中国通史で辿る名言・故事探訪(海大魚)
「海大魚(かいたいぎょ)」
◇ 戦国時代 ◇
進言する際の機知の妙をいう。
斉の宣王⑤の異母弟・静郭君(田嬰)が、将に采邑(封土)の薛(せつ)
に城を築かんとした。
客(食客) 多く以て諌む。
静郭君、謁者(取次役)に謂えらく、
「客の為に通ずる勿(なか)れ」と。
(=客人を我に取り次ぐようなことはするな。)
斉人、請う者有り。曰く、
「臣、請う三言にして已(や)まん。
一言を益(ま)さば、臣 請う烹(に)られん」と。
静郭君因りて、之を見(まみ)ゆ。
客 趨(はし)りて進んで曰く、
☞ 趨るは趨走の意で、君前などでは、臣下などは小走りに移動
する仕来りがあった。
「海大魚」と、
因(よ)りて反(かえ)りて走る。
君 曰く、
「客、此れに有らん」と。
(=客よ、先ずは此処に留まられよ。)
客 曰く、
「鄙臣(ひしん)、敢えて死を以て戯れを為さず」と。
(=この私めは、どうして死を賭してまで三言以上の戯言を申し
ましょうや。)
君、曰く、
「亡(な)し。更に言え」と。
(=死ぬ事は無いから、続けて言ってくれ。」
対えて曰く、
「君、大魚を聞かずや。
網を止むること能わず、鉤(鉤針)も牽くこと能わず、
蕩して水を失わば、則ち螻蟻(ろうぎ)も意を得ん。
(=君に置かれましても、あの大魚の事はお聞きのことと存じます。
網で以っても取り押さえることが出来ず、大物釣りの鉤針を仕掛け
ても、引き揚げることが出来ません。
しかし、そのような大物でも、すっかり水を無くしてしまえば、
ケラや蟻のようなものでさえ思うがままとなるのです。)
今、夫れ、斉は亦 君の水なり。君 長く斉の陰を有(たも)て。
(=斉と言う国は、将に君にとっての水と言えます。
いつまでも斉という木陰に身を立てるべきです。)
なんぞ薛を以って為さん。斉を失わば薛の城を隆(たか)くして天に
至るとも、猶、之れ益無からん」と。
君曰く、
「善し」と。
乃ち薛に城を城(きず)くを綴(や)む。
劉向「戦国策 斉」
◇ 戦国時代 ◇
進言する際の機知の妙をいう。
斉の宣王⑤の異母弟・静郭君(田嬰)が、将に采邑(封土)の薛(せつ)
に城を築かんとした。
客(食客) 多く以て諌む。
静郭君、謁者(取次役)に謂えらく、
「客の為に通ずる勿(なか)れ」と。
(=客人を我に取り次ぐようなことはするな。)
斉人、請う者有り。曰く、
「臣、請う三言にして已(や)まん。
一言を益(ま)さば、臣 請う烹(に)られん」と。
静郭君因りて、之を見(まみ)ゆ。
客 趨(はし)りて進んで曰く、
☞ 趨るは趨走の意で、君前などでは、臣下などは小走りに移動
する仕来りがあった。
「海大魚」と、
因(よ)りて反(かえ)りて走る。
君 曰く、
「客、此れに有らん」と。
(=客よ、先ずは此処に留まられよ。)
客 曰く、
「鄙臣(ひしん)、敢えて死を以て戯れを為さず」と。
(=この私めは、どうして死を賭してまで三言以上の戯言を申し
ましょうや。)
君、曰く、
「亡(な)し。更に言え」と。
(=死ぬ事は無いから、続けて言ってくれ。」
対えて曰く、
「君、大魚を聞かずや。
網を止むること能わず、鉤(鉤針)も牽くこと能わず、
蕩して水を失わば、則ち螻蟻(ろうぎ)も意を得ん。
(=君に置かれましても、あの大魚の事はお聞きのことと存じます。
網で以っても取り押さえることが出来ず、大物釣りの鉤針を仕掛け
ても、引き揚げることが出来ません。
しかし、そのような大物でも、すっかり水を無くしてしまえば、
ケラや蟻のようなものでさえ思うがままとなるのです。)
今、夫れ、斉は亦 君の水なり。君 長く斉の陰を有(たも)て。
(=斉と言う国は、将に君にとっての水と言えます。
いつまでも斉という木陰に身を立てるべきです。)
なんぞ薛を以って為さん。斉を失わば薛の城を隆(たか)くして天に
至るとも、猶、之れ益無からん」と。
君曰く、
「善し」と。
乃ち薛に城を城(きず)くを綴(や)む。
劉向「戦国策 斉」
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