尖閣で日本の実効支配を誇示 海保、上陸のメキシコ人を救出後に警察権を行使

尖閣諸島・魚釣島付近を哨戒する海上保安庁の巡視船=沖縄県石垣市(大竹直樹撮影)
尖閣諸島・魚釣島付近を哨戒する海上保安庁の巡視船=沖縄県石垣市(大竹直樹撮影)

石垣海上保安部(沖縄県石垣市)は19日、尖閣諸島(同市)の魚釣島にカヌーで上陸し救助された40代のメキシコ人男性について、出入国管理法違反容疑で書類送検した。海上保安庁による救出と警察権の行使は、尖閣諸島を日本が有効に支配していることを国内外に示すことになった。

「恒常的に監視、発見は必然」

「尖閣諸島は上空と海上から恒常的に監視しており、発見したのは必然だ」。尖閣を管轄する第11管区海上保安本部の領海警備担当次長を務めた元3管本部長の遠山純司氏はこう指摘する。

男性は16日午後、魚釣島東岸にカヌーで上陸しているのを哨戒中の巡視船に発見され、ヘリコプターでつり上げられ救助された。海保によると、与那国島と台湾の間には黒潮本流が流れ、尖閣方面に続いている。男性はこの黒潮本流に乗って漂流したとみられている。

ネット上では「海保がボートで上陸し救助すべきだった」との声も散見されるが、海保関係者によると、魚釣島に巡視船を接岸できる場所はなく、「船艇で上陸して救助するより、安全、確実、迅速に救助できる最善の救助方法であった」(遠山氏)という。

淡々と救助、実効支配示す

男性は与那国島(同県与那国町)から台湾に向かっていたといい、尖閣上陸に政治的意図はなかったとみられるが、結果的に、巡視船や航空機による警備の目をかいくぐり、上陸を許すことにもなった。遠山氏は「カヌーのような小型艇では夜陰に紛れ、目視で気づくのは難しい」と明かす。

とはいえ、漁民に扮した海上民兵による離島占拠などに至る心配はないという。「上陸用の小型艇を搭載する母船は必ず発見できる」(遠山氏)ためだ。

中国海警局の船は連日、尖閣周辺の領海外側にある接続水域を航行。今年7月には、航行の連続日数が215日に達した。尖閣周辺で操業する日本漁船に近づき執拗に追尾するケースも多い。いずれも領有権を誇示する狙いがあるとされる。

それだけに、海保が魚釣島でメキシコ人男性を救助し、正規の手続きをせず領海を出た疑いがあるとして男性を事件送致した意義は大きい。

禁漁明けの中国漁船が大挙して尖閣周辺に押し寄せた平成28年8月には、尖閣北西の公海上で起きた中国漁船とギリシャ船籍の大型貨物船衝突事故で6人の漁船乗組員を海保が救助している。「いずれも救助事案として海保が淡々と当たり前の対応をしたにすぎない」と、遠山氏は語る。

中国海警船ができなかったこの当たり前の対応がすなわち、日本が尖閣諸島を実効支配していることを如実に示している。(大竹直樹)

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