米国『日本のホロコースト』発刊 近現代史家ら「史実に反す」研究会立ち上げ、反論本予定

旧日本軍が3000万人を虐殺したとする『Japan’s Holocaust』の内容を分析する「戦争プロパガンダ研究会」の第1回公開研究会=18日午後、東京都文京区(奥原慎平撮影)
旧日本軍が3000万人を虐殺したとする『Japan’s Holocaust』の内容を分析する「戦争プロパガンダ研究会」の第1回公開研究会=18日午後、東京都文京区(奥原慎平撮影)

旧日本軍がアジア・太平洋地域で3000万人を虐殺したとする『Japan's Holocaust』(日本のホロコースト)が米国で今年3月に発刊されたことを受けて、近現代史研究家の阿羅健一氏らが同書を検証する「戦争プロパガンダ研究会」を立ち上げた。日本と無関係なホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の用語を標題に掲げた同書について、研究会は「南京事件をはじめとして、史実に反し裏付けのない『日本軍の残虐行為』なるものの事例をかき集めて集大成したもの」と指摘する。研究会は書籍を素材に戦争プロパガンダ(政治宣伝)のメカニズムを分析し、反論本の発刊を予定している。

荒唐無稽も活字の影響力は無視できない

「日本のホロコースト」は米国の歴史学者というブライアン・マーク・リグ氏が、旧日本軍が1927年~45年にアジア・太平洋地域で行った「残虐行為」への調査をまとめたというもの。阿羅氏らは「学問的な反証・検証の手続きは一切ない」と問題視し、阿羅氏が会長、近現代史研究家の田中秀雄氏が副会長、新しい歴史教科書をつくる会副会長の藤岡信勝氏が事務局長を務める形で研究会を発足。海外を含む約20人の専門家を研究員として委嘱したという。

趣意書では「このような論調が米国社会の一般的な風潮であるとは到底考えられない。まともに論評すべき対象ではない」としつつも、「どんなに荒唐無稽な内容でも活字になったものの影響力が無視できない。(令和7年に迎える)『戦後80年』に向けて、日本の戦争中の『悪行』が蒸し返される可能性は大いにある」と危機感を強調した。月例で公開研究会を重ねていく。

「戦争プロパガンダ研究会」の阿羅健一代表
「戦争プロパガンダ研究会」の阿羅健一代表

「日本はプロパガンダに弱い」

18日に東京都内で開かれた第1回公開研究会で、阿羅氏は「放っておくと歴史の捏造(ねつぞう)が止むことはなく、『日本のホロコースト』の記述をもとに新たな捏造が生まれるかもしれない。放置せず、徹底的な反論をすることにした」と重ねて説明した。

藤岡氏は「日本のホロコースト」の内容については「学問的とはいえない。膨大な注釈を施すなど学術書の体裁をとっているが、論理展開や内容は一方的な日本に対する悪罵をかき集めたプロパガンダ本だ」と指摘し、「でたらめでも、次の米国人の世代がここから日本研究をスタートするということも起こり得る。書いてあることは一方的で単純だが、こういう言説の本質を分析することは重要だ」と懸念した。

また、「日本はプロパガンダに弱い国だ。戦争のことを持ち出すことで日本を道徳的におとしめ、いろいろな利益を引き出して、究極的に『奴隷状態』に置くための精神的道具として使われている」と語った。

「戦争プロパガンダ研究会」事務局長の藤岡信勝氏
「戦争プロパガンダ研究会」事務局長の藤岡信勝氏

阿羅氏や藤岡氏らは1997年に米国で出版されベストセラーになった南京事件に関する中国系米国人ジャーナリスト、アイリス・チャン氏の著書『ザ・レイプ・オブ・南京』を検証するため2000(平成12)年に発足した「日本『南京』学会」に属した。チャン氏が「大虐殺」の証拠として掲載した数多くの写真の偽造を証明するなど、中国側が主張する南京事件についての「虚構性」を明らかにしている。(奥原慎平)

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