宅建試験の権利関係(民法など)とは?出題傾向と勉強法の4つのポイント
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今回は、宅建の出題科目の1つである「権利関係」についてお話したいと思います。
ひと昔前は「権利関係」は、「それほど力を入れなくていい」とか「よく出題されるテーマだけ勉強して、あとは全部捨てなさい」とかそんな扱いをされていました(なんか悲しい…)。
しかし「権利関係」で勉強する内容は、宅建を取得し宅建士として業務に携わるあなたの基本となるルールです。
これを知っておかないと、いざというときに苦労するというわけです。
また特に「民法」については、我が国において実施される法律系資格試験で最も出題される内容です。
宅建試験に合格した後、行政書士試験など次の資格試験も考えている方にとっても、「権利関係」をきちんと学んでおくメリットは十分あります。
さらに近年の宅建試験は合格点が上昇傾向にあり、「権利関係」でもある程度点数を取らないことには合格が難しいという現状もあります(例えば、2020年度(令和2年度)10月実施の試験の合格点は「50点中38点(史上最高点)」でした)。
以上のように、「権利関係」を取り巻く状況は、ひと昔前と比べてずいぶんと様変わりしたと言ってよいでしょう。
けど、「権利関係」の攻略法については、あまり語られていません。
というわけで、今回は、アガルートアカデミーで過去問講座も担当する私が、「権利関係」を攻略する宅建勉強法のポイントを解説させていただきます。
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宅建試験の権利関係(民法など)とはどんな科目?
権利関係とは?
攻略法の前に、まずは「『権利関係』って何ぞ?」という話から始めましょう。
「権利関係」は、民法を始めとする複数の法律に関する問題が集まった科目です。
具体的には、次のような法律に関する問題が出題されます。
①民法
「民法」は、私たちの身近な契約の話に関するルールを定めた法律です。
例えば、物の売り買い(売買)やアパート・マンションの賃貸(賃貸借)といった契約に関するルールが、民法には定められています。
宅地建物取引士(宅建士)は、不動産の売買や賃貸借を取り扱う職業なのですから、そのルールに関する知識をきちんと身に着けておいてほしいというわけですね。
②借地借家法
「借地借家法」は、文字通り「土地を借りる」(借地)や「住まいを借りる」(借家)話に関するルールを定めた法律です。
土地や住まいの貸し借りに関するルールを定めた法律ということですね。
③区分所有法
「区分所有法」は、正式には「建物の区分所有等に関する法律」といいます。
通称「マンション法」と呼ばれています。
「区分所有法」は、マンションの居住関係等に関するルールを定めた法律です。
マンションは、なにせ“1つの建物に、複数の世帯が居住している”という、ひと昔前にはあり得なかった存在です。
そのため、マンションの居住関係等をきちんとルール化して、トラブル防止を図っているというわけですね。
④不動産登記法
「不動産登記法」は、これまた文字通り不動産の登記制度に関するルールを定めた法律です。
例えば、土地や建物の売買が成立した場合、持ち主が代わりましたから「持ち主が代わりましたよ」ということを他の人たちにお知らせする必要があります。
そのお知らせのための仕組み・制度のことを「登記(制度)」といいます。
登記には、土地や建物の持ち主に関する情報以外にも、様々な情報が掲載されています(例:前の持ち主が誰だったか、その不動産には抵当権があるのかどうか)。
様々な情報を掲載するとなると、掲載の仕方であったり、情報を更新する際の手続き等をきちんと決めておく必要がありますよね。
なので「不動産登記法」というルールを設けたわけです。
出題数と目指すべき正解数
さて、出題内容が分かったところで、次は「出題数」「目指す正解数」を明らかにしておきましょう。
分野 | 出題数 | 目指すべき正解数 |
民法 | 10問(問1~10) | 5~6問正解 |
借地借家法 | 2問(問11~12) | 1~2問正解 |
区分所有法 | 1問(問13) | 1問正解 |
不動産登記法 | 1問(問14) | 0~1問正解 |
合計 | 14問(問1~14問) | 7~9問正解 |
「権利関係」は全部で14問出題されます。
そのうち、大体8問くらい正解すれば、全体で合格点に達することが十分可能になります。
先述の通り「権利関係」の重要性は、近年たしかに増してきましたが、だからといって「満点を狙え!」みたいな無茶苦茶な話でもありません。
権利関係全体の60~70%くらいの正解数を目指すという、かなり現実的な・実現可能な話にまだまだ収まっています。
なので、これから勉強を始める方、どうぞご安心くださいませ。
権利関係の頻出分野と出題傾向
攻略法を検討するにあたって、この情報も必要です。
すなわち
「『権利関係』の出題傾向はどうなっているのか?」
「『権利関係』における頻出分野はどういったものか?」
です。
出題傾向や頻出分野を踏まえた攻略法こそ、最も効率がよく、最も効果の高いものであるはずです。
これら2点はきちんと踏まえておきたいですね。
では、いってみましょう。
「権利関係」の出題傾向
まずは分野を問わず、「権利関係」全体にかかわる出題傾向について見ていくこととしましょう。
①出題形式のバリエーションが最も多い科目です
「権利関係」は、その出題形式のバリエーション(種類)がとても豊富です。
・法律の規定をそのまま出してくることもあります。
・A、B、C…と登場人物を数多く並べてくる事例式もあります。
・裁判所の判決文の一部を抜粋して、その要旨(結局何が言いたいのか)を訪ねてくることもあります。
・制度と制度を比較してくることもあります。
ひとまず、こんなところでしょうか。
(ちなみに、上記出題形式は、すべて「令和2年度 宅建試験(10月実施)」で登場したものです。)
このように、「権利関係」は様々な出題形式の問題が出てくるため、そのような問題をきちんと正解していくには、これらの形式に慣れる必要があります。
よく「『権利関係』は時間がかかる」と評価されるのですが、その主な原因はここにあります。
慣れなければならないことがとにかく多いのが「権利関係」なもので、どうしても時間がかかってしまうんですね。
②基本的に問題文の1文1文が長めです
「権利関係」で慣れなければならないものとして、他には「問題文の長さ」があります。
様々な出題形式で問われることと相まって、選択肢の1つ1つも長くなりがちです。
問題文が長いとしても、その内容を、正確に素早く読み取らなければなりません。
正確性と迅速性の両方が求められます。
③何が問われているのかが分かりづらい
「権利関係」は、他の科目とは異なり、問いたいことをそのままストレートに問うことがあまり多くありません。
問題文をひとまず読み終えて、「で、何が聞きたいんだコレ?」なんてことがあったりします。
その意味で、「権利関係」って素直じゃないんですね(汗)。
その問題が聞きたいこと・問いたいことを、私たちの手で明らかにしてあげる必要があります。
以上が、「権利関係」全体の出題傾向になります。
「権利関係」の頻出分野
では次に、「権利関係」の頻出分野を見てみることとしましょう。
先ほど「権利関係」を、①民法、②借地借家法、③区分所有法、④不動産登記法の4分野に分けましたから、この4分野に沿ってご紹介することとします。
①民法
民法は、権利関係14問のうち10問割り振られた分野です。
そのような大型分野であるにもかかわらず、実はその出題傾向は割と“偏って”います。
試験問題の出題者たちが好んで出題する分野・項目があるというわけです。
具体的には、以下の分野・項目がこれに該当します。
・制限行為能力者
・意思表示
・代理
・時効
・不動産物権変動
・抵当権
・債務不履行と解除
・賃貸借
・相続
これらの分野・項目の問題が解けるようになると、「権利関係」全体の得点が安定してきます。
何から手をつけてよいか分からないという方は、ひとまずこれらの分野・項目からスタートするといいでしょう。
②借地借家法
借地借家法は、「借地」分野から1問、「借家」分野から1問出題されます。
それぞれの分野から出題しているため、「借地」分野・「借家」分野全体を、割と満遍なく出題してきます。
そのため、これらの分野に関する勉強の内容も、全体的にしっかりとやっていくこととなります。
とはいえ、「借家」よりも「借地」のほうが、実は話が割と素直です。
「借家」のほうは、通常の借家関係(建物賃貸借)だけでなく、「定期建物賃貸借」「一時使用目的の建物賃貸借」が出てきてとてもややこしい(そして、私も受験生時代散々苦労させられました)。
なので、この分野の勉強をしようというときは、ひとまず「借地」分野から始めるとよいでしょう。
③区分所有法
区分所有法は、マンションに関するルールだという話をしました。
マンションに関するルールということもあり、ここでしか勉強しない内容も出てきます。
例えば、マンションの住人たちのルールブックである「規約」や、住人たちが集まって話し合い・決定を行う「集会」なんかがその代表例です。
この「規約」や「集会」に関するルールは、宅建試験でもよく出てくる内容なので、こういったところから攻めていくとよいです。
また区分所有法は毎年1問しか出題されませんので、基本的には「過去問でよく出てくるところ」に絞って勉強を行うという“割り切り方”のやり方が求められます。
どれほどゴリゴリ勉強したって、所詮1問しか出てきませんから。
※関連コラム:宅建士試験の過去問一覧!過去問だけで受かるのかを解説
④不動産登記法
正直に申して、不動産登記法は、ギャンブル要素のある分野です。
ある年は比較的易しい・よく問われる知識をネタにした問題を出題することがあります(例えば、「登記の申請」や「権利に関する登記」についての出題があります)。
その一方で、別の年はとても細かい知識を出題することもあります(例えば、「仮登記」や「敷地権付き区分建物に関する登記」があります)。
その意味で、対策が面倒な分野であると言えます。
不動産登記法も、区分所有法と同様、“割り切り方”のやり方が求められます。
近時の宅建試験における正解率を見てみると、比較的易しい・よく問われる知識の出題の年には正解率がグッとと上がる一方で、とても細かい知識の出題の年にはガクンと下がる傾向にあります。
そこで、ここは「比較的易しい・よく問われる知識の出題」を想定して準備しておくこととしましょう。
区分所有法と同様、どれほど勉強したって(それこそ司法書士試験くらい勉強しても)結局1問しか出てきませんので、効率悪いです。
権利関係の勉強法
出題傾向や頻出分野の話はこれくらいにしまして、いよいよ本コラムのメインである「権利関係の攻略法(勉強法)」について解説していきましょう。
今回は、多くの受験生の方が苦労する「民法」について特に解説してみたいと思います。
ちなみに「民法」でやり方をマスターしていただければ、そのやり方を他の3分野でもそのまま用いることができます。
ポイント①:問題文は1文1文区切ろう
問題文が長いのが、民法を始めとする「権利関係」の特徴です。
慣れない最初の段階で、そのような長い文章から一気に意味を捉えようとすると、間違って捉えてしまったり、大事な情報を見落としたりすることが多々あります。
そこで、慣れない最初の段階は、1つずつ正確に意味を捉えることから行います。
意味を正しく・正確に捉えることができない原因が「問題文が長いから」なのだとすれば、問題文を短くすれば意味を正しく・正確に捉えることができるようになるはずだからです。
具体的には、問題文の文章を、1文1文区切ります。
文章の終わりには「句点(「。」のこと)」がありますよね。
ここで文章をきちんと区切って(問題文を読むのをいったん止めて)、その文章で述べている内容を把握するようにするのです。
そうすれば、長い問題文であっても、情報を少なくすることができますので、その分正確に捉えるべき意味も少なくなります。
1文1文の意味を正確に捉えることができるようになったら、徐々に一度に読む文章量を増やしていきます。
1文から2文、2文から3文……最終的には選択肢1つや問題文全体など。
“小さくスタートさせて、徐々に大きく育てていく”イメージです。
ポイント②:「主語」に気を配ろう
問題文を読む際は、「主語」に気を配りましょう。
「主語」はその文における主題(メインテーマ)ですから、これを取り逃してしまえば、いったいこの文章は何の話をしているのかがあっという間にわからなくなってしまいます。
昨今、TwitterやInstagram、Tiktok、LINE等SNSの普及によって、私たちは「主語が抜けた文章」や「極端に短い文章」にばかり触れる機会が多くなりました。
そのため、極端な言い方をすれば、「主語を意識した読み方」「長い文章のための読み方」を私たちは徐々に忘れていってます。
そこで“原点回帰”ということで、問題文を読むときは、「主語」を積極的に意識しようというわけです。
「『主語』に気を配る・意識する」とは、例えば「この選択肢は……あっ、『制限行為能力者は』とあるから、制限行為能力者の話を聞こうとしているんだな。どれどれ…?」といった具合の読み方です。
このように常に「主語」に気を配っていると、
・何の話に関する出題か分からなくなることがなくなります(取り違えがなくなります。場合によっては「主語」そのものがひっかけになっているので、選択肢の正誤の判断がしやすくなります)
・頭の中にある知識を表へ引っ張り出すためのヒントになります(上記の例で言えば、「制限行為能力者の話を聞こうとしている」ことが分かりました。
なので、頭の中にある知識のうち、「制限行為能力者」に関するものを表へ引っ張り出せばよいことが分かります。
つまり、知識を思い出しやすい状態に自分を持っていくことができるわけです)。
ポイント③:図を描こう
例えば、問題が事例式問題の場合には、面倒くさがらずに図を描くことにしましょう。
「AがBに対して、……請求した。」とあるなら、「A→B」と描いて、矢印の下にでも「……請求」とメモするといった具合です。
こうやって、問題文のなかで起こっていることを1つずつ図に“変換”していきます。
すると、どうでしょう。
例えば、先ほどの「AがBに対して、……請求した。」という文章を図に“変換”されたことによって、あることが起こります。
「……あれ?この図、どこかで見たような……あ、これ『代理』だ」
そうです、単に文章のままだと何の話をしているか分からなかったことが、図に“変換”することによって「思い出すためのヒント」が1つ増えることになります。
出来上がった図を手がかりにして、日頃勉強していた内容のなかから似たような図を頭のなかで探し出すわけです。
すると似たような図にヒットするでしょうから、今度はそこから何の話題に関する図だったかを思い出していき、知識を思い出すというわけです。
テキスト(教科書)に豊富な図がたくさん示されているのは、テキストの内容そのものを理解していただくためだけでなく、問題文を図にしたときに思い出すためのヒントとしての役割も期待しているためなんですね。
ポイント④:1つずつクリアしていこう
先述の通り、「権利関係」はやることが多いです。
なので、勉強し始めると、その量を目の前にして結構慌ててしまう方が多いです。
しかし、私たちというのは、見知らぬ情報を、一度にドバっと大量に渡されても、それらを一気に消化できるようにはなっていません。
それこそ食事と一緒で、1つずつゆっくりと味わいながら消化していく必要があるのです(そして、そのほうが食事は美味しいし楽しいよね)。
焦る気持ちは分かりますが、だからといって一気にやることもできません。
1つずつ確実にクリアしていく姿勢が、「権利関係」の勉強においては肝心です。
量が多くて何から手をつけてよいやら分からないという方は、上記3つのポイントの練習にもなり、「民法」で頻出の以下の分野・項目から始めるといいですよ(特に「代理」と「不動産物権変動」は最頻出ですから、これらができるようになるとグッと自信がつきまっせ)。
・制限行為能力者
・意思表示
・代理
・時効
・不動産物権変動
・抵当権
・賃貸借
まとめ
以上が、「権利関係」の攻略法(勉強法)に関する解説でした。
「権利関係」は、私たちの先輩合格者の方々も、散々悩み・苦労した科目です。
なにせ、やってもやってもなかなかできるようにはならないですからね。
そうやって、多くの受験生たちをなぎ倒してきた難敵が「権利関係」なわけです。
かくいう、この記事を書いている私自身も、ずいぶん苦労しましたし、何度も(ホントに)泣かされてきました。
そういった悩みや苦労の先に、「権利関係」のゴールはあります。
悩んでいるのは、できないで苦しんでいるのは、なにもこの記事をお読みになっているあなただけではありません。
隣の、ちょっと賢そうに見える受験生のあの人だって、裏ではとっても苦労しているんです。
今回ご紹介した攻略法(私が散々苦労してきた中で「これだ!」と思うものです)を参考に、ぜひ「権利関係」にチャレンジしてみてください。
大丈夫、できるようになるってばよ。
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