西暦10200年頃 はくちょう座α星

西暦11600年頃 はくちょう座δ星

西暦13500年頃 こと座α星(ベガ)

 以後、北極星の移り変わりは2行目に戻る

\次のページで「2.現在の北極星、ポラリス」を解説!/

2.現在の北極星、ポラリス

image by PIXTA / 65033422

先程も説明したように現在の北極星はこぐま座 のしっぽの先にあたるα星・ポラリスです。こぐま座は日本がある北半球では1年中見ることができます。ちなみにおおくま座のしっぽは北斗七星として知られていますが、こぐま座のしっぽは小北斗七星とも呼ばれているそうです。

ところでこのこぐま座にはどんな神話が隠れているのでしょうか。こぐま座になっているのは絶対神ゼウスの息子、狩人のアルカスとされています。この物語は、アルカスの母、カリストがゼウスの正妻ヘラの怒りをかってクマの姿にされてしまったことから始まるのです。クマの姿にされて森に身を隠したカリストはある日、成長した息子のアルカスに再会し喜び抱きしめようとします。しかし、大きなクマに襲われたと勘違いしたアルカスに矢を向けられてしまったのです。それを見ていたゼウスはアルカスが矢を放てないようにふたりを夜空に上げてしまいました。そしてアルカスもクマの姿となり、親子でおおぐま座とこぐま座となりました。

ところでこのクマの親子、実は尻尾が長くなっています。これはゼウスが2匹のくまの尻尾をつかんで投げたため、とされていますがゼウスは竜巻を起こしてふたりを天に挙げたという説もあるのです。

image by Study-Z編集部

ポラリスを含むこぐま座は1年中見ることができます。ポラリスとこぐま座を探すときはまず北斗七星をみつましょう。そしてそのひしゃくになっている部分の先にあるふたつの星を結び、その長さを5倍に伸ばしたあたりに北極星があります。

またWの形をしたカシオペア座からも探すことができるのです。カシオペアの端にある線を伸ばして結び、そのぶつかった点とWの真ん中に当たる星を結びます。そしてこれを5倍にしたところにポラリスがあるのです。ちょっとわかりづらいですが、覚えてしまうと見つけやすいのでぜひ、夜空で探してみてくださいね。

ポラリスは恒星?惑星?衛星?

ポラリスはどのような天体なのでしょうか。天体にはいくつか種類があります。太陽などの恒星、地球のような惑星(準惑星)、そして月の衛星ですね。ポラリスは自ら光を放つ恒星です。こぐま座で最も明るいのがこのポラリスで、2等星(星の明るさのランクで小さいほど明るい、肉眼で確認できる中で最も暗いのが6等星)になります。

恒星、惑星、衛星について知りたい方は次の記事を参考にして下さい。

北極星

北極星は地軸の延長上付近にあり、ほとんど動きません。そのため航海の際の目印とされてきた一方、時代と共に移り変わるものでもあります。ただし同じ星が次に北極星になるまでにはなんと約2万6000年もかかってしまうのです。あまりにも長く、現在の人類にとって北極星=こぐま座のポラリスと思って間違いありませんね。

ポラリスが最も天の穂局に近づくのは2100年頃。長生きをすれば非常に稀な光景を見ることができるかもしれませんね。

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地学地球宇宙理科

3分で簡単「北極星」ってどんな星?北斗七星とどんな関係?科学館職員がわかりやすく解説!

今回のテーマは星空を語るうえで欠かせない星、「北極星」がテーマです。

夜空を見ていると星座はどんどん動いていくな。カメラで撮るとまるで1本の線のようになった星の軌跡を取ることができる。しかし、北の空にある北極星は動かない。そのため海を旅する時の目印とされてきた。ところでこの北極星、実は時代と共に変わるのを知っていたか。といっても、何千年という途方もない時間の中で変わるので現在の人間にとっての北極星はこぐま座のしっぽの先にあたるα星・ポラリスのことといっていい。

今回はそんな北極星や、現在の北極星であるポラリスについて説明する。解説は休日は職場のプラネタリウムに入り浸っているという興味を持ったら猪突猛進な科学館職員、たかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

いつかプラネタリウムに関わる仕事もしてみたい、まだまだ修行中の科学館職員。最近やっと星空を見て少し星座が分かるようになってきた。

1.北極星はどんな星?

それではさっそく北極星がどんな星か確認していきましょう。

北極星とは?定義から考える北極星

image by PIXTA / 47434099

北極星をコトバンクで調べると「天の北極近くに輝き、北の方角の目印になる。北辰(ほくしん)。」と書かれています。

天の北極、という言葉が聞きなれない人も多いでしょう。星座を観測するとき、無限に大きな半径を持った半球に星座が張り付いているようにイメージします。この仮の半球が天球です。プラネタリウムをイメージするとわかりやすいですね。そして天の北極とは地球の自転軸を伸ばした時に、天球と交わる場所のことを指します。このあたりに北極星は存在しているのです。

北極星は地球の自転軸の延長にあるため、地球からは動かないように見えています。ちょっとイメージしやすいように、星の動きと方角について確認してみましょう。

image by Study-Z編集部

東の空 右上がりに移動

西の空 右下がりに移動

南の空 東から西へと円を描くように移動

北の空 北極星の周りを反時計回りに移動

image by PIXTA / 76004223

朝、太陽は東の空から登りますね。そして南の空を通りながら向かって左から右へと時計の針のように移動しながら西の空に沈みます。この動きは星座も一緒です。さらに星座は北の空にも見え、こちらは北極星を中心に反時計回りに移動しています。ちなみにこの時の移動速度は1時間に15度です。これは360度を24時間で移動する(360÷24=15)と計算できます。このような地球の自転による天体の見せかけの運動を日周運動と呼ぶのです。

ところで、地軸の北に伸ばしたのが天の北極なら南側はどうなるのでしょうか。こちらはもちろん天の南極になります。しかし残念ながら南のそらには北極星のように動かず目印になる星は在りません。そのため、南の海を航海する時には南十字星が目印となっています。

航海に関する記事はこちらから。

時代とともに変わる?北極星の移り変わり

天の北極に最も近いところで輝く北極星。この近い、ということで気付く人もいるかもしれませんが、実はこの北極星は地軸の延長線上にあるわけではありません。延長線上よりは少しだけずれていて、北極星も長い時間をかけて位置が変わっています。そしてなんと北極星自体も星が変わってしまうのです。現在の北極星はこぐま座 のしっぽの先にあたるα星・ポラリスですが、同じ星が次に北極星になるまでにかかる時間はなんと約2万6000年。現在の人類にとって北極星はポラリスと言って問題ないですね。

紀元前12000年頃 こと座α星、ベガ(夏の大三角形のひとつ、織姫のこと)

紀元前10000年頃  ヘルクレス座ι星

紀元前7700年頃  ヘルクレス座τ星

紀元前5300年頃 りゅう座ι星

紀元前3000年頃 りゅう座α星

紀元前1100年頃  こぐま座β星

西暦500年頃   こぐま座α星、ポラリス

 現在の北極星、約80年後の2100年頃に最も天の北極に近づくと思われる

西暦4000年頃  ケフェウス座γ星

西暦6000年頃  ケフェウス座β星とケフェウス座ι星

西暦7800年頃  ケフェウス座α星

西暦10200年頃 はくちょう座α星

西暦11600年頃 はくちょう座δ星

西暦13500年頃 こと座α星(ベガ)

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