端末が売れず、サービスの契約も獲得できないのであれば、以前の連載で取りあげた通り、端末販売時に「頭金」と呼ばれる独自の手数料を上乗せすれば、一応の売り上げは立ちます。
とはいえ、実際の店舗販売では端末の販売台数やサービスの契約件数といった旧来の「ノルマ」も依然として課されています。
このことについて、キャリアショップや量販店に勤務する人に話を聞いてみた所、このような反応がありました。
弊社のノルマは、「昨年対比」で設定されています。要するに、2019年10月以降のノルマは、法改正前の実績をもとに設定されたものを追うことになっています……。
法改正による影響を無視したノルマ設定は、例えるなら「難しいゲームの難易度をさらに高めて、余計にクリア率を下げる」みたいなものです。それって、どうなんでしょうね……?
私たちの店舗では、法改正によって端末販売が振るわなくなることを予想して、売り上げの減少分をアクセサリ販売やオプション契約の獲得(によって得られる手数料)でカバーしようということになりました。
なので、法改正前よりもこれらのノルマが上乗せされています。正直、つらいです……。
ノルマが未達となった場合、店舗を運営する原資として大きな比率を占める「支援金」が減額されます。その名の通り、支援金は販売代理店の運営企業が店舗に運営資金として付与するもの。これが減額された場合、店舗の従業員数を減らすなど運営体制の再構築(いわゆる「リストラ」)をせざるを得ません。
従業員を減らした場合でも、その分だけノルマが軽減されるとは限りません。人は減ってノルマが減らないとなれば、店員1人当たりのノルマはむしろ増えてしまいます。
継続してノルマ未達となった場合、店舗は「閉鎖」または「他の販売代理店への移管」という話になりかねません。店員が強引な勧誘を行ってしまうということは、視点を変えると店舗(あるいは店員個人)がノルマ面で切羽詰まった状況に陥っているともいえます。
国内携帯電話市場における「競争の健全化」と「消費者(ユーザー)の保護」は長年の課題で、少しずつ改善を重ねています。去年(2019年)の改正法令までに、主に以下のような取り組みが行われました。
すでに1人1台以上の台数が普及している、国内の携帯電話市場。一部のユーザーに過剰な値引きをするような販売をしていては、健全な競争は望めません。端末代金の値引き制限も、そのような文脈から設定されたものです。
しかし、先に述べた通り、販売店に課せられるノルマは、旧態依然どころか、捉え方次第ではむしろ悪化している状況です。
通信料やサービス内容での競争を携帯電話事業者に求めるのであれば、無理な販売を強いてしまうノルマ設定にもメスを入れていくべきです。もちろん、メスを入れられる前に、キャリアや販売代理店が改善に取り組むことも必要なはずです。
ユーザーが安心して「料金」や「サービス」で選べる環境の整備こそ、官民双方にとっての急務であると筆者は考えています。
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