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Conversation

「君の母親は おかしいよ」 あつしくんが 私の目を見ながら言う。私はあつしくんの言葉の意味が理解できず、ポカンとした目であつしくんの目を見返した。あつくしんは そんな私をみて、今度は教え諭すように、ゆっくり言った。 「君の母親は おかしいよ」 「なんで」 私は18年間生きてきて、自分の母親が”おかしい”なんて思ったことは一度も無かった。それに、母親との距離は私が一番近いし、まだ母親と一度も会ったこともないあつしくんが なんで そんなことを言うのか、わからなくて問い返した。 「君は 父親から 暴力を受けて育ったんだよね?」 「うん」 「君の母親も そのことを知っていたんだよね?」 「うん」 「まいちゃんは、父親からの暴力、母親に守ってもらったことある?」 私は混乱した。あつしくんが なんでそんなこと聞くのか分からなかった。やめてほしかった。みんなは私が”父から暴力もうけてること”を話すと、父のことを非難して「サイテーな奴だな」と責めた。私は それで じゅうぶんだった。みんなが父親のことを悪く言ってくれると満たされた。私のこの世の悪人は 父親 ただ1人だけでよかった。なのに、なんでそんなこと聞くの。 「ない そんなこと」 私は そう答えるしかない この現実に絶望した。あつしくんはきっと正しいであることを、ただ淡々と話し続けた。 「普通、自分の娘がひどい目にあっていたら命がけで守るのが母親だ。君の母親は 母親としての義務を放棄している」 知らなかった。「そっか。」と思った。父親は狂ってると思っていたら、母親も狂っていたなんて。「そっか。」と思った。私は何もかも失った気持ちになって、スーっと体が軽くなっていった。 なんだか この世界中くだらなく思えてきて、私はなんでもできるようになった気がした。現実は”ここ”なんだと やっと自分の足で地面に立てた気がした。鏡に写る私が本当の私になった気がした。 その日から 父親のことと 母親のことを自分の頭で考えると、悲しみと憎しみとが交差して私を苦しめるから「私には父も母もいないんだ」と自分に言い聞かせて 自分を救った。   1人ぼっちになった私。この世の真実を教えてくれたあつしくんに 「ありがとう。」 と伝えて あつしくんが紹介してくれたソープランドで働くことにした。世界が進んだ気がした。 なんでも できる気がした. (令和6年8月14日)
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