「平和の大切さ教わった」後藤健二さんの授業

生徒に変化、無事を祈る学校関係者

「平和の大切さ教わった」後藤健二さんの授業

授業で講演するジャーナリストの後藤健二さん=2012年5月、東京都世田谷区の私立玉川聖学院

 過激組織「イスラム国」を名乗るグループに拘束されたジャーナリスト後藤健二さん(47)は、取材体験を基に平和や人権の大切さを子供たちに教えることに大きなやりがいを感じていた。東京都世田谷区の私立玉川聖学院では、後藤さんの講演を聞き、国際関係や看護の仕事を志す生徒が増加。学校関係者は「無事に帰国して、また平和のメッセージを伝えてほしい」と願っている。

 後藤さんは2005年以降、毎年5月に同校を訪問。中学3年の総合学習の授業で、自身の体験談や現地の写真を紹介し、10年間にわたって平和や人権の大切さを語り続けてきた。アフガニスタンやイラクなど紹介する国はさまざまだったが、いつも戦争や貧困に苦しむ子供たちの生活がテーマだったという。

 同校の水口洋校長(62)は昨年5月、授業で「最もやりがいを感じることは?」と質問された後藤さんが、「今こうやって皆さんに(体験を)伝えていること」と答えたのが強く印象に残っている。どんなに多忙でも授業をキャンセルしたことはなく、取材先から帰国した当日に学校へ直行した年もあったという。

 「偏見や伝聞に惑わされず、人と人が直接関わり合うことで平和が生まれる」。後藤さんは授業で何度もそう訴えていたといい、水口校長は「危険な地域に行くこと自体が目的ではなく、子供たちに戦争や貧困の実態を伝えることを何より大事にしていた」と振り返った。

 授業を受けた生徒からは「紛争地帯の子供たちに比べて自分は恵まれている」「もっと一生懸命勉強したいと思った」といった声が上がり、意識の変化が感じられるという。国際関係や看護の進路を選択する生徒も増え、水口校長は「後藤さんにまいてもらった種が、いろいろな形で芽を出している」と語った。

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